ドイツ・DUX(ダックス)の鉛筆削り。
3段切り替え式削り器ギフトセット!!!
金色にきらめく本体は、無垢の真鍮。
鋭く輝く銀色の刃。
上質な黒革の専用ケース。
『3段階の調節機能が付いたダイヤル。かっこいいぜ。真鍮削りだしの荒々しさの質感がたまんない。ジャーマニー。ドイツ万歳。しっかり刻印されてるぜっ。』
……購入した『ワキ文具』サイトの紹介文通り。
私にとって、鉛筆削りは大事な道具。
アイデアを紙に書き出す時、柔らかい6B鉛筆は使い勝手がいいのですが、鉛筆なので、当然どうしても芯を削る必要があるのです。
それに、アイデアにつまった時も、気分転換に鉛筆を削ります。
とことんまで煮つまっている時は、カッターナイフ。
木の軸から、ほんのすこし頭を出している黒い芯。
「ざくり」と鉛筆にナイフを入れると、たちのぼる清々しい木の香りと、白い紙の上に飛び散る黒い粉。
魚の鱗状の厚い削りかすが、無心になって削っていくうちに、だんだん薄く細くなって……紙のように透けるころ、ちりちりしていた神経も不思議としずまり、鉛筆も端正な円錐形に。
白い木肌と鈍く光る黒い芯。
とがった芯をながめて、ほくそ笑む私。
……うーむ。おかしいかなあ。
一方、軽い気分転換や、日常用には小型鉛筆削りが大活躍。
ここ15年ほどは、ファーバー・カステル社の鉛筆削りを愛用。
銀色の軽合金製で、400円ぐらいだったと思います。
その当時でも、削りかすを内蔵できる、ポケットつきプラスチック製鉛筆削りが、100円もしない値段で買えたのに。
「ドイツ製」の言葉に弱かった私。
快調に使いはじめて5年たった時、「最強の鉛筆削り」を百貨店で見かけます。
ドイツの「DUX」。
重厚さと威厳をたたえた真鍮製の本体。
切れ味のよさそうなステンレスの刃。
しかも鉛筆削りの分際で黒革のカバーがついている。
当時1500円ぐらいしていたと記憶していますが、「今の鉛筆削りがダメになった時、これを買うぞ!」と決意したのでした。
しかし、その「今の鉛筆削り」が、なかなかダメにならない。
DUXほど高くはないとはいえ、カステルも堅牢なことで有名なドイツ製なので。
今年に入って、さすがのカステルも刃が錆びて切れ味が悪くなり、もろくなった金属本体の角が欠けたりしはじめました。
……よっしゃぁ! DUXの出番やぁ!
10年以上使うことは間違いないので、替え刃が3枚ついたギフトセット、2520円を『ワキ文具』に発注。
4日後に現物が届きました。
「ESTABLISHED in 1869 MARUZEN」と銀文字が印刷された黒い箱に入って……???
スタンダードグラフ社の「DUX」を丸善が輸入して、替え刃と自社製の革カバーをセットして売り出しているのです。
さすがに革小物が有名な丸善。
きめの細かい良質な革を使ったカバーは「MARUZEN」の刻印入り。
黒、ブラウン、スカイブルー、クリームの4色の中からスタンダードな黒を選んでみましたが、ほかの色も楽しいかもしれない。
鉛筆削り本体は渋い金色。
金属を溶かして鋳型に流し込むのではなく、真鍮の塊を削って鉛筆削りの形を作り出しているので、表面に無数の傷があり、それがまた「味」に。
持ってみて驚きました。
意外に重い。
レタースケールで重さを測ってみると、35グラム。
カステルが8グラムですから、5倍近くの重量。
負担になるほど重いわけではないので、まあ、慣れの問題でしょう。
DUXには、芯を1(鈍い角度)、2(普通の角度)、3(鋭い角度)に設定できる真鍮のダイヤルがついています。
試しに3本の鉛筆を、それぞれのダイヤルに合わせて削ってみますと……確かに、微妙だけど、鉛筆の芯の角度が違う。
「ジャッ」という重い音とともに、本体と刃の間から薄い扇形の鉛筆の削りかすが出てくるのですが、これが途切れることなく延々とつながったまま、くるくると螺旋を描いていくさまは面白い。
鉛筆がとがった後も、そのまま削りたくなる……。
恐るべし、DUX。
『じっくり時間をかけて自分の手で鉛筆を削り、まっさらな紙の上に削りたての鉛筆で書く時、一種の緊張感がある。鉛筆で書くということは、鉛筆を削ることからすでに始まっている』。
……Allabout・ステーショナリーガイドの土橋正さんは、ご自分のサイト『文具で楽しいひととき』で、DUXの鉛筆削りを、そう紹介されています。
このDUX、1908年、ドイツ人テオドール・P・メビウスが発明した世界初の手動式鉛筆削り器。
日本で三菱鉛筆が創業したのが1887年ですから、鉛筆の普及と同時期に、鉛筆削りも輸入されはじめていたと思われますが、本格的な普及は第二次世界大戦後。
ちなみに、『ウィキペディア(2008.6.8 16:47)』によると、鉛筆削りは、携帯用と卓上型の2種。
携帯用鉛筆削り器は、刃のついた円錐形の削り穴に、鉛筆を押し込んで回すことで、鉛筆軸と芯が刃に沿って扇状に薄く削り取られる仕組み。
卓上型鉛筆削り器は携帯式とは反対で、鉛筆を固定し、円筒状の螺旋回転刃を旋回させて削ります。
手動式は学校にありました。
クリップ部分を引き出して、クリップを開いて鉛筆をはさみ、削り穴へ。
ハンドルを回すと、バネの力で鉛筆が回転刃の中に押し込まれていく仕組み。
芯がとがると空回りするので、クリップを開いて鉛筆を引き出す……と。
なぜか、出てきた鉛筆の芯が折れていることが多かったので、手回し式鉛筆削りは嫌いでしたね。
興味深いことに、一番高価な鉛筆削りは、この手回し式。
スペイン・エル・カスコ社の『 シャープナー』。
金と黒の組み合わせの優雅なもの。
金属に23Kゴールドメッキ。
普通、鉛筆削りは削り穴が側面にあって、鉛筆を横にして穴に差し込みますが、これは鉛筆削りの上部に削り穴があって、縦に鉛筆を差し込む形式。
ハンドルを回すと、正面の窓から歯車の回転と鉛筆が削られていく様子が見られる珍しいもの。
なんと、お値段は50400円!
しかし、いかにも「古きよき欧州」を連想させる典雅なデザインは魅力的。
ところで、日本で電動式鉛筆削りが現われたのは、昭和30年代だそうです。
そういえば、小学校入学祝いに机を買ってもらった時、電動式鉛筆削りがついていました。
穴に鉛筆先端を押し込むだけで自動的に削れて、芯が尖ると自動的に止まりますが。
削っていても楽しくない。
何よりも「ガガガガッ!」という、あの大きな音が苦手でした。
現在の電動式鉛筆削り、例えば、2007年度グッドデザイン賞受賞の電動シャープナー(三菱鉛筆)。
長方形の白い箱に、黒い鍵穴型の鉛筆削り穴だけの、静謐な気品ある鉛筆削り。
ちょっと気になるのですが、やっぱり、大きな音がするのでしょうか?
最近、ボールペンやシャープペンに押され気味の鉛筆ですが、「鉛筆を削る」行為そのものが楽しいので、鉛筆派はやめられませんね。
ラベル:鉛筆