つい最近まで、私は「デルフォニックス」をヨーロッパの文具メーカーだと思っておりました。
れっきとした、日本のメーカーなんですね。
先日、新しいリングメモを買おうと、ネットで調べた時。
新しいリングメモの候補の一つが、デルフォニックスの「ロルバーン」でした。
そこで、デルフォニックスについて調べたのです。
しかも、気がつくと、自分が持っているクリアホルダー類は、全部デルフォニックス製。
ブルーの半透明の5ポケット式のクリアホルダーをレターサイズ、A5、A4とサイズ違いで持っていますが、きれいなターコイズブルーと、「Inspiration comes of Working.」のグレーの洗練された配置のロゴの組み合わせが理知的。
5つのポケットには、それぞれ見出しがつけられるタブがついているので、書類や伝票整理に大活躍。重宝しています。
私がデルフォニックスの文具をヨーロッパ製と勘違いしていたのは、デルフォニックス製品が、ロディアやラミー、ミランやブラウンといったヨーロッパ文具と、いつも一緒に文具売場に置かれていること。
そして、どの製品も、社名の「DELFONICS」ではなく、「Rollbahn」「büro」「JOURNAL」などのヨーロッパ的な商品名ロゴが大きいせいでした。
他のメーカーが、デザインの中に社名ロゴを組み込んで自己主張するのとは違う。
メーカー名「DELFONICS」はデザインの中に溶け込むように、ひっそりと小さく入っているだけ。
そのため、クリアホルダーと手帳と、ファイルボックスの「ビューロ」とノートの「ロルバーン」は、別のメーカーの製品だと思っていたのでした。
美しい文具の写真満載の『デルフォニックス 文房具の本(PARCO出版)』によると、デルフォニックスは1988年創業。
オリジナルステーショナリー・雑貨の企画、デザイン。
ステーショナリー・雑貨・小物の販売をする会社。
直営店のステーショナリー専門の「DELFONICS」、雑貨やアクセサリーも販売する「SMITH」。
両方とも、今のところ関東圏のみの展開。
大阪にできたら行ってみたいなあ。
デルフォニックス製品で、一番有名なのは手帳。
現在、デザインや色、サイズ違いで261種類もあります。
毎年、年末になると、東急ハンズやLOFTの手帳売場に、色とりどりのデルフォニックスやクオバディス手帳が、ずらりと並ぶ光景は壮観なのですが。
……色がきれいだし、ロゴはさりげなくてすっきりしている。
あれが綴じ手帳じゃなきゃ、買ってるんだけどなあ。残念。
システム手帳派なんですわ。私は。
デルフォニックス製品は、手帳、ノート類、アルバム、クリアホルダー、ファイルボックス、ブリーフケース、ペンケース……どちらかというと「脇役文具」が多いですが。
どの商品も、美しい色と文字の配置の組み合わせが巧みなグラフィックデザイン。紙や素材も良質で、価格も良心的。
「悪目立ちせず、鞄の中や机周りに溶け込んでいる」点では、デルフォニックスの文具は、無印良品の文具に似ていますが。
水や空気のような存在感の無印文具とは違って、きれいな色と抑制の効いた文字の組み合わせは、見るたびに一瞬、軽い緊張と、かすかな高揚を感じさせる独特なデザイン。
デルフォニックス代表兼デザインディレクターの佐藤達郎氏は、文具のことを『最後のアナログデザイン』と呼びます。
確かにアナログかもしれない。
文具選びは、色やデザインの他に、「重さ」「質感」「手触り」「匂い」「書き味」「消し味」……そういった機能性や価格とは別の、データ化できない個人の嗜好に左右されますから。
『1本のペンと1枚の紙から生まれる文化は、無限大です。つまり文具は、道具であると同時に文化の入り口でもある。私たちの作る文具は、実用的であるだけでなく、使う人の感性や想像力を自由にするものでありたい、と考えます』
『DELFONICS』サイトの言葉。
そして、『デルフォニックス 文房具の本』の言葉。
『文具を通してライフスタイルを楽しくし、毎日の生活を少しずつ豊かにしていくこと』
『文具と文具店をカルチャーとして伝えていくこと』
……デルフォニックスは「社会の中での文具の位置」を明確に定義して製品づくりをしている、面白いメーカーです。
ちなみに、私が新しいリングメモの候補にロルバーンを考えましたが。
鮮やかなスカイブルーと品のいいロゴは魅力だったのですが……このメモには黒いゴムがついている。
最近のノート類には、鞄の中でノートが開くことがないように、留めるゴムがついているものが増えましたが、職場用の機動力が必須のリングメモ。
ゴムは邪魔だなあ……と思って、今回はキョクトウ・アソシエイツ(昔の極東ノート)の「Facile」を選びましたが。(『リング・メモ遍歴』参照)
よく考えてみると、ゴムはずしたまま使ってもよかったんですね。
今のリングメモを使いきるのも時間の問題だから、次はロルバーンにしてみよう。
最近の国産メーカーの文具は、驚くほどデザインが洗練されてきていています。
「元々品質の優れた自社製品にデザイン性を加えた」文具が多い中、「常に新鮮さのある定番商品、昔の文具店の活気、店に入る時のワクワクした探検に似た喜びを未来に伝えたい」と、デザインと志を重視したデルフォニックスの文具は珍しい存在。
もちろん、デザインだけがよくて品質がおざなりというわけでもなく、製品にも日々改良が加えられています。
そして、興味深いのは、社名ロゴが大きく表示されていないデルフォニックス製品を、「なんとなく楽しいから」と選んで使う人が増えていること。
「文具大国・日本」ならではの現象かもしれません。
ラベル:手帳