小泉総理に反旗を翻した「抵抗勢力」の首領。
自民党を守るために、あらゆる権謀術策を駆使した元自民党幹事長。
しかし、身体障害者施設の経営や、ハンセン病の国家賠償問題の国の控訴断念を裏で動かすなどして、弱い人々を守りもしている。
「古くてもよいものは残す、それが保守だ」の野中氏の主張は、筋が通っている。
この本は、2003年政界を引退し、現在は平安女学院大学客員教授の野中宏務氏と、楽天ゴールデンイーグルス監督、巨人の長嶋監督と比べ続けられた野村克也氏の対談集。
「野球」と「政治」、分野は違っても「勝負」の世界。
共通点は多い。
『あらゆる勝負の基本は分断と懐柔。そのためには、常に情報収集し、人間関係を深めておかなければなりません。勝負は準備の段階でついているからです』
……野中氏の言葉は胸に響く。
ところで、組織が機能していくためには、組織のために苦言を呈する「憎まれ役」が必要だ。
かつて、私が地元自治体の医療関係の委員をしていた時の臨時審議会。
議題は「市民健康診断料引き上げ」。
市の財政を圧迫する、安すぎる各種健診料。
「このままでは財政再建団体だ。来年度の健診料を引き上げ、受診を抑制せよ」と上層部から通達があり、最大3倍に値上げする新健診料を「承認」していただきたい……。
無茶な話だ。
医師会は猛反発。
本来反対するはずの市民団体は、助成金削減に怯えて沈黙。
仕方がないので私が質問した。
「財政逼迫のため健診料を引き上げるというなら、財政がよくなったら下がるんですね?」
重苦しい審議会は一瞬で明るくなった。内心、全員が値上げに反対だったからだ。
私の質問は市の上層部を狼狽させ、結局、健診料は据え置き。
その後、健診の形式が見直された。
市民には「サービスが悪くなった」と不評だが、財政再建団体にならなくてすんだ。
『本当の「決断」には、必ず陰にまわる人がいる』と野中氏は言う。
憎まれ役も悪くない
『憎まれ役』 野中広務・野村克也 著 文藝春秋
ラベル:自民党
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