毎日の仕事や生活が、もっと楽しくなる文具の紹介。
例によって、美しい写真や親切な解説満載で、読んでいて楽しい本です。
その中で、ちょっと驚いたのは、CORRECTION TOOL……修正テープ・修正ペンの種類の多さ。
まず、修正テープ。
鮮やかなオレンジやピンクと銀の組み合わせが美しく、ピルケースのような形をしたぺんてるの「フレンチポップ」。
PLUSはペン型の「ホワイパー・パル」と象のような形の「フレックス」。
コクヨは人気の「ケシピタ」。
ユニオン・ケミカーはネズミそっくりの「消シマウスHG」とカラー修正テープの「Colors」。
貼ってはがせるカバータイプの修正テープは3Mの「ポスト・イット カバーアップテープ」。
……なんじゃこりゃ。この数は。
一方修正ペンは1.0mm以下の「極細」修正ペン多数。
……うーむ。異次元の世界だ。
実は、私は修正ペンや修正テープを使ったことがありません。
正確には「使ったことがない」ではなく、「使ってはならない」職種を渡り歩いているのでした。
派遣先の銀行事務、生保の企業年金の試算、経理事務……現在の職場は、経理と似た仕事ではあるけれど、やはり数字を扱う仕事。
「訂正は、赤ボールペンの2本線で誤字を消し、訂正印を押す」……もし、これを修正テープで直そうものなら……。
経理関係なら、「ほほう。この会社は、何か不正なことをやっておるな」と、税務署から税務監査の人間が大喜びで駆けつけますし、現在の職場でも、「誰や!修正テープなんか使うたんは!」と課長が、帳簿を持って怒って飛んできます。
学生時代は鉛筆やシャープペンを消しゴムで修正していましたし、ペリカンのボールペン用消しゴムも愛用。
執筆にしても、原稿に朱を入れて、パソコンの画面上で訂正して、また印刷するので、修正テープの出番はないなあ。
それにしても……『ステーショナリー・マガジン』に載っている豊富な修正テープ類を見ていると、わきあがる疑問が抑えられません。
……修正ペンやテープを愛用する人々は何者なのか?……。
そもそも、修正ペンや修正テープは、いつごろ登場したのか?
『有限会社久保田文具店』によると、1956年、アメリカ人女性ベット・ネスミス・グラハムが、タイプミスを修正するための修正液『ミステイクアウト』を発売。
後に『リキッドペーパー』と名づけられた、この商品は爆発的にヒット。
日本にも輸入されましたが、これは、タイプライターのタイプミスを修正するもの。
乾燥すると表面がつるつるし、筆記具のインクがなじみにくいという弱点がありました。
1970年、丸十化成が、日本の筆記具に適した、国産初の修正液『ミスノン600』を発売。
論文を書く学生や研究者から、修正液は広く世間に広まって行きました。
そして、1989年、消しゴムメーカーのシードゴム工業は、世界初の修正テープ「ケシワード」を発売。
……いやあ、驚きましたね。修正テープは日本の発明品だったんだ。
ちなみに、mixi『文房具』コミュニティ(掲示板)では、「使いやすい修正テープ」の情報交換がされていて、どうやら、営業・販売系の社会人、研究者や学生などに、修正テープ愛用者が多いらしい。
……なるほど。値段の修正やボールペンで書く論文の修正に、修正テープが使われているのですね。
CAD講師でトレースなどの図面の描き方を教える夫も、修正テープ派。
「テキストのコピー前の原稿なんかの修正に使うねんけど、修正液で消したとこはデコボコして、上から字書きにくいんや。テープは平面やから、字書きやすいわけや」とのこと。
ところで『トンボ鉛筆』サイトに、修正テープの使い方のコツが載っています。
『使い方のコツは、テープ幅に対して均一に圧力をかけるように、そして角度がブレないようぴったりと当てることです。テープのセンターに親指を当てるとうまくいきます。寝かせすぎず、45度ぐらいの角度で引き、引き終わりは起こし気味にして、少し押さえてから引き上げるとよいでしょう。速度は1秒間で3cm以内が目安です』
……うーむ。じゃまくさい。
「1秒間で3cm」の速度でテープを引ける、緻密で慎重な人は、そもそも字を間違うことなんかないんじゃないか?……という気がするのですが。
時代は「鉛筆と消しゴム」から「ボールペンと修正テープ」へ。
これからも「書くもの」と「それを修正するもの」は、どんどん変化していくのでしょう。
「ボールペンと修正テープ・修正ペン」の先にある、筆記具と、その筆記具で書いたものを訂正する道具……果たして、どんなものが登場するのでしょうか?
ちょっと楽しみな気がしますね。
ラベル:修正テープ
スルーしようと思いましたが、遅まきながらコメントを入れることにします。
>……修正ペンやテープを愛用する人々は何者なのか?……。
お答えしましょう。基本的にライターを生業としていますが、校正の仕事も受けます(最近はめっきり減りましたが)。この仕事には修正グッズは必要不可欠です。ただし、当方は修正テープは使ったことがありません。
いつも持ち歩いているのは、1本が昔ながらのPentelの修正液。つい最近まで最初期のタイプを使っていましたが(これは15年以上前に買ったような)、いまは「極細」タイプ(これも何年も前のもの)。ただし、これでもまだ太いので広い面積用。めったに使いません。
細かいところに使うのは、PILOTの「超極細 修正職人 0.5」。細いタイプはいろいろ試しましたが、いまはこれがお気に入りです。
2種の修正液のほかにも常時持ち歩いているものが多く(歩く出張校正室と呼ばれています)、これ以上荷物を増やしたくありません。赤ペンだけで何本あるのか……ペンケースがパンパンです。これで修正テープを使いはじめると、あーでもないこーでもないと言いながら、最終的に2種類くらい持ち歩くようになるのが目に見えています(泣)。
基本的に修正液を塗った箇所には、字は書きません。細かい文字が書きにくいうえ、乾くのを待っているうちに書き忘れる、というミスがけっこうあるからです。原則的にほかの場所に引き出します。
校正の本来のルールでは修正液を使うのは邪道のようですが、このやり方を●十年続けているもので……。
一般の方は書類の一部を修正してその上に文字を書く……という用途のようですから、表面が滑らかな修正テープのほうが便利なのかもしれません。