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2008年08月05日

ゲルマーカーVS文具破壊者

さて、『マジックと大統領のペン』に登場したパイロットの「ゲルマーカー」、画材店で買ってきました。
 
この文具、「マーカー」という商品名ですが、実際はクレヨンの仲間らしい。
「文具」といっても、サインペンのような「事務用品」ではなく、クレヨンやクレパスなどの「画材」の部類になるらしく、文具店に置いてなくて、見つけるのに苦労しました。

それでは、いよいよゲルマーカーを試してみよう……。
ところが、その前に一つの疑問が頭の中に浮かびました。

……クレヨンのような書き味だと言うけれど、そもそもクレヨンとはなんぞや?……

『武蔵野美術大学造形学部通信教育課程』サイトによると、クレヨンは顔料に植物油とワックスを混ぜたもの。
その歴史は古く、すでに16世紀のイタリアで使われていました。

硬く艶があり、紙に定着しやすく、手にベとつかないなどの長所がありますが、この「硬くて滑りやすい」特徴は、逆に「線は描きやすいけれども、面を塗りつぶしにくい」という弱点に。
つるつるした表面の紙に絵を描くのには向いています。

一方、17世紀のヨーロッパに登場したパステルは、粉末の顔料を水性メディウム(結着材:トラガカントゴムなど)で練って押し固めたもの。

柔らかく、混色はできますが、重色できないので、たくさんの色数があり、「線による描写よりも、ぼかしよる塗りつぶしが得意、紙に定着しにくいので定着材が必要」という特徴があり、凹凸のある紙に絵を描くのに向いています。

このクレヨンとパステルの長所を生かすべく、1925年(大正14年)、サクラクレパスが開発したのが「クレパス」。

『株式会社サクラクレパス』サイトによると、クレパスは、クレヨンと同様、顔料に油性メディウム(結着材:グリセリンなど)を混ぜ合わせた「オイルパステル」の仲間ですが、クレパスはクレヨンより、顔料と液体油が多く、固形ワックスが少ない。
さらに体質顔料を加えて、クレヨンより鮮やかな色が出るように工夫されています。

クレパスは、線描だけでなく面を塗りつぶすこともでき、パステルのように画面上で混色できて、パステルができない重色も可能。
スクラッチ技法や、油絵のような絵の具を厚く盛り上げる技法も使える。
高度で幅広い絵画表現ができるので、多くの人に愛されるようになりました。

では、そこで本題に戻りまして、パイロット「ゲルマーカー」。
30色の中から、メタリックブルーを選んでみました。
1本189円。

『パイロット』サイトによると、ゲルマーカーは、太目のサインペンのような外観ですが、芯は固形ゲル。
水性顔料とゲル化剤(液状のものを固形にする物質)でできています。

『紙に描く瞬間だけ、筆記の圧力によって、まるで液体のようになめらかな状態に変化します。ゲルマーカーならではの、とろけるような描き心地です』とあるのですが……。

うーむ。これは怖い。

なにしろ、私は筆圧が高い。
高いだけでなく、やや不安定で、時々メモに穴を開けたり、ペン習字のペン先を割ったりする「文具クラッシャー」。
その強すぎる筆圧でゲルマーカーを使うと……。

……字を書こうとして、リフィルが紙の表面に接触した次の瞬間、強い筆圧でリフィルが全部液状化。
紙の上には、溶けたリフィルでできた小さな青い水たまりと、空になったペン軸。
それを呆然とながめる私……。

これは嫌だなあ。 

でも、せっかく買ったんだから、勇気を出して使ってみましょう。
A4の紙を机の上に広げました。

おもむろに、ゲルマーカーのキャップをはずして、「うぉりゃっ!」の気合いとともに、力強く縦に1本線を引くと……。

紙の上をすべるような爽やかな感触。
これは楽しい。

強い筆圧でも、若干多めにリフィルが液状化して、線が太くなる程度で、私のような文具クラッシャーでも、これなら扱える。

調子に乗って、2本、3本と線を引くうちに……気づきました。
これと同じ感触、記憶がある……。

線を引く手を止めて、マーカーを持ったまま、しばらく考えていましたが……。

「そうか! 口紅かっ!」

私は思わず大声をあげてしまいました。
このなめらかな感触は、化粧をする時の口紅を塗る感触に、そっくり。

口紅も、顔料とポリマーなどのゲル化剤でできています。
なめらかさ、クレヨンよりも鮮やかな色、強い耐光性……確かに、口紅と似ている。

『手や顔についた場合はもちろん、机などを汚した場合も、水やぬるま湯でカンタンに落とすことができます』……なるほど。

実際に手にマーカーを塗って、ぬるま湯で洗ってみましたが、確かに本当に簡単に色が落ちます。
でも、紙についたレフィルは、こすっても落ちません。
すごいなあ。

レフィルには人体に有害物質を含まないそうなので、その点も口紅に近い。
でも、実際には、クレヨンより口紅に近いものとはいえ、ゲルマーカーに「口紅のような、なめらかな描き心地」は、文具のキャッチフレーズとして不適当でしょうね。

ゲルマーカーは、あくまで「紙専用」ですから、唇に塗ってはいけませんよ。

ちなみに、本体の軸を回すと、中から新しい芯が出てきます。
芯レフィルを使い切っても、交換レフィルが1本84円で売られているので、軸を使い捨てにせずにすみ、エコロジーです。

ゲルマーカーは、色鉛筆やクレヨン、マジックや絵の具とは違ったものですが、キタハラさんの言うように、「楽しいお絵描き道具」だと思います。
posted by ゆか at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 文具コラム | 更新情報をチェックする
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