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2005年12月10日

師の器(前編) 真実は細部に宿る

「お前が「庭がよかったから、あの道場行く」言うた時、「こいつ正気か?」と思うたんやが、どうやら当たりやったらしいな」苦笑する夫に、私は得意げに言いました。
「和式の庭には、ちょっと詳しいからね」

道場の第一印象については、『合気道へ(後編) 昇級審査潜入作戦大失敗!』に詳しいことを書いていますが、日本の伝統的な庭園の管理は非常に難しい。
特に樹木の剪定は「10年先の枝ぶりを予測して鋏を入れる」というような高度な技術を要求されます。

道場の庭は、池と大きな松を生かしたバランスのいい庭。
これは長年に渡って、腕のいい庭師が管理している証拠。
腕のいい庭師は職人気質の持ち主。
技術は高いけれど気難しい職人と、何十年も良好な関係を築いている師範は器の大きい人。
おそらく師範のご家族も鷹揚な方が多い。
そして、心の広い師範の下には、当然似たような門下生が集まるので、ここは私にとって居心地がいい道場……そう考えたのです。

普通は、インターネットで情報を集めたり、本部道場から紹介を受けたり、ビジターとして実際に道場で稽古してみたり……自分に合った道場を探すのに苦労するらしい。

だから私が「道場の情報を一切集めず、体験入会もせず、いきなり、この道場に入りました」と言うと、大抵の人が「なんて無茶な」とあきれますが、何の根拠もなく入会したわけではないのです。

合気道をはじめる前、夫(武道13段)から、「最初はスポーツ教室でもいいけど、いずれは、お前に合った師範を探さんとあかん」というアドバイスはありました。

「俺は大山倍達先生、芦原秀幸先生をはじめ、多くのいい師匠に巡り会えたから、長年武道を続けてこれたんや。お前の場合、喘息のこともあるし、お前の意思と自己防御本能が全然別もんやから、普通の町道場の師範では、扱いかねるかもしれん。「三年かけても師を探せ」いう言葉があるぐらい、師匠を探すのは難しいねん。そやけど、師匠次第で、武道家としてのレベルが決まるから、大事なことや」
「大変そうだね。できるんかなあ」

「お前は、どんな師匠やったらええんや?」
「まず、体育会系の人はダメ。私にいきなり「右向け右!」とか命令しない人……ぐらいしか、思いつかないわ。大体、体育会系って、私に問答無用で命令するくせに、いつも肝心な時に、致命的な判断ミスするもん。できれば、体育会系の人に関わらない人生を送りたいわ」
夫は大笑いしました。

「体育会系全部が全部、そういう人間とはちゃうけど。確かに「みんな同じでないといけない」と考えるやつは多いわな。でも、お前に向かって「右向け右!」とか言うやつが、ミスだらけなんは、当然や」
「なんで?」
「人に物言う時は、相手見て言い方変えなあかんねん。お前なんか、見るからに、命令だけしたら反抗するタイプやんか。自分の頭で物考えるやつには、言葉で説明したら、ちゃんと納得して動くのに、それを手抜きして、命令だけで動かそうとするわけやろ。その時点で、そいつは判断力ないわけや」

よく考えると、夫が私に何か指示する時は、いつも説明があります。

「師匠を選んだら、その師匠に従わんといかんけど、習う側は師匠を選べることを忘れんようにな。自分に合った道場を探して、色々なとこで稽古するのもいいかもしれん。そういうことも、後々ムダにはならんからな。道場変えても、自分がダメとか、考えんでいいぞ」

結局、最初に選んだ道場と師範が当たりだったので、私は運がよかったようです。

以前、師範が「体格や体力の差がある人が集まって、同時にまったく同じ動作をしているのは、その中の誰かが無理をしているということです」とおっしゃったことがあります。
それぞれの体力に合わせて、マイペースで稽古に出ることができるので、本当に助かります。そうでなければ、とっくに私は挫折していたでしょう。

ちなみに、道場には理数系の人が多く、私が警戒していたタイプの体育会系の人がいないので、居心地がいいです。
そういうわけで、今もこの道場で、初段をめざして稽古を積んでいるところです。

……次回へ続く……




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