数年前、時々歯が痛むので、私は、近所でも「腕がいい」と評判の歯医者に出かけた。
その医者は歯のレントゲンを撮り、「歯に異常がないから、痛いはずはない」と、歯痛を訴える私を医院から追い出した。
結局、次の歯医者が歯肉炎を発見、抗生物質で歯痛は治った。
歯肉炎は口の中を見ただけで判別できる病気。
なぜ最初の歯医者は、それを見つけられなかったのだろう?
その後、最初の歯医者に「自由診療のインプラントは熱心だけど、保険の効く虫歯を治すのは嫌がる」と噂がたった。
今や近所には歯医者の看板だらけなのに、「まともな歯医者がいない」と、みんなが嘆いている。
大病院で産科医や小児科医が不足。
医師不足で入院制限する救急病院。
閉院する病院。
自由診療で儲ける美容整形医。
頻発する医療訴訟。
病院から追い出される入院患者たち……。
この本では、医療に携わりつつ著作活動を続ける著者が、医療崩壊の原因に迫る。
これまでの医療の常識……国民皆保険制度の下、どこの医者でも、同じ値段で同じレベルの医療を受けられる……。
それは開示されない病院情報。
禁じられた病院間の競争。
医師としての使命感で激務に耐える、医師自身の犠牲などの上に成り立っていた幻想だった。
これを覆したのは「命も金しだい」の臓器移植と、医療費を下げたい厚生労働省の政策。
情報開示が進んだために、患者が医者を選びはじめた。
診療報酬の切り下げで収入が減り、医療の水準を落さざるを得ない大病院。
医学生は激務で報酬が安い研修医や、地方の病院、医療訴訟が起きやすい小児科や産科を敬遠。
開業歯科医や美容整形医ばかりが増える。
著者が医療崩壊を防ぐ方策として提言するのは、
「患者は絶対的な健康を求めない」。
「無駄な医療をやめる」。
「臨床医と研究者の分離」。
「医師派遣は第三者機関で規制」。
「医学部教授選挙を第三者評価機関で行う」。
「開業医の総量規制」。
……どれも難しそうだ。
『医療格差の時代』 米山公啓 著 ちくま新書
ラベル:歯科医
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