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2005年12月13日

師の器(後編) 他道場

私の場合、市の合気道スポーツ教室(実質は支部道場)から、そのまま師範のおられる道場に移ったので、他の道場を知りません。他の道場に行ったことはありませんが、移籍してきた有段者の方々や、たまにやってくるビジター(体験入会)の方からお話を伺うと、同じ合気道の道場でも、道場ごとに少しずつ違った特色があるようです。

ある時道場へ行くと、見知らぬ外国人の有段者が準備体操をしていました。
私が更衣室で袴姿に着替えて道場に入ると、金髪に黒縁眼鏡の有段者は腹筋運動を止め、私に丁寧に座礼をし、流暢な日本語で言いました。

「ワタシハ、ビジターデキマシタ。キョウ、ワタシヲオシエテクダサルセンセイニ、ゴアイサツシタイノデスガ」
「師範は、まもなくおいでになると思います」
「イエ、ソウデハナクテ、ビジターヲ、オシエルヤクメノセンセイデス」
「あの、そういう人はおりません」
「ホワイ?」
有段者は怪訝そうな顔をしました。

「デハ、ダレガ、ビジターヲオシエテイルノデスカ?」
「ビジターとか、道場の人とか関係なく、みんな一緒に師範のご指導を受けていますけど」
「ホワット!」
有段者は茶色の瞳を大きく見開きました。

その時、師範が道場に入ってきて、全員による準備体操がはじまりました。
準備体操後、門下生が一列に並んで正座。
指導員の高段者が一歩前の位置に正座。
そして師範が一番前で正座。
一同、正面(掛け軸があり、開祖の写真が飾ってある床の間)に礼。
師範と門下生が向き合って座礼。

その後、「今日は、アメリカから○○さんが、ビジターとして来られています。皆さん、仲良く稽古してあげてください」と師範から紹介がありました。
結局、ビジターの有段者は、道場の有段者と楽しそうに稽古して、帰っていきました。

転籍してきた有段者数人から聞いたところ、ビジターの相手をする役目の指導員がいる道場が多いそうです。
ビジターの有段者と私が、かみ合わない変な会話をするはめになったのは、そのせいだろうということでした。

ところで、私たちの道場では、稽古後、全員で掃除をします。

「有段者にあんなことさせて、いいんですか?」
ビジターの若い白帯女性が、雑巾で窓を拭きながら、私に尋ねました。
彼女の視線の先には、熱心に箒で畳をはいている有段者たちの姿。

「あんなこと?」
「掃除のことですよ。普通、掃除は白帯がやるものでしょう」
「そうなんですか?」

私は窓を拭く手を休めずに言いました。
「師範が「みんなで掃除しましょう」とおっしゃったので、みんなで掃除しているのですが」
「……そうですか……」
彼女は納得いかないような顔をしていました。

これも、後で転籍してきた女性有段者たちに訊いてみましたが、「白帯(初心者や上級者になる前の人)は修行として掃除するべき」という考え方の道場があるそうで、特に上下関係が厳しい大学の合気道部などでは、そういう傾向があるとのこと。
ちなみに、彼女たちによると、私のいる道場は、縦の関係が割とゆるやかで、転籍してきた人にとっても居心地がいいらしい。

また、合気道部出身の若い有段者からは、毎日3時間、稽古していた話も聞きました。恐ろしい。
喘息持ちで、1時間半程度の稽古ですら、ふうふう言っている私には、とても無理。
「気合いが足りんぞ! もう一周グランド走って来い!」と、竹刀持って叫ぶ先生に出会わなくて、本当によかった。

私が最初に出会ったのが、今の道場で、本当に運がよかったと思います。





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