介護者と本人と親族と自治体と病院と介護施設の思惑が錯綜した膠着状態は、今も続く。
現在、義母は人工透析を受けながら一人暮らし。
ヘルパーがついていてくれると安心なのだが、2008年の介護保険制度改定で、義母の介護度は「要支援2」に下げられ、介護保険の利用はできなくなった。
でも、いざという時のためにヘルパー事情を知りたい。
ヘルパー養成講座は盛んに行われているのに、なぜ、フィリピンやインドネシアから介護士を招くことになったのだろう?
この本は、2007年3月11日放映のNHKスペシャル『介護の人材が逃げていく』と、その追加取材で構成されている。
制度改正のたびに切り下げられる介護報酬。
経営を圧迫されて利用者がいるのにサービスを休止せざるをえない介護施設。
仕事に生きがいを感じているのに、生活できない金額の給与と激務に耐えかねて職場を去る介護福祉士。
……読んでいて暗澹とした。
その一方で、「母国から近距離で里帰りしやすく、相手が小柄で介護しやすい」ということで、アジア諸国から介護士が来日する動きは活発だ。
すでに、2007年1月3日、東京の介護施設がフィリピン介護士の受け入れ開始(AFP BBニュース)。
2008年8月7日、経済連携協定に基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者らの第一陣101人が成田空港へ到着(yahooニュース)
……国内の介護者の待遇改善の論議が進まぬ中、現実は一歩先へ進んでいる。
40歳以上の国民が保険料を負担する現行の介護保険制度は、在宅介護主体のドイツ型だが、急速な高齢化は在宅介護を抱えた家庭を崩壊させる。
税方式で全国民から保険料を徴収する施設介護主体のスウェーデン型が理想だが、国民の抵抗は根強いだろう。
私たちが高齢者になる頃にないかもしれない介護保険制度だが、親世代を見送るまでは、なんとかもってほしい。
『「愛」なき国』 NHKスペシャル取材班・佐々木とく子 著 阪急コミュニケーションズ
ラベル:介護保険
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