最近、気がつけばNHKニュース。
民放のアナウンサーの「声」だけを聞いていると、なぜか落ち着かない。
人間だけが使いこなしている「声」。
この本は、言語学、脳神経科学、心理学、人類学、児童発達学、文化研究など、さまざまな研究分野から、「声」の不思議な世界に迫る。
「声」を生み出す人体の高度な仕組み。
赤ん坊が母親の「声」を瞬時に聞き分ける不思議。
「声」に現われてしまう感情。
時代とともに低くなりつつある女性の、高くなりつつある男性の「声」の意味。
国によって異なる声の出し方・聞き分け方。
電話・蓄音機・ラジオの登場で変わる「声」の役割。
「声」よりも「映像」を重視するテレビ時代を迎えて変わる、政治家の演説の声質。
「声」を「不安定なもの」として「文字」に置き換る人々。
個人特有のものとされる「声紋」を使った銀行の「声紋認証」の是非……
興味深い話ばかりだ。
話は戻るが、民放のアナウンサーはNHKのアナウンサーより、話す速度が早く、抑揚と声の強弱も激しい傾向があるようだ。
映像と解説を同時に見聞きすると感じないが、映像が見えない状態で解説の音声だけを聞いた時、その違いがはっきり分かる。
NHKは、他局に比べてアナウンサーの発音や発声の訓練が厳しいそうだが、それはNHKがラジオ、「声だけで成り立つメディア」に力を入れている伝統のせいかもしれない。
テクノロジーの発達で、「文字」と「映像」に意思伝達の主役を明け渡したかに見えた「声」だが、携帯電話、トーク番組、ネットラジオ、音声認識技術などで、その重要性は高まった。
19世紀までは、話し手の感情や役割を表わすものだった「声」。
現在、「声」は自由にデジタル加工できる。
つまり「声」は、発声した本人のものとは限らないわけだ。
「声は誰のものか?」
……この本が最後に突きつけた疑問は重い。
『「声」の秘密』 アン・カープ 著 草思社
ラベル:アナウンサー
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