台所で料理中、初めて使った野菜千切り器で、ニンジンと一緒に、自分の左手の親指をスパッと……。
一瞬、自分の指先がなくなったような感覚。
まな板の上の赤いニンジンとピンク色の指の肉片。
次の瞬間、台所の床にしたたる鮮血……。
私は親指が動かして、その痛みから、傷が骨まで達していないことを確認。
時計を見ると午後8時過ぎ。
病院は閉まっている。
……しょうがない。自分でなんとかするか。
消毒液つきの脱脂綿を傷口に当てました。
親指の根元を輪ゴムでしばり、タオルを巻きつけ、手を上げて心臓より傷口を高く。
傷口が低ければ、血は止まらないからです。
左手を上げたままで、とりあえず、右手だけで料理を仕上げました。
まだ血が止まらないので、血に染まったタオルを交換。
左手を上げたまま晩御飯を食べ……出血は、やや衰えましたが、完全には止まっていない。
ここで再びタオル交換。
夫に「手を切ったので、包帯や薬を買って帰ってほしい」との携帯メールを右手で打って送信。
左手を上げ続けるのに疲れてきたので、カーテンレールから紐を使って左手をつるし、そのままベッドで仮眠すること1時間。
ようやく血は止まりました。
帰宅した夫は、「お前も利き手をやられたか。俺もや」と自分の手を見せました。
右手の親指に5ミリほど切り傷。
夫の場合、爪が邪魔になって、その程度の傷ですみましたが、私は指の腹の部分を2センチほど、まともに削いでしまって重傷です。
輪ゴムをはずして、夫に包帯を巻きなおしてもらって、翌朝病院へ。
「うちは救急病院だから、24時間やってるよ。救急車で来ればよかったのに」と医者に叱られ、「この傷で、よく自力で止血できたもんだ。しかし、脱脂綿はいかんよ。繊維が傷口にひっついてる」と呆れられました。
全治2週間。
……というわけで、この一週間ほど、左手の親指を、包帯でぐるぐる巻きにされた状態で暮らしています。
今のところ、時計(利き手でない右にしている)をはめる時や、物を「つまむ」動作以外、それほど不便でもないようです。
幸か不幸か私は、「箸と鉛筆を右に矯正された左利き」だったので。
箸と鉛筆、そして、ハサミや電卓も、なぜか右ですが、あとは左手。
その利き手の左でニンジンを持っていてケガをしたのです。
もし、私が100%左利き、または100%の右利きで同じケガをしたら、もっと不便なことになっていたでしょう。
左利き……全人口の10%程度いるそうですが、なぜ右利きと左利きの人がいるのかは、いまだに謎。
原因はともかく、「利き手が右でない」ことで不便を強いられている人々です。
『ウィキペディア(2008.11.20 20:54)』によると、多くの機械は右利き仕様。
例えばエレベーターのボタン、パソコンのテンキーやエンターキー、カメラのシャッターボタンなどは機械の右側についていますし、電話機は、右手でプッシュボタンを操作したり、メモをとったりするために、受話器を左手で持つように配置されています。
日用品にも右利き仕様のものが多い。
かみそり、包丁などの刃。
急須の注ぎ口。
右手で線を引きやすいように、左から右へ振られている定規の目盛りなど。
しかも、単に生活が不便なだけではありません。
長い間、左利きの人への社会的偏見も強く、そのため、左利きの子供を無理矢理右利きにする親も多かったのです。
私も、子供の頃、左手で鉛筆を持っては母に厳しく叱られ、ひどい時には竹の物差しでピシリとやられました。
右手で箸を持って一つずつ煮豆をつまむ訓練もつらかった。
mixiにも、矯正された左利きの人が集まるコミュニティ(掲示板)があり、にぎわっていますが、子供の頃に私と同じ体験をした人が多く、それぞれに心の傷を背負っています。
親が右利きだと、あらゆる動作を右手(利き手でない手)でするように強いられるので、特につらいらしい。
ただ、例外は運動神経がいい子供。
スポーツの世界では、左利きは「レフティ(Lefty)」と呼ばれ、試合で有利。
野球やサッカーが得意な子供は、矯正されることが少なかったようです。
現在では「左利きは個性」という親もいて、矯正されずに育てられた左利きの若者と、時々出会うようになりました。
ちょっとうらやましい。
『左利きポータルジャパン』サイトには、興味深いアンケート結果が発表されています。
「左利きの子供の字と箸はどちらで教えたい?」
字も箸も左でよい左利きの親が56%。
字は右で箸は左でよい左利きの親が15%。
字は左で箸は右にしたい左利きの親が3%。
字も箸も右にしたい左利きの親が9%。
字も箸も左でよい右利きの親が8%。
字は右で箸は左でよい右利きの親が3%。
字は左で箸は右にしたい右利きの親が0%。
字も箸も右がよい右利きの親が1%。
アンケートの締め切りは2008年12月31日なので、まだ最終結果でなく、「左利き」のサイトなので、左利きの回答者が多いですが。
字だけ右にしたい親が多いのは、日本の文字は止め、はねなどが右手で書くよう想定されていること。
それに、横書きの字は左から右に書くので、左手では書きにくいからです。
実は、私の母も、母の母(祖母)も、「箸と鉛筆だけ矯正された左利き」でした。
母は「鉛筆と箸だけは、右にしとかんと、社会に出て苦労するからな」と、箸と鉛筆だけは矯正しましたが、あとは何も言いませんでした。
そのため、「物を取る」「投げる」などの動作は、いまだに左のまま。
たまに、「もしかして左利きですか?」と、人に言われることがあります。
「でも、右手で字を書いてましたよね」と、相手は首をひねる。
「子供の頃に、鉛筆と箸だけ右になおされました」と言うと、時々「今も左で字が書けますか?」と尋ねる人もいます。
「ひらがなと自分の名前程度は」と答えると、「すごい! 両利きなんですね」と感心されて複雑な気分。
確かに、左手で字を書けるし箸も使えるけれど、右手ほど器用に動かせないですから。
「両利き」とは違うと思う。
そんな中途半端な状態で数十年過ごしてきましたが、ある時、突然「自分は左利き」と思い知らされることに。
……それは合気道。
武道の剣の構えは右が基本。
「では構えて」と言われて、無意識に左で構えて叱られる……今も時々失敗しています。
修練を続ければ、右利きの人と同じように動けるのかもしれませんが、道は険しそう。
ところで、最近は、ユニバーサルデザインの視点から、左利きの人にも使いやすい道具も売り出されてきました。
左右両開きの冷蔵庫、左利き用マウス、左利き用ハサミ、券投入口が左に5度向いた阪急電鉄の自動改札など……。
左利きでも、まったく不便なく過ごせる社会の到来は、意外と近いのかもしれません。
ラベル:左利き
妙なところに食いつき?ます。
サッカーのレフティは、まあ日常生活には関係ないですかね。
野球のレフティという呼称は、なぜかピッチャー限定のイメージです。昔はサウスポーって言った気がします。これもなぜかピッチャー限定。「わーたしピンクのサウスポー」ってヤツです。たぶんバッターにも言うんでしょうね。
ルール上(1塁に近い)左バッターのほうが有利なので、右利きの子供でも左打者に育てるケースが増えているそうです。たしかイチローもそうです。
それとは別に、バッティングで重要なのは逆の腕のはずです(右打者なら左腕のほうが重要)。その意味では右投げ左打ちは理にかなっています。
スポーツは原則左利きのほうが有利、と聞きます。単純に、相手が左利きとの対戦に慣れていないため。唯一の例外はゴルフ(スポーツなのか?)でしょうか。これは用具の問題です。
武道の話。
剣道は真剣を左腰に差すのが基本なので右利きのイメージですが、実際に重要なのは左腕(ある意味、バッティングと同様)。極端なことを言うと、右腕は支えているだけ。片手面などは左腕で打つはずです。
空手、ボクシングなどは、サウスポーのほうが有利(相手が左利きとの対戦に慣れていないため)。
正確な統計をとったわけではありませんが、柔道は左利きの割合が高い気がします。
相撲(武道か?)は、利き手の話とはちょっと離れる気がします。たとえば右利きの場合、上手が右のほうが力を出しやすいと考えるか、下手が右のほうが差しやすいと考えるか。これは微妙です。
ちなみに、あまり知られてませんがプロレス(スポーツなのか?)のロックアップ(最初の組み合い)は左腕(だったと思います)を首に回すという暗黙のルールがあるそうです。ヘッドロックをするのも必ず左腕なんだとか。理由までは知りません。
くだらん話で長々と失礼しました。≦(._.)≧
冒頭の数行で先に読み進めなくなってしまいました ><(←痛い話と思いが大の苦手)
とにもかくにもお大事になさって下さい。