これが出版不況の原因の一つとされている。
どんどん本を出版して、どんどん返品され、どんどん返本を断裁する……出版業界は不可解だ。
ある関西の出版業者のブログに「出版不況は再販制が元凶」とあった。
「需要に応じて、こまめに増刷することはできないんですか?」と質問してみると、ヒステリックな反論。
がっかりした。
今思うと、私の質問は、意外と問題の核心を突いていたのかもしれない。
この本は、出版社「アニカ」の経営者のブログを晶文社が書籍化したもの。
それによると「取次会社」は、出版社の生殺与奪権を持つ恐ろしいものらしい。
「取次が何をしているか詳しいことはわからない」とあるが。
読んでいる私にもわからないので、調べてみた。
『ウィキペディア(2008.11.26 13:01)』によると、取次会社は数社。
数千社の出版社と2万店の書店の間で物流、商品管理、代金回収などを代行している。
取次会社に申請し、口座を作ってはじめて、出版社は書店に本を並べて売ってもらえるのだ。
出版会計も特異だ。
まず出版社は取次に、取次は書店に帳簿上本を「売る」。
出版社は売上と返品調整引当金を計上。
書店は一定期間(建前は半年)店頭に置いて売れ残った本を取次に、取次は諸経費を加算して出版社に「売却(返品)」。
売上と返品の差額が出版社の真の利益。
数年度にわたる煩雑な取引は税法上有利で、帳簿上は本を出すほど儲かる???
しかし、この複雑な会計処理が、現実の損益と帳簿上の損益とを乖離させ、それが出版社の経営方針を見誤らせる……。
これは簿記2級、元経理の私の邪推かもしれないが。
ちなみに、現在の本の流通の70%を占める、取次会社経由の「正規ルート」の他に、本の直販、通信販売、コンビニ、ネット書店、地方・小出版流通センター、鉄道弘済会などのルートがある。
それらも駆使しながら、「出版は自営の製造業」と、一人で本の企画制作、営業、会計までしながら、こつこつと出版したい本を作る著者。
楽しそうだった。
『日本でいちばん小さな出版社』 佃由美子 著 晶文社
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「出版不況は再販制が元凶」という説はよく聞きますが、必ずしもそうとは言えない気がします。
「こまめに増刷すること」がむずかしいのは事実でしょうが、「ヒステリック」になる理由が想像できません。
取次制度の摩訶不思議さは、当方の半端な知識では説明できません。
「元凶」とまでは思わないにしても、出版不況の原因のひとつは取次制度にあると思います。
特定の取次や出版社が悪いというわけではなく、制度に欠陥があったとしか言えません。「欠陥」は言いすぎですかね。順調なときには問題はなかったのでしょう。しかし、いまとなってはどうにもならない気がします。
>帳簿上は本を出すほど儲かる???
そのとおりです。
これがほかの小売業だとどうなるのか当方にはわかりませんが、出版業界ではそのとおりです。
実際に売れるか売れないかは関係なく、取次に押し込めば一応売り上げです。返品があるとマイナスになるので、そのマイナスを埋めるために次の製品を押し込みます。こんな壮大な自転車操業体質が、ほかにあるんですかね。これも、本が売れていたときにはさほど問題はなかったんです。ところが……。
仮に、大手の取次が「取引内容を見直したいので、いったん精算しましょう」と言いだしたとき、持ちこたえられる出版社が何社あるのかを試算したらスゴいことになると思います。