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2008年12月02日

続続・グッドデザイン賞と新日本様式

さて、そろそろ新日本様式協議会が、今年も何か動きを起こしている頃……と、『新日本様式』サイトをのぞきにいきました。

 
「新日本様式」とは、常に新しい技術や文化を生み出す「匠の心」。
全体への責任意識をもちながら、個性を磨き、気品と気概のある生き方を求める「ふるまいの心」。
多様性と調和を重んじる「もてなしの心」。

この昔から連綿と続く三つの「心」を継承した「現代でも通用する日本らしい美しく優れたもの」を100選び、「J」マークをつけて、海外や日本国内に広めようとするもの。

今年は、さらに選ばれたものが増えて、『新日本様式100選』ならぬ『新日本様式200選』になっているかも……と、わくわくしながらサイトを見たのですが、今年は追加の品が選ばれていない。

舌打ちをしつつ、『過去のお知らせ』ページを見た私は、愕然としました。
2008年9月10日の「お知らせ」……。

『「新日本様式」の趣旨を継承するため、かねてより検討が行われていたグッドデザイン賞の新賞の概要が発表されました』

……はぁ? 

『続グッドデザイン賞と新日本様式』で、私は「Jマーク(新日本様式)のGマーク(グッドデザイン賞)化」を心配していたのですが、まさか、新日本様式がグッドデザイン賞に吸収合併されてしまうとは……。

ちなみに、この賞の名前は「ライフスケープデザイン賞」。

『この賞は「感性価値創造イニシアティブ」と「新日本様式」の活動を受けて新設されるもので、生活者の支持を受けて新しい生活様式に育っていくことが出来たデザインを高く評価し、日本ならではのものづくりとデザインを推奨するのが狙いです』

……うーむ。そうきたか。

実は、私はこの賞の意図が今ひとつよくわからず、「グッドデザイン賞らしくない」とすら感じていたのですが。
なるほど。
この賞は「新日本様式」だったのですね。

『グッドデザイン賞』サイトでは、「新日本様式を継承したのがライフスケープデザイン賞です」とは書いていなかったので、気がつきませんでした。

この賞を受賞したのは「ヤマト運輸・宅急便」「ヤマハ・サイレントバイオリン」「ホンダ・スーパーカブ」。

実は、この三つの写真を見た瞬間、私の頭に浮かんだのは「ユーザーのことを真剣に考えた、メーカーのもてなしの心」でした。

どちらかといえば、グッドデザイン賞は「エコロジー」「ユニバーサルデザイン(どんな人にも使いやすいデザイン)」を志向しているので、「ちょっと違う」と思ったのです。

この茶道の思想を継承する「もてなしの心」こそ、「新日本様式」のコンセプト。
この三つは、「Gマーク(グッドデザイン賞選定作品につけられるマーク)より「Jマーク(新日本様式選定品につけられるマーク)」の方が、ふさわしい気がしてきました。

さて、作品選定をグッドデザイン賞(日本産業デザイン振興会)に譲った新日本様式協議会。「新日本様式100選(実際は116ある)」を選び終わったことだし、活動を停止したのかと思いきや……。

ドイツのハノーバー・メッセ(産業博覧会)に出展。
日米外交樹立150周年記念ロンドン講演会……。
日本国内より、海外に向けて精力的に活動していたのでした。

昨年シンポジウムを開いたフランスのパリ。
今年のドイツのハノーバー。
イギリスのロンドン……。
ヨーロッパの文化の拠点ばかり狙い撃ちしています。
さすがに「新しい日本文化の輸出」を目的に創設された「新日本様式」。

ここで興味深い文章を紹介しましょう。

『現在の英国経済の活況を支えるもの、そのひとつがクリエイティブ産業です。1997年、英国は「クール・ブリタニア」の政策により、官民一体となった様々な振興策や教育界への取組みを強化した結果、現在では、基幹産業として第3位の位置を占めるまでに成長しました(1位金融、2位フード&クロージング)。英国はかっての「産業革命の国」といいうイメージから「クリエイティブの国」へと変貌を遂げたといえます』

新日本様式が目指しているのは、国策としての「クール・ジャパン」。
他国より出足は遅れましたが、選考委員は一生懸命よいものを選んでいるし、この国は、よいものを作り出す地力を持っているはずです。

ただ、言葉が足りない。
新日本様式には、「日本の伝統に根ざしたものを選ぶ」特徴がある分だけ、日本の伝統や文化について説明が、たくさん必要になるのです。

特に、若い世代は「ゆとり教育」の弊害で、歴史や国語、美術などの授業が削減され、日本の伝統的なよいものにふれる機会が少なかったので。
「海外の人に日本文化を説明するほど懇切丁寧に、若い日本人にも日本文化を紹介する」必要があるでしょう。

一方、グッドデザイン賞も負けてはいません。

香港のビジネス・オブ・デザインウィーク(bodw)期間に開催された「INNO DESIGN TECH EXPO」で、JAPAN DESIGN、つまりグッドデザイン賞のプレゼンテーションを行いました。
今年の春にもミラノ・サローネ(国際家具見本市)にも出展していたそうですが。こちらはビジネス色が強いですね。

今年のグッドデザイン大賞に、究極のコンパクトカー「トヨタ・iQ」が選ばれたのは、グッドデザイン賞が「デザインはビジネス」を志向しはじめたことの象徴かもしれません。

グッドデザイン賞と新日本様式は、作られた背景が非常によく似ています。(『グッドデザイン賞と新日本様式』参照)。

国と産業界の危機感が二つの賞を生み出し、「デザイン(設計・企てること)は文化」、「デザインはビジネス」の二つの方向に分かれて、それぞれが日本のために優れたものを広めていく……。

あとはプレゼンテーション力を高めるだけですね。
posted by ゆか at 13:05| Comment(0) | TrackBack(1) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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