旧友のゆんさん(『緑友会』などで活躍)と、メールのやりとりをしている最中、「職場専用靴を真剣に選んでみたい」という話が出て、「ぜひそれを書いてほしい」とのご要望。
実は、「座りっぱなし」のイメージが強い事務職は、意外に「歩く」のです。
試しに、万歩計で職場での移動距離を調べたところ、私の場合、一日4.2キロ。
関連部署が離れていることが原因。
去年の年末繁忙期には、膝上の筋肉痛に悩まされました。
こんなことは初めてです。
合気道で鍛えてはいますが……。
ひょっとして、靴がよくない?
合わない靴を履くと……。
外反母趾、足の指の関節が曲がるハンマートウ、靴ずれ、たこ、魚の目、陥入爪……これだけの障害が出てくる。
怖いですね。
私の母は、若い頃、7センチのハイヒールを履いて外反母趾になり、還暦を過ぎた今、足が弱ってきて、「歩くのがしんどい」と言っています。
『足と靴と健康協議会』サイトによると、若い頃1本の線上を歩いていたのが、年をとると、1本の線をまたぐ歩行(二軸歩行)になり、足の外側だけで、すり足で歩く。
足の大きさ分しか足が踏み出せず、わずかな凹凸にもつまずきやすい。
足が外側に傾き、両膝が合わなくなり、直立すると膝が痛むので、膝を曲げて歩く。
……うーむ。怖いなあ。
そこで、靴選びの基本的なチェックポイント。
つま先と靴の間の余裕。側面や上下から足が圧迫されていないか。
土踏まずの適度なフィット。
くるぶしに靴がふれない。
履き口が深く靴が脱げにくいこと。
踵と靴のカーブが合っていること。
……まあ、要するに「履いて痛くない違和感のない靴」ということですね。
でも、これがまた難しいんだ。
ここ数年、私は店で靴を買ったことがありません。
「24.5の3Eか25の靴はありますか?」と訊くと、「ありません!」と私をにらむ、靴屋の若い女性店員。
もう疲れました。
その点、通販は、足の大きな女性靴に力を入れていますし。
ただ、通販の靴も、履いてみないとわからないので、注文返品の繰り返しで失敗ばかり。
でも、にらまれるよりマシ。
わかっていることは、足が大きくて幅広。
土踏まずのカーブが強い。甲高。
右足より左足が大きい。
デザインによっては、24.5の3Eの靴に足が入らない。
……難儀やなあ。
こうなると、どんな靴を選んでいいのかわかりません。
途方に暮れていた私でしたが、先日、読んでいた地元情報紙の記事に、目が釘付けに。
「40代〜80代の人向け中敷とウォーキングシューズ専門店」。
……シューフィッターが、正確な足のサイズを測り、足に合った靴を徹底的に探し、個人に合ったオリジナル中敷を作る。
……面白い。
記事によると、外反母趾、むくみ、足の痛み、疲労、O脚、腰痛、膝の痛みなどが、中敷を交換するだけで解決する。
……ほんまかいな?
ということで、その店に出かけてみました。
靴のディスプレーは一切なく、通路の右側に、メーカー別に分類されたウォーキングシューズが整然と積み上げられ、奥に絨毯を敷いたソファ、測定機器や工房。
……どう見ても「靴屋」の雰囲気じゃない。
『39歳以下の人お断り』の看板がかかっているわけでもないのですが、若者は、不審そうな表情で店をのぞき込むばかり。
私が店に入ると、奥から、にこやかな表情の若い男性が出てきました。
「いらっしゃいませ。どのような靴をお探しですか?」
「職場で履く靴を。サイズは24.5の3E、またはメンズの25。甲高で、右より左が大きく、土踏まずは、はっきりしています。踵が3cm程度必要。低反発素材は嫌いです」
「わかりました。では、まず採寸を」
奥のソファに案内されて、採寸。
私はソファに座り、シューフィッターは絨毯にひざまずいて、下から見上げられるので、なんだか気恥ずかしい。
ウォーキングシューズは靴下履きが基本。
そこで、踵と足の裏がゴム編みになったウォーキング専用靴下に履き替え。
採寸結果は、右の足長24.6、足囲(足の一番幅のある部分)が24.6。
左の足長24.8、足囲24.7。
足長が24.8なのに、24.5の3Eの靴が履けるのは、つま先に余裕がある靴を作るメーカーもあるからだそうです。
「では、素足を拝見……何ですか? この爪は?」
私の足を見た彼は、驚いたようでした。
天を突くように上向きで生える四角い爪。
踏んだ相手の足裏を傷つける凶器。
母が「画鋲爪」と命名した、いわくつきの足の爪です。
「外反母趾でもないし、陥入爪(変形した足の母指の爪の両側が肉に食い込んで炎症を起こす症状)でもない。こんな爪の人は初めて見ましたよ。爪は剥がれたりしないんですか?」
「ある程度伸びると、勝手に水平に亀裂が入って、きれいに爪切りで切ったように割れるんで。剥がれたり、深爪したことはありませんね」
「なるほど。これでは、つま先や甲が薄い靴は不向きですね。サイズ、骨格、肉のつき方を見ると、お客様の足は、標準的なメンズの2E。レディースの3Eではありません」
ショック!
アイルランド系4世の私の足は、標準的な日本男性の足だったのか!
次に、インクスタンプ台に紙を敷いて、その上に立って、足の加重バランスをチェック。
両足の親指の付け根だけ、インクの色が濃くて、そこに力が加わっているのがわかります。
「歩いてみていただけますか?」
靴下と、お勧めの靴を履いて、店内の細い通路を一往復。
でも、足裏の凹凸が気になる。
「すり足のようなお客様の歩き方……武道のような、特殊なスポーツをされていますか?」
確かに、私は合気道初段ですが。
武道を「特殊なスポーツ」って、なんか失礼やで。
以前、この店に剣道の有段者の男性が来店。
私と同じ歩き方をしていたらしい。
武道家は、鍛えた筋肉で歩行バランスをとっていますが、何かのはずみで筋力が衰えると、膝痛が起きるとのこと。
そこで、靴選びの方針は「膝の動きをサポートする靴」に。
その後、店の靴を履いては歩き、履いては歩く。
履いて立つのと歩くのとでは、随分感じが違います。
いつもは、靴を履いて2、3歩だけで買うかどうか決めていたので、反省。
結局、決まった靴は……「ニューバランス MO855」。
メンズの2E。
防水加工のスエード製ですが、意外に重くない。
「一日の移動距離4.2キロ、書類の束を持ち歩く。階段の多用」の条件を考慮。
平坦なアスファルトの上を歩く街歩き、「ウォーキング」用ではなく、アウトドア用の「トレイル・ウォーキングタイプ」と呼ばれるものです。
ニューバランスの靴は初めてですが、足がスムーズに前に出るのが気に入りました。
本来は、靴についている中敷をはずして、足裏を詳しく採寸して、オリジナル中敷を作るのですが。
靴選びで2時間近くかかってしまい、中敷は、次の機会に……。
「今の靴は、足長と足囲だけが合っている状態で、足裏は合っていないですから、いずれ、支障が出ますよ」という、シューフィッターの不吉な予言を聞きつつ、店を出ました。
とりあえず、足長と足囲がぴったりの靴。
普通の中敷で、様子をみてみましょう。
ラベル:ウォーキング