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2009年02月17日

動く禅(後編)武にして舞なり

『武にして舞なり』……。

 

合気道の演武のビデオなどを見ていると、「合気道は、華麗なる飛び受身(宙返りのような受身)をしなきゃいけないんだ」と思いがちですが……。

「動く禅」なら、別に、宙高く飛び上がり、空中回転しなくてもいいですね。

それにしても、体へのダメージを最小限にするには、どうしたらいいのでしょう。

『佐々木合気道研究所』によると、合気道で痛めやすいのは肩、腰、膝。

肩を痛めるのは長年習慣になった肩の無理な使い方。
肩を抜くことが重要とのこと。
稽古中、「相手に手首を取られたら、肩の力を抜いて、手の力だけでなく、体全体を使って相手を崩しなさい」とは言われるものの……。

難しいですよ。
相手に手首を握られた時点で緊張して、肩が上がってしまうのが普通ですから。

手と肩の力を抜いて、背中の中心、肩甲骨の間を意識しながら、体ごと後ろに下がると、うまく相手を崩すことができるようですが。
これも、時々失敗します。

腰を痛めるのは、右足を出しながら左手を前に出すなどの動作、体をひねって使うことから起こる場合が多い。
体をひねらず、同じ側の手と足を一緒に出す「ナンバ」という、昔の日本人の動きをすると、比較的腰痛が起こりにくくなるそう。
でも、歩き方そのものを変える必要があるので、これも大変でした。(『古を鑑みる』参照)

膝を痛めるのは、『体の内側、裏に力を入れるからである。体の表を意識すれば、力は腰からふくらはぎ、踵といき、膝にはあまり負担が掛からなくなるはずである』

……うーむ。これはわからん。

確かに、年末、仕事が忙しすぎて、膝の上の筋肉痛を引き起こしましたが、膝そのものが痛んだ経験がないのですね。
稽古で膝を痛める前に、夫が、バレーボールで使う、分厚い膝サポーターを選んでくれていますし。(『座技と膝行』参照)

日常の「危険回避」なら、私の意思とは別に動いている体の意思(自己防御本能)に任せていますが、合気道は、私の管轄ですから、そうもいきません。

先日、道場で稽古後に、お世話になった3段の有段者に、「ありがとうございました」と立礼でご挨拶しました。

合気道歴40年近く。
野武士のような風貌。
実戦経験豊富な方で、初めて組み手した時に、突然「君は、そんなに人間が怖いか!」と言われました。
「すみません。怖いです」と答えると、大笑い。
その後、色々とアドバイスをいただくなど、お世話になっています。

挨拶の後、私は有段者に背を向けて歩き去ろうとした……はずですが。

次の瞬間、頭の中で何かが「パンッ!」と弾けた感覚。

気がつくと、私の体は左に移動し、反転。
有段者に向き合う形で構えていました。
しかも、両手の指を伸ばした合気道の構えではなく、指を開いて空をつかむ我流の構え。

有段者の利き手の右側から、左……最初の一撃が届かない位置に移動し、利き手の左で自分の体をガードしながら、一瞬で迎撃態勢をとった?

なぜ、私の体がそう動いたのかはわかりませんが。

有段者は、拳法のような構えの状態で苦笑しました。
噂に聞く「私の自己防御本能」が本当にあるのか。
私が後ろを向いた瞬間、構えて、殺気をぶつけてみたそうです。

「……すみません。危ないので、そういう実験しないでください」と言うと、笑っていましたが。
もし構えだけでなく、動いていたら、危険なことが起こっていたと思います。

非常時、自己防御本能は、私の意識を簡単に封じて、一瞬で危機に対処しますが、その方法は、冷静にして的確、しかも残虐です。
せめて、合気道の時は、私が責任を持って稽古しないと。

そこで、武道13段の夫に尋ねてみました。
合気道の源流の武道、大東流合気柔術の他に、空手、剣道、少林寺拳法、柔道などの有段者でもある人ですから、合気道以外の色々なタイプの受身について知っているはずです。

「痛くない受身の方法ってある?」
「今更何言うてんねん。黒帯のくせに」
「……すみません」
「そういえば、最近、あんまり稽古に行ってないやろ。痛くない受身は、稽古積まん限り、でけへんねん。……ちょっとそこへ座れ」

リビングで正座。10分ほど、お説教されました。
まあ、これは、私が悪いんです。

「柔道にしろ、大東流にしろ、基本的に、投げ技の受身は一緒や。体をできる限り小さく丸め、頭と内臓守る。衝撃を和らげるために手で畳を叩く。その時にできるだけ、遠くを叩くように心がける。体を回転させることで、着地の衝撃を少なくするんや。そのぐらい、初心者の頃から習ってるやろ」

「それは、そうなんやけど。飛び受身は、前へ転がる方がいいのか、高く飛び上がる方が、本当は、どっちがええんやろ?」

「あほ。上へ飛び上がったら、重力が垂直にかかるねんから、体にダメージがくるやろが。高く飛ぶより、前へ飛べ。低い位置で投げられたら、自分で飛び上がらなあかんけど、その時は、いつもより、畳叩く手遠くへ、体を回転させること、意識せんと危ないで。まあ、色々言われてるけど、要するに受身は、危なくなかったら、それでええねん」

……「受身は危なくなかったら、それでいい」

……道場で研鑽会が開かれ、東京の本部道場から来られた8段の先生も、同じことを言っておられました。
古稀を越えられた方でしたが、大らかな演武をされる方でした。(『研鑽会』参照)

それと、ひょっとしたら「相手に投げられても、ダメージがないような、いい位置で技をかけさせる」ということも必要かもしれません。

……なるほど。
大まかに、これからの稽古方針が固まってきました。
でも、一番大事なのは、「積極的に稽古に出ること」ですね。
ラベル:合気道 稽古 武道
posted by ゆか at 13:04| Comment(1) | TrackBack(0) | 武道系コラム・合気道 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
旦那様の的確なアドバイスに納得。

でも、私は剣の道で、体で直接受け身をとるということはありません。

素人だからこそ素直に納得できるのかもしれません。

渦中に入っていると、簡単に考えられることも、自分で、難しく考えてしまいがちです。

それで悩む。稽古を積むほどに分からなくなり、一つのきっかけで、もワンステップ上がっていけるものです。

合気の道を頑張って下さい。


日記中の先輩から言われた「君はそんなに人間が怖いか?」

剣の道でも怖がると、姿勢が崩れ真っ直ぐ打てなくなるのです。

その怖さを乗り越えた時に正しい道が見えてくるような気がしています。

それにはやはり稽古しかないですね。
Posted by のっぽ剣人 at 2009年02月19日 02:35
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