『Stationery magazine 004(エイムック)』では、ちょっとした特集が組まれたりして。
この文具、意外に普及してきましたね。
レポートパッドホルダー……レポートパッド(レポート用紙)を持ち歩くための文具。
簡単に言うと「レポート用紙カバー」。
レポート用紙を保護する表紙と、立ったままレポートを書く時の台になる裏表紙。
ペンホルダーつきで、表紙を開いたら、すぐに、どこでもレポートを書ける便利な文具ですが……。
なぜか、これを実際に使っている人を目にするのは、洋画や海外のドキュメンタリーばかり。
日本で使っている人を、まだ見たことありません。
日本では、「なんで、わざわざレポート用紙にカバーつけなあかんねん」と、夫のようなことを言う人の方が多いだろうから、たぶん普及しないんじゃないかと思っていた文具。
(『レポートパッドのある生活』参照)。
「雑誌で特集が組まれるほど、今時のビジネスマンは、レポート用紙を持ち歩いてるんやろか」と、ロフトやハンズのレポートパッドを、ひやかしてみたところ、意外なことがわかりました。
今人気のレポートパッドホルダーは、私のレポートパッドホルダーとは、少し違う。
私の愛用は、ソメスの「ライティングパッド」。
パッドを開いて右側に、レポート用紙の裏表紙をはさみ込むためのポケットが一つ。
中央にペンホルダー。
左に切り取ったレポート用紙を入れる斜めポケットと、名刺やカードを3枚はさめるポケット。
……これだけ。
ところが、今のレポートパッドホルダーは、ソメスより、はるかにポケットの数が多い。
例えば、ブレイリオの「コンビネーションジャケット」。
右側にペンホルダーとレポート用紙を差し込むポケット、右側裏表紙の外側にA4書類を入れるポケット。
左側にA4書類やノートを左右両側から入れられるポケット。
封筒や便箋をはさむアオリポケットがついている。
ブリットハウスの「多機能ジャケット」になると……。
右側にレポート用紙差し込みポケットの他に、A4収納可能隠しポケット、ペンホルダーが3つ。
左側には、外内の両側から差し込み可能なA4ノート収納用切り込み、B5収納用切り込み、B5部分小ポケット、A5ノート収納用切り込み、A5部分小ポケット。
……ポケットだらけだ。
しかも、コンビネーションジャケットはベルト、多機能ジャケットはゴムバンドがついていて、鞄の中で開かないようになっています。
ソメスにはない機能です。
「レポート用紙の他、A4書類、ノート、メモ、カード類、ペン、名刺、便箋……仕事に必要なものは、全部揃う」
……こうなると「レポート用紙のカバー」というより、「小型鞄」かもしれない。
「それやったら、鞄の方が手っ取り早いやんけ」と思われる方もおられるでしょうが。
今のビジネスマンは、筆記具以外に、デジタル機器やペットボトルなど、他の荷物も多いですからね。
持ち物を細かく分類収納できるポケットが、たくさんついていて、しかも、丸ごと取り出して持ち歩ける「バッグ・イン・バッグ」という雑貨が定着したのも、鞄の大容量化が時代の流れだからかもしれません。
ですから、「最小限の書類と筆記具だけを携帯する文具」が登場しても不思議じゃない。
ソメスのライティングパッドの中央にペンホルダーがついているのは、ペンを落さないため。
表紙は、「立ったまま筆記する」ために厚手。
でも、ジャケット類は、ポケットの数が多い分、表紙そのものが薄いですし、ペンホルダーが中央ではなく、右端……すぐに手にとりやすい位置についています。
おそらく「筆記具を持って移動し、机の上で書く」仕様なんじゃないかと思います。
そして、ほとんどのレポートパッドホルダーが、手ざわりのいい上質の革製なのは、異常に忙しくストレスの多い職場で、人々が無意識に「触覚の癒し」を求めているということなのかもしれません。
ひょっとして、日本のレポートパッドホルダーは、「レポート用紙を立ったまま筆記するための文具」から、「最小限の書類と筆記具を携帯する小型鞄に似た文具」へと、進化をはじめている?
私自身は、「アイデアを練る」という集中力のいることにレポートパッドホルダーを使うので、立ったまま筆記することは、めったになく、大抵は机の上に広げていますが。
黒革の表紙を開くと「さあ、やるぞ」と、ちょっとあらたまった感じがします。
普通にレポート用紙を広げて企画を書くのとは違った、心地よい緊張感があって楽しい。
「どうしても必要か?」と訊かれたら、返答に苦しむ文具ですが、これがあることで、仕事がはかどったり、楽しい気分になったりする人も、これから増えるかもしれません。
ラベル:レポートパッド