2007年、中教審が「中学校での武道必修化」を答申してから、はや2年。「礼儀正しい子に育てたい」と、子供に武道を習わせる親御さんは増えているようですが。
……その後、武道必修化の話がどうなっているのか、追ってみました。
とりあえず、『文部科学省』サイトへ。
『平成20年3月 武道・ダンスの必修化(中学校学習指導要領改定)』、『平成24年度の完全実施に向けて』
……えっ!!
中央教育審議会の主な仕事は、教育に関する重要事項を調査審議し、文部科学大臣や関係行政機関の長に意見を述べること……でした。
2007年の武道系コラム『武道と子供たち』で、「まだ決定事項ではない」と油断していたら、いつのまにか必修化が決まっていたなんて。
2007年9月に、武道必修化方針が定められた時、実施時期は2011年でしたが、現在は平成24年度、つまり2012年4月からということになりました。
しかも、すでに文部科学省は国に予算を要求しています。
公立中学校の武道場整備に対する補助に、40億2600万円。
私立中学校武道場整備助成分が7305万円。
武道指導者確保のための、地域連携指導実践校全国470校新設の費用、4億9397万円。
外部指導者の活用実践支援事業の費用、3億5827万円。
都道府県教育委員会が開催する武道講習会と、柔道着や剣道防具一式などを全中学校に整備するための財源を、地方交付税措置で助成。
……無謀だなあ。
しまった。一言で片づけちゃいけませんね。
順に説明しましょう。
まず、畳のある武道場の問題から。
平成20年現在の公立中学校武道場整備率は47%。
これを5年後の平成25年に70%に。
「ちょっと待たんかい! 完全実施は24年やんけ。その時に100%やないと、あかんのとちゃうんか?」というご意見はさておいて。
全国1万150ある公立中学校の整備費用の65%を国が負担……ということは、残り35%の費用を、赤字がかさんでいる地方自治体が負担しなきゃならんわけですね。
少子化で小中学校の統廃合が問題になっている時節に、「現存する各学校に武道場を一つずつ作る」という施策は、いかがなものかと思われますが。
次に、地域連携指導実践校。
これは、都道府県市町村教育委員会が文部科学省の委託を受けて作られるもの。
体育系大学や、武道関係団体、地域の武道場の人の協力を得て、地域の実態に応じた学習指導をしていくそうですが。
全国で470校ということは、一つの都道府県に10校程度ですね。
全国で1万150校ある中学の子供たちは、これにどう関わるのかは示されていません。
ちなみに、教育委員会は自治体単位で運営されています。
試しに電話帳で私の住む市の道場を調べたら……。
空手道場が多く、合気道、少林寺拳法がそれに続き、剣道場は2つ。柔道場・相撲道場はゼロ。
これでは、地元の道場から指導者を派遣、指導してもらうなんて無理。
もちろん、大阪市内の道場から派遣してもらうことも、できなくはないでしょうが、大阪市内の学校数は大変多いですから、やっぱり指導者が足りない。
『文部科学省』サイトでは、(柔道、剣道、相撲)の実技指導資料を作ったり、「学校武道実技指導者講習会」「子どもの体力向上指導者養成研修」を教員に向けて、参加を呼びかけたりしていますが。
講習を受けただけで武道を指導できるかは、心もとない状態。
中学の武道必修化の話を聞いた夫が、「人が足らんやろ」の一言で片づけた理由が、よくわかりました。
それと気になる点。
文部科学省が「武道」とイメージしているのが、剣道と柔道だけらしいこと。
畳や柔道着や剣道防具の話は出てくるし、イラストもあるのですが。他の武道の話は全然出てきません。
ついでに言うと、剣道と柔道とともに、「武道」の科目に指定されている相撲は、土俵が必要なんですが。
その話も出てこないのが不思議。
2007年当時の指導要綱案では「教える武道については地域の実情に応じる」となっていましたが。
そうなると……。
空手発祥の地・沖縄。
少林寺拳法の総本山・香川。
武田惣角氏が開拓移民として過ごし、大東流合気柔術が今も盛んな北海道。
合気道開祖の生誕地・和歌山。
古流剣術の原点・鹿島神宮と擁する茨城……。
その地方で盛んな武道を、必修科目の武道の一つに取り入れる方が、武道指導者の確保が簡単だと思うのですが。
その地域に根ざした武道ですから、自分の住む土地の歴史、郷土に対する誇りも、同時に子供たちに教えることができる……。
あれ?
なんだか、この方がいいアイデアなんじゃないかという気がしてきましたが。
それにしても、読んでいくうちに、どんどん不安が増していく『文部科学省』サイト。
では、肝心の指導要領を読んでみましょう。
……次回に続く……
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2009年03月14日
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莫大なお金を使って。
何と恐ろしいことでしょう。
地元の剣友会でも、街道場でも指導者の後継者を育てていくことは、難しいのが現状なのです。
指導者も国のお抱えで、やってくれるのでしょうか?
それにしても、全部お任せじゃ、誰もやらんですよ。
私も不安になってきました。