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2009年03月21日

『ウォーター・ビジネス』

ウォーター・ビジネス……「水商売」ではなく「水企業」。

民営水道会社、海水淡水化施設、ボトル・ウォーター製造業、下水再処理施設、地下水脈開発などの、さまざまな企業。
「人は水がないと生きられない」と、今、これらの企業に莫大な資金が流れ込む。

現在、環境汚染や異常気象で水不足に陥る人が、世界で20億。
下水処理施設が整ってない地域で、病原菌や産業廃棄物に汚染された水を飲んで、命を落す子供たちは、戦争、マラリア、HIV、交通事故で死亡した子供の数よりも多い。

人々は安全な水を求めて、巨大ダムを作り、遠い水源からパイプラインで水を引く。
多くのエネルギーを消費し、水を作る過程で有害な副産物ができる海水淡水化施設。
砂漠化を引き起こす過剰な地下水の汲み上げ。
製造時に環境を汚染するボトル・ウォーター。
安全性に問題のある下水再処理水。

金持ちは安全な水を買い、貧しい者は危険な水しか飲むことができない。

……暴走する水ビジネスの行き着く先は、地球的規模の環境破壊と異常気象、死人の山だ。

著者は、水問題に取り組む世界的NGO「ブループラネット・プロジェクト」の創始者。
この本は、悪化する世界の水事情と、それに乗じて拡大する水ビジネス。
「安全な水を得ることは基本的人権」と水ビジネスに抵抗する市民の姿を、圧倒的な筆力で描いたもの。

読んでいるうちに、めまいがしてきた。
「ゲリラ豪雨」に悩まされ、水道の蛇口をひねれば簡単に水が出てくる国・日本は、本当に恵まれた特殊な国だ。

日本でも……。
水道事業の「民営化」を迫られる、赤字が累積した自治体。
高い技術力で世界の水市場進出をもくろむ企業。
すでに「水道の民営化」の流れははじまっている。

世界には、企業と住民が協力して、新しい形の水道事業を、軌道に乗せた地域もあるそうだが。
いずれ私たちも、「新しい水道事業のあり方」について悩むことになるだろう。

『ウォーター・ビジネス』 モード・バーロウ 著 作品社
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posted by ゆか at 10:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 本読みコラム | 更新情報をチェックする
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