著者は東京大学史料編纂所教授。
この本は、1972年と2006年の中学校の歴史の教科書を比較しながら、歴史研究の史実や解釈の新発見、変わりゆく日本史の姿を描いている。
私が中学生だったのは1980年代初頭なので、習った日本史の内容は1972年の教科書に近いと思うが……。
2006年の歴史の教科書は驚くことばかり。
おなじみの聖徳太子像、源頼朝、足利尊氏、武田信玄の肖像画は別人のもの。
大和朝廷は大和政権、仁徳天皇陵は大仙古墳。
武田騎馬武者隊がいなかった長篠の戦い、厳密には「鎖国」していなかった江戸幕府……。
日本史は得意なつもりだったが、現在の教科書で試験を受けたら、赤点を取ってしまいそうだ。
国文科で日本書紀について勉強していた80年代半ば。
日本史の助教授は「記紀(古事記と日本書紀)は、日本の古代史上、重要な資料ですが、戦火などで失われた当時の資料もたくさんあります。だから、今の歴史は「現時点でわかっている日本の昔」にすぎません」と言った。
当時の私は「ふうん。そんなものなのか」と軽く聞き流したが……。
1992年の青森県三内丸山遺跡の発掘は日本史を塗り替える大発見だった。
それまでは、移動しながら狩猟生活をしていたと考えられていた縄文人が、大集落を作って1500年も定住。
栗、瓢箪、エゴマ、豆類などを栽培する農耕生活をしていたのだ。
三内丸山遺跡のような発見される「事実」よりも、失われた「事実」の方が多く、「本当の歴史」は永久に闇の中かもしれない……。
この時、頭をよぎった思いは、年々強くなる。
しかし、人が重要な決断をする時、よりどころになるのが「歴史」なのだ。
そのよりどころが、新発見によって、どんどん曖昧になっていく。
どうしたらいいんだろう。
『こんなに変わった歴史教科書』 山本博文 著 東京書籍
ラベル:日本史
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自分自身の引き出しにある情報とは異なることから、知った当初は曖昧にもなりますが、やがては新事実によりもたらされたものが、新たなその時代像を作り上げてくれるのだ、と思うことにしています。
いずれにせよ、過去を全部知り尽くすことが、タイムマシンでも無い以上不可能なことから、どれほど情報があっても推測に過ぎないのですが。