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2006年01月14日

『日本を継ぐ異邦人』

最近、日本の伝統文化を見直す機運が高まっているが、マスコミがとりあげるのは「伝統を現代に生かす」という誤訳されたもの。
本来の伝統とはかけ離れたものが多い。私は国文科で日本の古典文学を学んだ。
途方もなく広く深い、日本の歴史や伝統、文化を本気で学ぶのにも苦労するが、伝統を受け継いで次世代に文化を伝えるのは、もっと大変だ。

政府の援助が少ないまま、天然記念物扱いされ、朱鷺のように滅ぶ日を待つ日本の伝統文化。
意外にも、それを受け継ごうとする多くの外国人がいる。

この本は、全国各地で日本の伝統文化を継承する21人の外国人を取材したもの。
浮世絵版画師、輪島塗師、尺八製作者、杜氏、美濃傘づくり、達谷神楽、金剛流能楽師範、戸田派武甲流薙刀術、神道夢想流杖術……様々な日本の伝統文化を学び、また次の世代に伝えようとする外国人がいる。
年齢層は60代から30代と幅広い。

日本文化に魅せられ、日本文化に人生を捧げ、日本人に日本文化を伝承する役目を果たしているが、彼らには「日本文化を背負っている」という気負いはない。
「たまたま好きなのが日本の伝統文化で、それを学び、他の人に伝えているだけ」という彼らの自然体の姿がいさぎよい。
自分の夢に妥協がなく、そのために母国とはまったく異なる日本の気候や習慣も乗り越え、貧乏にも耐え、厳しい修行に真摯に取り組んでいる。

「世界に向けて発信できるものはたくさんあるはずなんです。今の京都には、伝統技術の後継者が少ない。だったら宮大工の仕事にせよ、外国人が京都で修行できるシステムがあってもいい」と語るのは、京都天龍寺の老僧ヘンリー・ミトワ。

これから日本人の数は減っていく。
ミトワの言葉は、これから閉塞していく日本社会に、一つの風穴を開ける重要な提言だと思う。


『日本を継ぐ異邦人』 井上和博 著 中央公論社
posted by ゆか at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 本読みコラム | 更新情報をチェックする
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