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2009年04月14日

丹田(後編) 息と「気」

「相手の「気」を包み込み、丹田を膨らませるイメージで、細く長く息を吐きながら技をかけるように」と指導される道場長師範。

 

「一旦息を大きく吸い、丹田にためて、「気」とともに一気に出すように」と指導される来賓の師範。

……うーむ。よくわからん。
あまりにも対照的な指導に、私は考え込みました。

『身体感覚を取り戻す』に、丹田を使った呼吸法が2種類載っています。

「精神を落ち着かせ、体の無駄な力を抜くために、息を長く緩やかに吐く」、もう一つが、「重いものを持ったり、力をすべて出し切ったりするために、息を溜める」。

「息を溜める」という動作には、「相手とのタイミングを合わせやすい」という利点があります。
もちろん、息を緩やかに吐きながら、相手とのタイミングを合わせることもできますが、これは高度な技術ですね。

『息は身心のあり方を変える手段でもある。息のあり方を意識的に変えることによって、身心の状態を変えることができる。呼吸法は、こうした息の性格を方法化したものである。一定の呼吸法を持続的に練習することによって、目標とされる身心のあり方に自分を近づけていくのである。呼吸法としてまで方法化されなくても、私たちは日常的に息のこの性質を用いている』

……西大和会・正勝会の植田さんのお勧めの本『身体感覚を取り戻す(斎藤孝著・日本放送出版協会)』には、そう書かれています。

おそらく、合気道には「相手の「気」を吸い込んで制する技術」と「自分の丹田から「気」を出して相手を制する技術」の両方があるのでは……。

道場長師範が「相手の「気」を吸い込む(受け入れる)」方を重視されるのは、師範が禅僧だから。
来賓の師範が「自分の「気」を溜めて一気に出す」方を重視されるのは、来賓の師範が、書家として表現活動をなさっているからかもしれない。
 
さまざまな側面を持つ合気道。
それを学ぶ人の人生観によって、どの面に魅かれるかが違うのでしょう。

同門の有段者で、本職は武道具屋さんの澤増ハジメさんは、「合気道は「一人一派」」と表現されましたが。
多様な考え方を認める……それが合気道の魅力の一つ。

『身体感覚を取り戻す』を読み終わって、来賓の師範がおっしゃられた「息を溜めると、丹田が、くっとなる」を、台所でやってみました……。

確かに、息をお腹いっぱいに吸い込んで留めると、一瞬下腹が緊張します。

ああ、よかった。
ちゃんと「くっとなる」のか。
「初段失格!」と叱られなくてよかった。
普段意識して稽古していなかっただけでした。
やれやれ。

あとは「腕を通して手から「気」を出す」です。
ここは、空手4段剣道3段少林寺拳法3段大東流合気柔術2段柔道初段の夫に訊いてみましょう。

「丹田の「気」を、腕を通して手から出すには、どうしたらいいのかな?」

夫は呆れたように言いました。

「そのまんま、手から出したらええやんか」
「えっ、そんな簡単なもんでいいの?」
「簡単とか、そういうこと言うな。これは、口で教えたらできるもんでもないわ」

叱られてしまいました。

「とりあえず、お前ができるとこまでやってみ」

台所で、私は肩幅ほどに足を開いて立ちました。

まず、肩の力を抜いて、息をゆっくりと吸い込みながら両手を軽く重ねる。
その時、大地から黄色い「気」の流れを吸い上げるイメージを描きます。

そして、両手を重ねたまま、一旦胸まで上げ、息を静かに吐きながら、手と一緒に「気」をヘソのところでおさめる……。

「そこまでは、いけてるのに、なんで、腕から気を流されへんねん」
「流し方がわからん。それに、丹田に「気」を集めるのは、最近できるようになったから。前は、足元から背骨を通じで頭や眉間、そこから手にいってた」

「変わっとるなあ。大体、印堂(眉間)みたいな、難しいもん使うてるくせに、なんで丹田使われへんねん。印堂と違って、丹田は、自分で腹式呼吸して意識できるもんやろが」
「使い物にならんからや。子供の頃、喘息でお腹痛くなったり吐いたりして、全然腹式呼吸できへんかったし」

「あほ! 自分の体やのに「使い物にならん」とか言うな。自分が使いこなせんねんやろ」
「……すみません」

確かに夫の言う通りです。

「まあ、印堂と丹田両方使えた方が得やろ。慣れたら、手足から「気」取り込んだり、相手の「気」吸い取ったり、色々できるようになるわ」

夫は、肩幅に足を開いて、丹田に気を集め、鋭い気合いとともに貫手(手を手刀と同じように開き、指を伸ばして突く空手の型)を繰り出しました。

指先まで「気」がこもった刃のような動き。

「まずは、丹田から腕を通して、指先まで「気」が流れるのをイメージしながら動く。イメージだけやない。手刀にしろ、突きにしろ、指先に気持ち込めて、一つ一つ丁寧に稽古する。……これは、稽古を積むことでしかできん」

「なるほど……。なんとか、がんばってみる」
「そやけど。お前、なんで、そういう妙なとこで、悩むんや。変わっとるのう」

夫は苦笑しました。

……今回の反省。
体の隅々まで意識すること。漫然と稽古しないこと。
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