有段者になると「太刀捕り」「短刀捕り」「杖捕り」など、武器を持った相手を捕り押さえて、武器を取りあげる技ができなければなりません。
例えば、受け(技をかけられる側)が木剣を振り上げて、本気で捕り(技をかける側)の急所を狙って打ちかかっていかなければ、捕りは、うまく技をかけて受けの木剣を取りあげることができないのです。
合気道は、捕りと受けが交代で技をかけ合いますから、武器を持った者を捕り押さえる技術と、武器を使う技術、この両方ができなければいけない。
木剣、短刀、それぞれに扱いが難しいのですが、私が一番苦戦しているのが杖。
杖(「じょう」と読みます)は、よく老人がついている傘の柄のような「ステッキ」ではなく、長さ128センチ、直径2.8センチ、まっすぐな棒状の木製の武器。
「木なんかで、刀に勝てるわけがない」と考えるのは甘い。
杖道(神道夢想流杖術)の開祖、夢想権之助勝吉は、400年前、槍・薙刀・太刀の動きを総合した杖術で、宮本武蔵を破ったと伝えられています。
『突けば槍、払えば薙刀、持たば太刀』……実際に振ってみて、使いこなせたら、かなり恐ろしい武器だと感じました。
杖の先端、円筒形の角の部分が当たれば、人の肌などはスパッと切れてしまうのだそうです。
合気道では、流派によって違いますが「十三型」「三十一型」など、色々な杖の型を覚えていかなくてはなりません。
道場では、たまに杖の稽古をする日があるのですが、タイミングよく杖の稽古に出会えなくて、なかなか型が覚えられないのです。
時々、後稽古で、杖を稽古している有段者を見かけたら、お願いして杖を教えてもらっていますが、我ながら呆れるほど不器用で情けない。
十三の基本形のうち、一番から四番を初段の女性有段者に。
五番から七番は、六段の年配の有段者に。
八番から十一番は、居合道も習っている上級者の若者に。
十二番と十三番を、二段の若者と三段の若者に。
最後に道場長代行に全体を見ていただいて……やっと、なんとか十三型ができました。
十三型で、これだけ多くの有段者の手を煩わせているのに、これが三十一型となると……考えただけで、気が遠くなりそう。
とにかく十三型だけでも、なんとかマスターしようと、体調がいい時に、後稽古で一人で杖を振ったりしますが、そのたびに「ははは。なんだ、その怪しげな構えは」と、有段者に笑われています。
笑われるけれど、きちんとアドバイスをもらえるのは、たぶん私が「見ちゃおれんオーラ」を放っているからでしょう。
杖の型の稽古は、しばらくやらないと、すぐに忘れてしまうので気をつけないと。
当分の間、「十三型、あれで合ってるはずなんやけど、なんか怪しげやな」と、有段者の首を傾げさせる日々が続くことになりそうです。
……次回へ続く……
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忙しそうだけど、来月あたりにでもお茶しましょうv(^^)v