当時私が経理をしていた建設会社は、一人の施主の入金遅れから資金繰りが狂いはじめた。
その後、社長の振り出す手形を一万円札の束と交換していく、ヤクザ風の男が、毎月出入りしはじめ、下請業者の支払いは、現金から先日付小切手に。
そのうち、支払日のたびに、下請業者たちが、鬼のような形相で事務所に押しかけるようになった。
社長も専務も雲隠れしてしまい、事務所に残った私一人が対応するはめに。
誠心誠意謝り続ける私を、「いや、あんたが悪いんちゃう。悪いのは社長や」と慰めた下請業者たち。
ついには「うちで働けへんか?」と言う人まで現われたが、解雇が決まっていて、次は自宅近くで就職したい私は、曖昧に笑ってごまかした。
失業して半年後、私は会社の顧問税理士に、確定申告の件で電話をかけた。
「あの会社、あなたが辞めた後、倒産しましたよ」と、吐き捨てるように言った税理士。
義母の介護のために当面就職できない近況を話すと、「あなたは、あの時に辞めて運がよかったですよ。大変でしょうが、がんばってください」と励まされたので、お礼を言って電話を切った。
この本の著者は、自らも倒産経験がある経営危機コンサルタント。
販売、建設、製造、サービスの4業種の倒産事例を使って「倒産とは何か」を解説している。
「倒産」には、事業停止型倒産の「放置逃亡」「私的任意整理」「法人破産」。
負債や人員を削減する事業継続型倒産の「民事再生法」「再建型任意整理」がある。
私が勤めていた会社は、借金が資産の倍あったので、社長が「放置逃亡」したようだ。
この場合、銀行が資産を差し押さえてしまい、従業員の給料や税理士など、関係者への報酬は支払われず、下請業者の連鎖倒産が起きる。
給料がもらえた私は運がよかったのだ。
あの時「うちで働けへんか?」と言った塗装会社の社長は、今、どうしているんだろうか。
読み終わった私は、深く溜息をついた。
『倒産するとどうなるか』 内藤明亜 著 明日香出版社
ラベル:倒産
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この言葉は初めて知ることが出来ました。ありがとうございます。
それにしても…。
役員を除く、従業員の給与は先取り特権があるので大丈夫と、なんとなく思っていたのですが。
清算がきちんと為されないままだと、それさえ手も付けられず、一切がうやみやのうちに登記抹消されて消えてしまう。
かと思えば、きっちりと再生して頑張っている会社も有り。
つくづく、会社は生き物なんだと思います。