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2009年05月19日

潜入!関西出版業界祭り

『私が世話人をしているイベントがあるのですが、ご参加いただけませんでしょうか』

 
……最近、mixiで知り合った方からいただいたメッセージ。

このイベントは、関西のフリーランスや出版業界人が年に一度集まり交流するもの。
考えてみれば、私が関わるのは、いつも東京の出版社。
地元の出版事情は全然知りません。

イベントの正式名称は『出版ネッツ関西2009フェスタin大阪』で入場無料。
内容は、作品展示や1講座500円のセミナー、フリーマーケットや本の即売、名刺交換パーティーなど。
……どうやら「関西出版業界文化祭」のようなものらしい。

セミナーは、組版知識やパソコンテクニック、デジカメ撮影術、関西書店事情、著作権法などなど。
ライターの役に立つものばかり。

中でも目玉講座は「出版社はこんな企画を待ってます!」。
二人の出版業者が、自社の出版事情を語るのですが……。
両方とも出版するものの傾向が、武道系コラムとも文具系コラムとも違うので、受けてもしょうがないかなあ。

でも、誘ってくださった方は、「いろいろな人をご紹介したいです」と言ってくれてるし。
結局、名刺交換パーティーを断り、セミナーを一つだけ予約しました。

今回の関西出版業界祭り来訪の目的は、招待者へのご挨拶とセミナー受講。

名刺は交換しない……というのは、私と名刺交換した後、名刺を見て、「ベストエッセイ!」と絶句し、ヒステリー状態になる出版関係者を数多く見てきました。
普通の人と名刺交換する時は、そんなことはありません。
何がいけないのか、時々悩んだりしますが。

受賞出版歴を載せた私のmixiのトップページを見た上でのお誘いですから、招待者はヒステリーを起こさない。
でも、他のライターや編集者はどうだろう?

そこで、今回は「一般人のふりをして紛れ込み、関西出版業界事情を偵察する」スタンスで出かけることにしました。
名刺交換は招待者と講師のみ。
招待者と名刺交換しておけば、また縁があれば、お会いする機会もあるだろうし。

ということで、久しぶりに地下鉄に乗って、大阪市の中心部へ。

会場は大阪府の公共施設のロビー。
パーテーションで区切られた狭いセミナー会場と作品展示会場。
片隅に机を並べた受付。
一坪ずつのフリーマーケットと本の即売会場のスペース。
……なんだか「公民館の文化祭」みたいだなあ。

受付で、セミナー申し込み手続きをしようとしたら、いきなり「名刺をいただけますか?」と「ライター○○」と名札をつけた女性に言われて、戸惑いました。
名刺交換ではなく、一方的に名刺を提出させられたのは初めてです。
受付の女性は、私の名刺を見もしないで机の脇の名刺ケースに放り込んでいたので、ヒステリーは回避されました。ラッキー。

会場では、主催者だけが名札をつける方式。
受付の奥に、名札をつけた出版業者がいました。
かつて私をネット上で罵倒した人。
危ない危ない。近づかないようにしよう。

セミナーまで時間があったので、展示物を拝見。参加者別にスペースがあり、パネルに経歴、机の上に本と自分の名刺が入ったケース。
そして、「名刺をお入れください」と書いたケースに、名刺が数枚入っていますが。
無防備だなあ。個人情報は大丈夫なのかしらん。

会場のあちらこちらで、あたりをはばからず、大声で仕事の話をする女性たち。
たぶん、ここへ来るのは、みんな仲間内でしょう。
……私のような異端者が乱入して申し訳ない。

招待者の展示物を見ていると、名札をつけた招待者ご本人が近づいてきました。
白髪頭の小柄な男性。

挨拶して名刺交換。
教科書出版社出身。国語や社会の教科書を編集しているうちに、旅行書や歴史雑学の本などの依頼を受け、仕事の幅を広げている方。

「教科書執筆のような立派な仕事をされているなんて、すばらしいですよ」とほめると、気弱な笑顔を浮かべられました。
10冊以上も著書があるのに、「島村さんみたいに、自分の書きたいことを書いているわけでもないです」と謙遜されます。

その時、セミナー開始のアナウンスがあり、私は招待者に促されてセミナー会場へ。

私が受講するのは「56歳で持ち込みデビュー。奈良で暮らしながら東京から仕事を取り続ける、71歳の現役児童文学作家」の「関西にいながら仕事をつなぐコツ」。

……今、一番私が知りたいこと。
日本の出版社のほとんどは東京にありますから。東京に移住する方が絶対的に有利。
でも、義母の介護を抱える私は、大阪から動けない。

講師は70代とは思えぬ若々しさで、「健康第一」「とにかく原稿を書きためる」「熱意のこもった文章は5割の確率で通る」「落ちても自分を責めない」……など、たくさんの「書き続けるコツ」を披露。

この方の成功は、出版業界が好況だった時代背景も大きいけれども、「絶えずどこかで文章を発表している」「ファンが多い」が大きな要因だと思います。

講座が終わってセミナー会場を出ると、展示会場はライターとおぼしき大勢の人で満員。
次のセミナー「出版社はこんな企画を待ってます!」を受講して、その場で自分の企画を売り込むのでしょう。

……でも、どうだろうなあ。
講師の一人は「今の印税は高すぎる。もっと下げるべきだ」とネット上で公言する人。
印税は本の売上の10%と言われていますが、正確には2〜10%。
10%もらえるのは、一握りの有名作家だけ。
しかも、支払いは半年後だったりしますから。

帰る前に、招待者にご挨拶。
「今日はありがとうございました。なんでもお手伝いさせてください。よろしくお願いします」と言うと、招待者は目を伏せました。

「島村さんは創作系だから……」

出た。「創作系」。
この後に続く言葉は「仕事を任せられない」「私に期待しないでください」「今後関わりたくない」……。

私は自分の自由に書く文章だけでなく、依頼があれば、インタビュー記事、お悔やみ状の代筆、ミニコミ誌の校正、なんでもやります。
もちろん、依頼主も読者も喜ぶものに仕上げてきました。
すべてのこれも立派な「創作」だと思いますが。

全自動日本語文章作成機なんて存在しないんですから。
どんな文章でも「書く」と……その人が無意識に選んだ言葉、つまり「創作」が入ってしまうのです。

文学賞受賞者は創作者で、ライターは創作者じゃない……そんなことはありません。

関西出版業界は非常に狭い世界で、内輪で少ない仕事を分け合っているんでしょう。
招待者が私に人を紹介しないのも、身を守るため、仕方がないことかもしれない。

……でも、正直、この方の口から「創作系」の言葉を聞きたくなかった。

帰宅して、講師と招待者にお礼のメールを送りました。
講師は、その日の夜中に、はげましのメールを送ってこられましたが、招待者からの返事はありませんでした。

……関西出版業界と縁がないのなら、仕方がない。

『ventus書籍化計画』と平行して、最近スタートした「雑誌記事売り込み作戦」に力を注ぐことにします。
とりあえず、合気道同門の皆さんが、武道雑誌をリストアップしてくださっているので、がんばります。
ラベル:出版
posted by ゆか at 13:51| Comment(1) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
う〜ん。
大変ですね…。
なぜ「創作」という言葉にそれほど過敏な反応を示すのでしょうね?
よく言えば孤高、悪く言えば独善的なイメージがあるのでしょうか?

いずれにしても、講師の方が言われているように、少しでも多くメディアに露出させることで、認知度を高めていくしかないのかな?と思います。

頑張って下さい〜。
Posted by MOLTA at 2009年05月19日 22:52
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