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2009年06月23日

活殺自在(後編) 不殺活人

「武道家やったら、ツボの心得はいるで」

 


夫は、にやりと笑いました。

「俺は空手をはじめた時、ツボ……急所のことを、きちんと習った。まず「狙っちゃいかん」ところを知っとかんと、稽古してて、相手を大ケガさせるからな。……そういえば、少林寺拳法でも、このことはうるさく言われたわ」

夫は空手四段剣道三段少林寺拳法三段大東流合気柔術二段柔道初段で、空手と剣道は指導員の経験があります。
祖父は中国で学んだ少林拳の道場を開き、父は柔道五段で町道場の指導員。
……筋金入りの武道家の家系の人。

武道的に「ツボ」は「急所」。
力を込めて刺激すれば、相手にダメージを与えるもの。
適度な刺激は相手の健康を増進する。
「殺法」と「活法」は裏表の技術です。

私は、かつて武道の「活法」のすごさを、身をもって経験しています。

今から14年前、喘息薬の副作用事故が多発しました。
それまで使っていた薬が突然効かなくなり、喘息が悪化する現象。
動揺した患者は、喘息薬を致死量まで使ってしまい、多くの人が死にました。

私も同じ事故に遭いましたが、なんとか自力で切り抜けることができたのは、「直感で薬の追加をやめて、大量のステロイド剤を使う博打処方をしたこと」、そして「夫の持つ少林寺の技」でした。

正確にいうと「少林寺拳法の整法の知識で、私の背中の「肺癒」のツボを探しあて、中国武術の少林拳の技術の硬気功で刺激し、喘息発作を緩和した」です。

『少林寺拳法』公式サイトによると、少林寺拳法は、宗道臣が中国の嵩山少林寺で拳法を学び、それを独自に体系化したもの。

『不殺活人』(誰かを傷つけるためのものではなく、自分や他人を守り、活かす)の思想を根底に持ち、合気道と同じく、「自ら仕掛ける技を持たない」武道。

『ウィキペディア(2009.6.20 11:23)』によると、少林寺拳法の技法には、突き・蹴りなどに対し、当て身で反撃する「剛法」と、手首を握る・衣服をつかむなどに対して、抜き・投げ・固めなどで反撃する「柔法」。

そして、ツボや経絡の知識を活かした技術「整法」があります。
ただし、整法(整経・整脈・整骨・活法)は使い方を間違えると、相手のダメージが大きいですから、高段者になってから勉強するようです。

ただし、あくまで整法は「応急処置」。
万能ではないので、後で医者に診察してもらいましょう。

さて、合気道と「ツボ」について。
『佐々木合気道研究所』所長の佐々木貴7段は、興味深い提案をされています。

『合気道の"ツボ"とは、そこを押さえると、相手の力が抜けたり、不安定にさせるポイントと考えるので、鍼灸や医療用でいうツボと合致するポイントもあるだろうが、多少違うところもあるせいだろう。とはいっても、合気道を修行するものでも、鍼灸でいう「ツボ」を研究すれば「わざ」を深めることもできるのではないか』

そういえば、私は時々「一教」という関節技の稽古の最中、きちんと相手を極められず、技に失敗することがあります。
「ちゃんと、ツボに極まってないからだよ」と師範はおっしゃるのですが……???

『佐々木合気道研究所』サイトによると、関節技の「小手返し」では、自分の親指を相手の「中渚(小指と薬指の間の付け根、立ちくらみのツボ)」を当てる。

「二教」は、相手の「合谷(親指の付け根、痛み止めのツボ)」に、自分の親指を当てると効果的。

「四教」は、自分の「虎口(親指の骨の付け根の硬い部分)」を、「偏歴(手首から10分の3の位置、痛み止めのツボ)」、「温溜(腕の裏、手首から肘の間 消化不良のツボ)」、内関(手首内側より2寸下、胃のむかつきのツボ)、間使(手首の内側、中央から3寸下、便秘のツボ)」などに強く押しつけると、相手は手がしびれ、力が出なくなる。

……うーむ。不思議だ。

『一教ははじめにやる形だが、最も難しい形でもある。所謂、極意の形と言えるだろう。難しい理由のひとつは、押さえるべきツボが他の形より多く、そのツボを正確に押さえないと技が効かないところにある』

……恐れ入りました。勉強しなおしてまいります。

『活殺自在』……武道の「人を壊す技術」と表裏一体の「人を癒す技術」。
もっと知りたいですね。
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