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2009年08月11日

呼吸力の不思議(前編) 呼吸と呼吸力?

合気道の世界で、頻繁に耳にする言葉……『呼吸力』。

 

「なかなかの呼吸力ですね」

稽古中に、私に体勢を崩された男性有段者は言いました。

「……あの、私の呼吸量は健常者の7割しかありませんが」
「呼吸力は、肺活量とは違いますよ。体全体から出す力です」

ますますわからない。
外見は健康そうに見えますが、喘息をはじめ、生まれつきの多数の持病を抱え、50を超えるドクターストップがかかっている私の体。
どう考えても「力がある」とは思えない。

私の疑念が表情に出たらしく、若い有段者は苦笑しました。

「……まあ、そのうちわかりますよ」

「そのうち」……困ったなあ。いつのことなんだろう。

幸い、武道雑誌『合気道探求38号』で、合気会本部師範の多田宏先生(9段)と、合気会本部道場指導部師範の遠藤征四郎先生(8段)が、「合気道の呼吸」について、わかりやすく解説されています。

多田師範の解説によると「呼吸」は2種類あります。
生命維持のための生物的な「呼吸」と、訓練を重ねて身につけた技術を、最良の状態で発揮できる瞬間をさす「呼吸」。

「呼吸力」は「技術を最大限に発揮できる瞬間を引き出す能力」……ということになるのでしょうか。

『対象に囚われない心身で、技を自在に発揮できる力』

……多田師範は、合気道の呼吸力を、そう定義されています。

……私、ちゃんと「呼吸力」を使ってるかなあ。
心配になってきました。

呼吸力の最初の段階が「相手を崩す」。

昔から「読み取る」能力は異常に高いので、まだ完璧じゃないけれども「つかまれた部分から、相手のバランスが崩れる位置を読み取り、そこへ移動して相手を崩す」コツをつかむのは早かったようですが。

「相手崩すコツは、基本的に大東流でも合気道でも同じや。丹田を中心に、手や足だけを動かすことを意識せんと、自分の体が粘土の塊になったつもりで、体ごと一塊になって動くことや。そやけど、それは初歩の初歩やな」

空手四段剣道三段少林寺拳法三段大東流合気柔術二段柔道初段の夫のアドバイス。

遠藤師範は『呼吸には、私たちの気持ちと体がおおいに関わってきます。すなわち、人間の精神や行動を規定する側面があると言えます』とおっしゃいます。

人は動揺している時に浅く早い呼吸、落ち着いている時には深いゆっくりとした呼吸をしているので、意識的に呼吸を整えて体と心の動きを安定させる。
その技術が「呼吸法」と呼ばれるもの。

そして安定した体と心で、相手の動きや心に合わせ、呼吸力を発揮できる状態を作る……うーん。難しいなあ。

『合気道の呼吸力を高めるためには、自分の「命の力」を高める必要があります』

……多田師範の言葉には落ち込みました。
……私の「命の力」はゼロに近いので。

2歳の時に、「この子は二十歳までもつかどうか」と、医者にさじを投げられた私。
不惑を過ぎて、まだ生きているのは、私自身の生命力で生き抜いたのではなく、見えない力に導かれて生き永らえてきたような気がするのですが。

……でも、ひょっとしたら、丹田呼吸法の習得、間に合わないかもしれない……

凶兆は突如現われました。

家の中で掃除をしていて、突然、強烈なむかつきと胸の痛み、めまいを伴う激しい動悸に襲われた私は、思わずその場にうずくまりました。 

……発作性頻脈、再発……

14年前の喘息薬の副作用事故で、辛うじて命をとりとめた私の体に残った後遺症。

心臓の動きが突然早くなる不整脈の一種で、長年使い続けた喘息の発作止め薬「気管支拡張剤」の副作用。
気管支拡張剤を使わなくなってからも、6年ほど続きました。
これが起きると、強烈な胸苦しさと動悸で身動きがとれなくなってしまうのです。 

頻脈が治まりだした頃、「合気道には喘息を軽くする丹田呼吸法がある。やってみろ」という夫の勧めで合気道をはじめ……この4年ほどは起きていなかった発作。
なんで、今頃再発したんだろう。

せっかく、呼吸量も、最大値の7割のまま安定していて、丹田呼吸法習得の鍵をつかんだところなのに。
丹田呼吸法習得よりも、体に限界がくるのが早いのかも……。

体がぎくしゃくする程度の弱い頻脈も増え、不安な日々。

「頻脈が出る? そらあかんわ。お前、最近、夜中によく咳しとるからなあ……。ちょっとみたるから、そこへ、うつ伏せになれや」

夫にそう言われて、私はソファベッドにうつ伏せになりました。

夫は私の腰から肩にかけて、背骨に沿って順にツボを押していきます。
これは少林寺拳法の「整法」の技術。(『活殺自在』参照)

「また左肺の炎症、ひどなっとるなあ」

なにげなく夫が押した肩甲骨の下のツボ。
私は思わず悲鳴をあげました。

「ここは普通、押されたら気持ちいい場所や。それが痛いとなると……相当まずいな」

夫は肩甲骨周辺のツボを、力を弱めて、一つ一つ丁寧に押していきます。

「お前、最近、仕事増やしたりして、かなり無理しとるやろ。健康な人間やったら、多少の頻脈は、自律神経働いて体が勝手に調整しよるけど。喘息の人間は自律神経弱っとるから、まともにやられるわ。特に疲れて、あんまり眠っとらんかったら、なおさらや」

夫は私の肩から背中にかけて、背骨に沿って軽く掌で押しててくれました。

「肩から背中の筋肉ほぐしといた。筋肉が柔らかくなったら血行もようなるし、自律神経も、まともに働く。これで頻脈と喘息マシになるやろ。ちょっとは意識して体休めんと。そのうちえらいことになるで。とりあえず、首と肩と背中、冷やさんことや」

確かに、指圧が終わった後、背中から肩がぽかぽかして、その晩は熟睡できました。

しかし、どこまで稽古を続けていけるのか……不安が胸をよぎります。

合気道を続けて6年目に初段になりましたが……。
最近、やたらに「壁に突き当たる」のです。

私と高段者の間に、分厚い透明ガラス板があって、そのむこうに、高段者の姿が透けて見えるような感じ。
どうしたら、あんなふうに柔らかい技、切れのある動きができるのか……。

ガラスの表面は硬く、つるつるしていて、「とっかかりがない」状態。
どうしたら向こうへいけるのか。
何か一つでもヒントがほしい……切実に思うことが多いのです。

「稽古を続けとったら、そのうちわかるよ」と、年配の高段者はおっしゃるのですが。

喘息は加齢とともに進行する病気。
「そのうち」では、間に合わないかもしれない。

……次回に続く……
タグ:合気道 呼吸
posted by ゆか at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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