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2009年08月15日

呼吸力の不思議(後編) 合気一刀の呼吸

『命の力』……
 
この言葉を見た時、子供の時から私を悩ませてきた『健全なる精神は健全なる肉体に宿る』を思い出して、落ち込みました。

……外見は健常者と変わりないのに、内蔵や骨格の先天的な欠陥が多い私は、みんなと同じペースで進めない。
……やはり、無理なのか。

思いあまった私は、テレビを見ながらビールを飲んでいる夫に、声をかけました。

「……申し訳ない。……丹田呼吸法……間に合わないかもしれん」
「何あほなこと言うとんねん」

夫はビールをグラスに注ぎながら言いました。

「頻脈が再発したいうことは、限界がきてるのかもしれん」

夫はグラスをテーブルに置いて、私の方に向きなおりました。

「……逃げるな……」

私はぎょっとしました。
「合気道、やめた方がいいのかも」と、心の片隅で思いはじめていたのは、確かです。

夫は、まっすぐに私を見ました。

「ちょっと思い出してみ……お前が、喘息の薬で心臓がおかしくなった後、ずっと寝込んでばっかりやったやんか。しょっちゅう、夜中に咳しまくって、ジタバタしとったやんか。今は、寝込みもせんと、仕事もやってるし。合気道もやれとるわけやろが。夜中の咳かて、昔よりマシみたいやし……いうことは、今の方が元気なわけや」
「そうかもしれんけど……」

「調子に乗って、無理して疲れ出たんやろ。喘息の数値は?」
「前と変わらんのや。それなのに頻脈が出た」
「いうことは、体の警告かもしれんな。当分ペース下げて稽古せんと、しゃあないわ」
「そりゃ、そうやけど……」

「ははあ。さては、誰かに「最近、あまり稽古に来ませんね」とか言われたな」

夫は、突然意地の悪い口調で言いました。
……図星。

「まあ、お前、見かけだけは健康そうに見えるからな。相手も、深い意味で言うてるんとちゃうやろけど……。そんなことで、おたおたするな」

夫は、私を見据えました。

「呼吸法だけやったら、極端な話、別にヨガでもかまへんねん。俺は、合気道で、お前の人嫌いなとことか、その、ぐしゃぐしゃ悩むとことか、ちょっとぐらい直せんかと思うて、勧めてみたわけや。……もっと強うならんとあかんで」
「……はい」
「ほんまに、世話の焼けるやつやのう……」

夫は、再びテレビの方に見入ってしまいました。

「逃げるな」か。
……厳しいところを突かれましたが、夫に励まされて元気が出ました。

さて、呼吸力に話を戻します。

武道雑誌『月刊秘伝』2009年8月号の特集は、『合気上げ完全解体!』。
(合気上げの実演は『合気の謎』参照)

大東流合気柔術の基本技「合気上げ」は、合気道の「座技呼吸法」と似た技。

興味深いのは、この特集の中に合気会・合気道清心館道場の佐原文東師範が登場すること。
佐原師範は、合気道の呼吸力を使った技「座技呼吸法」を紹介されています。

分解写真を見ると……。

まず、佐原師範と受け(技をかけられる人)の若い男性が、正座して向かい合わせになります。
この時、師範は両手を膝に置かれています。

受けは師範の両手首をつかんで、力任せに押さえる。
師範は、両手首をつかまれた状態で、受けを押し上げるように両腕を上げます。

受けの男性は師範の手首をつかんだまま、体が浮き上がり、ついには爪先立ちになってしまう……。

これは大東流合気柔術の技「合気上げ」がかかった時と同じ体勢です。

佐原師範が、腕力で受けの男性を押し上げたわけではなく、丹田(下腹)を中心に、体全体の力を上に張り出すように使って、受けを押し上げた……この力が「呼吸力」。

佐原師範は、「呼吸法」を、4つのポイントに分けて説明されます。

1、自分の体を一つにすること。
2、力の流れの感覚をつかむ。
3、手の内(相手と接している部分)を通し、相手との一体化の感覚をつかむ。
4、力のぶつからないところ、および「透過する力」の二点を知る。

「座技呼吸法」の場合、まず、自分の体を「空気入りのボール」とイメージして、丹田を中心に、体全体で相手の力を受け止める。

手の内から、自分にかけられた力の方向を感じとる。
その部分の力を抜いて、相手と「力のぶつかり合い」が起きないようにする。(力同士がぶつかれば、力の強い方が勝つ。自分が負ける可能性も出てくるから)

そして、「空気入りのボール」がふくらんでいくイメージで、腕を上げていく。

……なるほど。こういう方法もあるのか。

『呼吸法は技術論ではなく、心と身体の使い方の理を体解するための方法論です。これは相手がいる事によってわかりやすくなる利があるんです』

……佐原師範は、そうおっしゃられています。
呼吸法や呼吸力は道場で稽古しないと、ダメなわけですね。

『合気道の呼吸力は、全く未知のことに対しても、生命力を発揮し対応してゆける無条件の呼吸力を養うことを目指しています。大先生(開祖)は、これを「合気一刀の呼吸」と言われていました』

……武道雑誌『合気道探求』38号の多田宏9段の言葉です。

まだまだ謎の多い「呼吸法」と「呼吸力」。
でも、少しだけヒントがもらえて、ほっとしました。

私は4つのポイントのうち、最初の「自分の体を一つにする」が、ちょっとできる程度。
でも、「全然できてない」わけじゃないので、安心しました。

かつて武道は限られた人……体力があり、器用で、師の動きを見て盗める動体視力の持ち主だけが、極めることができたのですが。

現在の武道界は、「武道の魅力を、すべての日本人に伝える」方向に進んでいて、中学校武道必修化も、その流れの一つ。
指導法も具体的にわかりやすくなってきています。

……私のような半病人でも武道ができる。
今は「いい時代」です。
この記事へのコメント
こんにちは。
私は、神戸で合気道を習っています。習いだして今年で四年目で今月の30日に
一級の審査を受ける
まだまだヒョッコの迫田と申します。
blog読みました。
もしかしたら力になれるかもしれないと思いメールしました。僕の知り合いや、友達にも凄いアレルギーやキツイ喘息の人がいます。みんな今以上良くならないと思っていて、これ以上悪くならないように気をつけるしかなかったんですが。
IPS生命科学研究所の商品を、使いだしてから凄く良くなってきたんです。うちの家は、IPS生命科学研究所の販売会社を、しています。本当に凄いものです。もしよければ、連絡下さい。090-1138-7118
Posted by 迫田亮太 at 2009年08月27日 20:20
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