少し昔、企画編集の勉強のために、ライターめいたことをしていた頃のこと。ある中学校へ、環境教育について取材に行ったことがあります。
その学校の修学旅行先が琵琶湖なので、事前学習もかねて、生徒たちに、インターネットで琵琶湖の環境問題を調べさせてレポートを書かせていました。
指導しているのは、PCに詳しい技術家庭科の教師。
「みんな、きれいに仕上げてますよ」
彼は得意そうに言いましたが、見せられた20枚近くのレポートのほとんどが、情報源がまったく同じで、細かな表現や字体、図表のレイアウトや色を変えてあるだけ。
その中で、私の目を引いたのは、琵琶湖の外来魚を描いた下手な絵と『ブラックバス、煮て食べるとまずい』『ブルーギル、煮ても臭くてまずい』などと、まずい食べ方を延々と書いてあるレポート。
この子は、外来魚を食べれば、生態系の問題を解決できると考えたらしい。
「変なレポートでしょう。どうも変わった子でしてねえ」
彼は不満そうに言いましたが、私が採点するなら『着眼点は面白いと思います。あとは外来魚のおいしい食べ方も書いてあるといいですね』とコメントをつけて75点。
他の生徒のレポートは『お前ら! 手抜きすんな!』と書いて一律30点。
これは、あくまで『調べ学習』ですから、「きちんと調べたか」を評価するべきで、レイアウトのよしあしで評価を決めてはいけないと思います。
「ところで、ネットの情報が正しいかどうか見極めるのが難しいと思いますが、そのへんは、生徒さんに、どのように指導されていますか?」
私の質問に、教師が言い放った答えは、今も忘れることができません。
「特に指導はしてません。それは自己責任でしょう。ネットはそれがルールです」
こりゃ、だめだ。
何も知らない中学生に「自己責任」を要求するのは無茶というもの。
率直に言って、インターネットを使って、子供にレポートを書かせるには、情報処理専門の先生が必要だと思います。
単にPC操作に詳しいだけの先生にさせれば、百害あって一利なしの結果になりかねません。
現時点で、それができるのは、レファレンスの教育を受けた学校司書か司書教諭でしょう。
「レファレンス」は一言で言えば「最少の労力で必要な情報を集める技術」。
図書館司書資格を取るために履修しなければいけない必須科目です。
図書館司書は、「本を書架に戻したり、返却期限を過ぎて本を返しに来た利用者をカウンターで叱る仕事」と思われがちなのですが、本来は「レファレンサー」と呼ばれる「利用者にとって必要な情報が載っている本を、すばやく的確に見つける」専門職なのです。
私は図書館司書になりたくて、図書館司書課程のある国文科に進学したのに、道を誤って、レファレンス技術を応用して本を書く人になってしまいましたが、レファレンスは、自分にとって必要な情報をすばやく見つけるために、将来は、どの職業の人にも必要になる技術です。
全国学校図書館協議会によると、学校司書の配置率は小学校39.7%、中学校44.1%。
司書教諭は部活や担任と図書館の管理を掛け持ちしていることが多く忙しい。
レファレンス学習への道は険しそうです。
しかし、読売オンラインの『教育ルネッサンス』2005年11月3日号によると、静岡市立東豊田小学校では、司書教諭と児童文学評論家が協力し、生徒たちに3つのテーマを選ばせて、総合学習の30時間、1年かけて調査。
最後に、それぞれが選んだテーマと調べた方法、参考文献などを全員の前で発表する「レファレンス学習」が行われました。
この動きが、なんとか全国の学校に広がってほしいものです。
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2006年02月04日
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今年から情報処理は小学校で必須科目になってくるから必要だと思うけどね〜