『合同演武会は当然出るんやろね?』
……柔道整復師の若者からメールがきました。
合同演武会……市の武道館に道場と各支部道場の人が集結。
各道場の日頃の稽古の成果を「演武」として発表するもの。
5年後の創立50周年記念演武大会に向けて、道場同士の交流を深め、お互いに技の上達をめざす……今年、初めての行われる行事です。
持病の発作性頻脈(心臓の鼓動が突然早くなる不整脈の一種)が、いくらかマシになったので、私は先日、久しぶりに、基本技ばかりを稽古する「初心者クラス」に出かけましたが……。
3つほど技をこなすだけで、息があがってしまい、後は見学。
……相当なまってるなあ。本当に情けない。
でも、ちょっとずつでも、稽古時間を延ばしていかないと。
そう思った矢先に、今度は義母の入院。
幸い、心臓のカテーテル手術も成功しましたが……。
なんと退院の日が、合同演武会当日と重なってしまう。
……うーん。無理か。
道場と支部道場の人が集まるのは、創立40周年記念演武大会以来、5年ぶりのこと。
この5年の間に、道場には女性専用の「婦人部」、大阪市内には新しい支部道場もできています。
特に、新しく入ってきた人たちが、どんな演武をするのか、とても楽しみで。
せっかく年休も取ったのに……残念。
ところが、義母の回復が意外に早く、退院日は合同演武会前日に。
……うーん。どうしようか。
とりあえず、会場に行くとしても、見学するのか、演武に参加した方がいいのか。
出てみたい気持ちは半分あるのですが。
体力的に自信がない。
各道場では合同演武会に向けて、その日にペアを組む(演武は二人一組)相手も決めて、技の稽古をしているらしいし。
病み上がりで、しかも、前日まで稽古ができなかった私が、突然、飛び入りで参加するのも、なんだかおこがましい気がする。
ここは、武道13段の夫に相談してみましょう。
「あのなあ。明日、道場の合同演武会があるねんけど。隅っこの方で見学した方がいい?」
「また、わけのわからんこと言うとるな。出りゃええやんか」
ソファベッドに寝転んだ夫は、テレビから目を離さずに言いました。
「このところ、調子悪くて全然稽古してなかったし。みんな、技決めて、予行練習してるのに、そこへ私が飛び入り参加なんかしたら、迷惑やろし……」
「あほ。お前、曲がりなりにも初段やろが。技なんか、その場でなんとかせいや。それでこそ、黒帯言うもんやろ」
「……なんか、ペアも決めて稽古してるらしいし」
「そんなん、当日急に、誰かあぶれとるかもしれんし。今から決めつけてどないすんねん。とりあえず、道着袴持って武道館行って、「出ろ」言われたら出たらええし、「あかん」言われたら、見学しとったらええねん。……そやけど、無茶はすなよ」
夫に叱られた私は、翌日、道着袴一式を持って武道館へ。
出かけてみると、たくさんの門下生が集まっています。
半分以上は、見たことのある方ですが、残りの人……特に女性は、見知らぬ方が多いです。
「ごぶさた」
後ろから声をかけてきたのは、顔見知りの「婦人部」の女性。
子育てなどのブランクがあるため、私と同じ初段ですが。
キャリアは私よりも、はるかに長い方。
「仕事や家庭を抱える女性が、マイペースで稽古を楽しむために」と、道場に女性専用の「婦人部」ができたのをきっかけに、合気道の稽古を再開。
子供が手を離れた今は、子供服専門店を経営するかたわら、稽古に励んでおられます。
「ご主人の調子(去年末に入院)、その後どう?」
「主人は元気なんですが。義母が狭心症で倒れまして。カテーテル手術が成功して、昨日退院したところです」
「狭心症なら、まだマシよ。心筋梗塞までいかなくて、よかったわね」
彼女は微笑みました。
私は「一般部」。
稽古曜日や時間が違う「婦人部」の人たちと出会うのは、他道場との交流稽古や新年会などのイベントの時だけなのです。
「今日は婦人部の、初めての晴れ舞台だからね。みんな気合入ってるのよ」
彼女の視線の先は、武道館の競技用畳へ。
10人ほどの袴や白帯の女性が集まっています。
婦人部のリーダー、道場長の娘さんを中心に、円陣を組んでミーティング中。
「うちは、がんばるわよ。……今日の、あなたの演武、楽しみだわ」
「……すみません。昨日まで介護でバタバタしていて、全然稽古をしていないので、見学しようと……」と私が言いかけると、彼女は厳しい顔をしました。
「道着は持ってきてるでしょう?」
「はい」
「女は、家族のことで稽古に出られない時もあるけど。出られる時は積極的に出ないと。前半は合同稽古だから、飛び入りとか、関係ないわよ。私たち婦人部は、演武会の技が決まってるけど。もし、一般部の技が決まってるなら、それだけ見学すればいいのよ。せっかく参加費払ってるのに、もったいない。ほらほら。さっさと、着替えてらっしゃい!」
私は、あわてて更衣室へ。
更衣室は、見知らぬ若い女性で満員。
「今日はがんばりましょう」「「練習どおりにやれるかしら?」「緊張しますね」と口々に言い合っています。
大阪市内に新しくできた支部道場は、女性が多いと聞いていましたが……。
楽しみになってきました。
着替えて演武会場へ。大勢の道着姿の門下生が集まり、演武会の技の打ち合わせや、準備体操をしています。
「ああ、いいところにいたわ」と、声をかけてきたのは一般部、3段の女性有段者。
「一般部の、女子有段者の演武に出てもらいますからね」
「えっ!」
演武会に出るはずだった有段者の女性が数人、身内の不幸などの急な用事で出られなくなり、一般部の女性有段者が足りなくなったとのこと。
「演目は自由技3種だから簡単でしょう。助っ人で、婦人部の○○さんが、あなたの相方で出てくれるそうだから。よろしく」
……そう言って、女性有段者は去っていきました。
幸い、○○さんは顔見知り。婦人部の初段の方。
技の相談をしてみます。
「まあ、簡単に、基本技、正面打ち入り身投げ、横面打ち四方投げ、正面突き小手返しで、いいんじゃない。じゃあ、あなた、取り(技をかける側)やってね。任せたわ」
彼女は、軽く言うと、婦人部の打ち合わせに行ってしまいました。
どうしよう……
……次回に続く……
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2009年09月08日
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