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2009年09月12日

合同演武会(後編) 新しい流れ

競技用畳が敷きつめられた武道館の演武会場に、200人ほどの参加者が集まり、合同演武会がはじまりました。

 

観覧席には、少年部の父兄や、参加者を応援する友人知人が集まり、最前列にはカメラやビデオの三脚が所狭しと並びます。

合同演武会……プログラムによると、正式名称『合同稽古・演武会』は、道場長の開会の挨拶からはじまり、前半1時間が合同稽古、少年部の稽古と演武。
10分の休憩をはさんで、各道場の演武、道場長の閉会の挨拶で終わります。

準備体操を終わって、まずは合同稽古。

「めったにない機会ですから、なるべく他の道場の人と組むように」と、最初に道場長の注意があり、みんな、見知らぬ相手と当たるように心がけて、なごやかに稽古が進みます。

ところが、4つめの技がはじまる直前に、息苦しくなり、左胸に痛みが走りました。

……まずいな。これでは演武までもたない……

仕方なく稽古から抜けて観覧席へ。
喘息薬を追加。

喘息薬の副作用事故の後、私が使えるのは弱い発作止め4種。
それぞれ成分が違い、効く時間も違う薬を微妙に分量調整して、1時間半後の「一般部有段者女子演武」の時に、一番薬が効いた「動ける状態」にしておかないと。
一緒に演武する相手にも迷惑がかかる。

婦人部の高齢の女性と少年部の子供、支部道場の若い女性と道場の外国人有段者。
それぞれが、楽しそうに稽古しているのを見ていると、動かない自分の体がうらめしい。

前半の合同稽古が終わり、観覧席でお茶を飲んでいると、紺袴(上級者)の女性が近づいてきました。
合気道歴4年。
一般部・初心者クラスで一緒に稽古している人です。

「大丈夫ですか?」
「まあ、なんとかね。薬を追加したから、演武会は、やれると思う」

私が答えると、彼女は意地悪く笑いました。

「かなり最初の方から見学してはりましたね。こちらから丸見えでしたよ」
「そんなの観察するんじゃないよ。……ああ、はずかしい」
「観覧席に、一人だけ道着姿だから目立つんですよ。でも、出られてよかったですね」

彼女は笑って、競技用畳に視線を移しました。

演武場に子供たちが20人、大人の男性有段者と一緒に登場。
10人ずつ2列に整列。

「私、少年部と婦人部の演武見るの、初めてなんで、楽しみです」

まず、一人の小学生が進み出ます。
手本の前回り受身を2度見せた後、手を打って合図。
他の子供たちが一斉に前回り受身。
それが終わると、子供たちは、向きを反対に変えます。
別の小学生が進み出て、後ろ回り受身の手本……

一糸乱れぬ演武が続きます。

基本の動作が終わると、大人の有段者たちがサポートする中、子供たちは「後ろ両手取り呼吸投げ」「片手取り四方投げ」などの投げ技を披露。
小さな子供が上手に受身をとって、畳の上を、ころころと転がるさまは、かわいい。

「……レベル高いですね。私たちよりうまいかも……」

彼女は、しきりに感心しています。
確かに、私が演武を見た5年前よりレベルが高い。

少年部の演武が終わると、休憩をはさんで、各道場の指導員代表者演武。
ざわついていた観覧席も、指導員の演武がはじまると、その迫力に圧倒され、静かになりました。

ひきしまった雰囲気の中で、各道場の演武が続きます。

少人数ながら、息の合った多人数掛け(一人の取り(技をかける側)に対して、複数の受け(技をかけられる側)が続けざまにかかっていくもの)を見せる道場。
杖(棒状の武器)を使った演武をする道場。
投げ技を主体にした道場。

……それぞれの道場が、特徴を打ち出しています。

更衣室にいた若い白帯女性たちの、緊張しながらも懸命に演武する姿には、感動しました。

各支部道場の演武に続いて、道場演武。
まずは婦人部の14人。

正面、道場長の方へ向いての、「体の転換(一歩前に出て体を反転させる基本の動作)」の型。
きれいに揃った動き。
あでやかに翻る袴。
相当な練習を積んでいます。

続いて、正面に向かって、横一列に並んで正座した後、二人ずつ一組で立ち上がり、前に出て、違う技を披露していきます。
その立ち居振る舞いの美しいこと。

「……婦人部って、すごいですねえ」

一緒に見ている彼女は、溜息をつくばかり。

婦人部のみなさんは、家族のことで稽古に出られないことがある分、一回の稽古を大事にしているようです。
みんな、今日のために、一生懸命練習してきているのに。
稽古してない私が、いきなり飛び入り参加して、なんだか申し訳ない。

それにしても、この5年のうちに、婦人部、少年部、支部道場の若い女性たちなど、道場を支える、新しい人々が増えているのは頼もしいなあ。

そんなことを考えていると……。

「演武は次よ」と、3段の女性有段者に声をかけられました。

あわてて会場に向かう私たち。
彼女は最初の「道場一般部女子」。
私は、その次の「道場一般部有段者女子」の演武に出ます。

演武会場の入り口で待機していると、婦人部の演武を終えた初段の女性がきました。

「久しぶりの演武、楽しいわ。……次の演武は基本技だし、リラックスして、やりましょうね」と気楽に言われますが。
私は、まともに自分の体が動くかどうか、心配で。

紺袴の女性の緊張感あふれる演武が終わり、私の番です。

会場に入場後、2列に整列後。正座。正面に礼、お互いに礼。
合図の太鼓が鳴って、演武がはじまりました。

「技は自由技3種、左右1回ずつ、技が終われば受けと取りは交代。自分の技を終われば、最後の人が終わるまで正座して待つ。太鼓の合図で演武終了。お互いに礼、正面に礼、その後、静かに退場」

……一通りの説明を聞いただけですが。
なんとかやらなけれれば。

私は取り、最初に技をかける方……。
正面打ち入り身投げ、横面打ち四方投げ、正面突き小手返し……3つの技を、とにかく夢中でやるしかありません。

受けの初段女性が、うまく私の動きに合わせてくれたので、なんとか無事に演武できました。

息苦しさをこらえながら、観覧席に戻ると、紺袴の女性が待っていました。
「大丈夫です。きれいにできてましたよ」……と言ってくれましたが。

もうちょっと、観覧席のビデオやデジカメを意識して、「きれいに技が見える動き」を考えて演武すれば、よかったかもしれない。

演武会場では演武が続いています。

「一般部男子有段者」の豪快な投げ技。
「一般部高段者演武」の鋭い切れのある技。
「道場長代行演武」の重厚な演武。

最後に「道場長演武」の水の流れのような流麗な技が披露され、初めての合同演武会は盛況のうちに終了。
来年は、もっとハイレベルな演武会になるでしょう。

……無茶な飛び入り参加でしたが、本当に出られてよかった。
posted by ゆか at 10:42| Comment(1) | TrackBack(0) | 武道系コラム・演武会 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
どうなるかとハラハラしながら後編を待っていました。

無事?演武が出来て良かったですね。

読み終わって、こちらも肩の力が抜けました。

お疲れ様でした。
Posted by MOLTA at 2009年09月14日 01:45
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