『“編集脳”でコピーは書くべからず! 正しいコピー(広告文)の作り方講座』
「コラムニストが、なんでコピーやねん?」と思われた方もおられるでしょうが。
コピーライティングは、作品のタイトルづけや、企画書作成の延長の技術。
武道系コラム、文具系コラム書籍化の企画書が難航しているのは、私に、この技術がないせいです。
実際、「文を書く才能」と「ネーミングの才能」は、全くの別物。
かつて私の作品『雨…アレルギーが治らない時』が、新風舎出版賞最優秀賞を獲った時の講評。
「タイトルのネーミングセンスは悪いが、内容がすばらしいので受賞させました」……。
これを読んだ時、受賞のうれしさが半減しましたね。
結局、この作品は『アレルギーと生きる』と改題され、当時話題になり、日本アレルギー学会の「喘息予防治療ガイドライン」改定に大きな影響を与え、出版して8年後の2008年、NHK「生活ほっとモーニング」で紹介されて、再び話題になりました。
本の中身を書く側としては「タイトルだけで判断されちゃかなわん」なんですが。
でも、本の売れ行きは「タイトル勝負」になっているのも現実。
ちゃんと勉強しなければ。
話は元に戻って……
「文化庁認定関西元気文化圏プロジェクト参加事業」という、この大層な講座の紹介文も興味深い。
『この出版不況、雑誌や書籍の収入だけでは成り立たないと企業のチラシやパンフレットのコピー作成をしている“編集ライター”も多いはず。でも、ちょっと待った!!編集記事の延長でコピーを書いていませんか!?今回は「雑誌・書籍の文筆には自信があるけど、コピーライティングは今一よくわかっていない」という方に向けて、昨年、日経BP広告賞を受賞した矢部弥生氏に、コピーライティングの基礎を伝授していただきます』
……ふうん。関西のライターは生活が厳しいらしいですね。
私はこれまで関わった出版社は全部東京でしたし、現在の「知恵蔵」の仕事も東京だし。
でも「「雑誌・書籍の文筆には自信があるけど、コピーライティングは今一よくわかっていないという方」というのは、私のことだな。
迷わず受講申込手続きをしました。
当日は地下鉄で大阪市内へ。
会場にやってきた人たちは、見るからに「ライター」の雰囲気。
受付の女性と顔見知りらしく、談笑しながら名刺交換して、次々に会場に入っていきます。
受付の前に立っている私は放置されていました。
どうやら「あれはライターじゃないから関係ない」と思われたらしい。
悔しくなったので、談笑している受付の女性に、「すみません。受講手続きを」と声をかけ、強引に手続きして会場へ。
円形に机と椅子が並べられた会議室。
ホワイトボードを背にした若い女性。
この方が今日の講師。
参加者20人のうち、見るからに「ライターまたはコピーライター」が16人。
「関西出版業界祭り」で見た人が何人かいる。
この世界は意外と狭いらしい。
あとは一般の人。
自社製品をPRするコピーを書く会社員だそうです。
この勉強会は、新聞が取材するので、カメラマンが写真を撮っていますが。
こちらはそれどころじゃない。
なんとしても「コピー・企画のコツ」をつかまなければ。
やたらにトラブルに見舞われる人生を送っているので、私にとっては「アイデアや企画=解決策、役に立つもの。最良のものが一つあればベスト」なんです。
だから「くだらないことでもいいから、2時間で企画のアイデアを30出してくれ」と言われたら、ものすごく困る。
採用されるのは30のうち1つなら、あとの29の企画は「労力のムダ」になってしまう。
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」よりは「一撃必殺」でいきたいところ。
ちなみに、「没になった企画をたくさん書きとめておいて、後で見かえしたら、いいアイデアのネタになりますよ」と、支援者の方が教えてくださったので、「ボツ企画は労力のムダ」という考えは、最近改めました。
講義は、まず「記事とコピーの違い」「コピーの構造」「コピーと写真の関係」と進み、そこで、いきなり実技問題。
タケダ製薬の『ストレージ』という、ストレスが原因の胃腸病の薬の商品説明を見て、キャッチコピーを考える。
5分間でいくつできるか。
私は、講師の説明を聞きながら、ホッチキスでまとめてあった資料を、見やすいようにバラバラにし、左に問題、右に解答用紙をセット。
「どんな単純な思いつきでもいいですから。とにかくたくさん書いてください。はじめ!」
主催者の合図で、参加者は一斉にペンを取り、問題に取り組みます。
ペンの走る音と、資料をバサバサめくる音だけ。
まるで期末テストのような緊張感。
「単純な思いつき」というのが、すごく難しい。
普段「役に立つことを」と心がけて文章を書いていますから。
どうしても「役に立つこと」を書いてしまいそう。
「単純な思いつき」を書こうと努力したんですが……。
途中で、「やっとれんわ。役に立つことでもええやんけ」と、やけになって、そのままコピーを書き続けて時間終了。
その次の課題。
「自分以外の誰かの目線で、同じ商品のコピーをいくつ書けるか」。
制限時間5分。
誰かの目線? 最初に浮かんだのが、大胆不敵な母の顔。
仕事の鬼の妹、大学生の甥……。
「主婦だったら、会社員だったら、OLだったらと、色々なケースを考えてください」と講師に声をかけられ、私は動揺。
しまった!
普通の主婦の感覚がわからん。
普通のサラリーマン?
普通のOL?
……うろたえながらもコピーを書き続け、時間終了。
この後、「広告の仕事の流れ」や「今後の広告業界の動向」などの解説。
そして質疑応答の時間。
私は真っ先に手を挙げました。
「今の課題はいくつコピーを書ければ合格ですか?」
「これはまた、ダイレクトな質問ですね」と主催者は笑いました。
「あなたはいくつできましたか?」
「すみません。初めての経験で8問しかできませんでした」
「8問も!」絶句する参加者たち。
「8問は、初めてにしては上出来です。プロのコピーライターは20問です。それは慣れの問題だから、各自で工夫してください」と講師。
今のように、短時間にコピーを数多く書くとしたら……
「主語+述語」「名詞+形容動詞または形容詞」「擬態語+名詞」などの単純な組み合わせで20字以内。
句読点は2つ以内。
最近の名作コピーの品詞解析が必要。
「他者の視点」は主婦、サラリーマン、OLを年代や収入別に5つ程度ずつモデルタイプを用意。
その行動パターンを一覧表にしておく。
……あっ!なんだかわからんけど、また問題を解決してしまったぞ。
その後、「自分の嫌いな商品のコピーを作る心得」「記事とキャッチフレーズのどちらを先に作るか」「東京の広告事情」など、色々な質疑応答があった後、1時間強の講義は終了。
「では、これからフリータイムです。皆さん、ご自由に交流なさってください」と主催者の挨拶が終わると、参加者は、急にいきいきと談笑したり名刺交換したり。
なるほど。
普通は、こっちが目的なんだな。
私は挨拶してきた主催者と、講師とだけ名刺交換。
他の人は、私に見向きもしませんでしたし。
名刺交換も、相手が名刺を出してきた時だけ、こちらも名刺を出す「一撃必殺」が私のポリシー。
参加費は部屋代を折半して500円。
なかなか面白かったので、機会があれば、また参加したいですね。
ラベル:コピーライター