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2009年10月13日

出稽古(後編) 米糠三合の合気

先日の稽古会に出た時に配られていたプリント。
それによると、開祖の直弟子の方が開いた大阪の道場で、初めて外部向けのセミナーが行われるらしい。

前に所属道場に交流稽古に来られた先生の主催ですが。
私が興味を持ったのは、プリントの中の開祖の言葉、『米糠三合を持てる力があれば、相手を制することが出来る』
……ほんまかいや?

電話で参加の申し込み。
先生に、「僕の演武は見たことありますか?」と尋ねられました。

「道主研鑽会で、何度か、先生の演武を拝見しています。交流稽古でもご一緒しました」
「そうですか。関西の演武会かな?」
「そうです。……それから、申し訳ありませんが、私は喘息持ちでして。しんどくなったら、見学させてもらうことになると思います」
「喘息か。僕も昔大病して、死にかけたことがあるからね。不安な気持ちはわかる。見ることも大事な稽古だよ。気楽にいらっしゃい」

ありがたい言葉ですね。

当日は、電車を何度も乗り継いで南大阪へ。
京都や奈良より遠い感じがします。

最初に受付で受講料2000円を払います。
参加者は15人。
ほとんどが有段者。

ここの道場長、高齢の先生は、私の顔を見るなり言いました。

「おお、君は、道主先生の研鑽会で、水配ってた人じゃないかね?」

……うーむ。そんな覚え方をされているとは。

毎年秋、関西一円の道場の門下生が集まり、道主先生をお招きしての研鑽会が開かれます。
私の所属道場は開催地の地元なので、会場設営と先生方の接待が役目。
稽古の合間に、各道場の先生方に、冷たい水の入ったコップを差し上げるのが、私の仕事。

さて、セミナーに入ります。
まず、合掌して心を鎮め、礼。

準備体操は、神道のお祓いのような動作が組み込まれた、開祖直伝とされる「合気体操」。
「足の甲と裏を手で叩くと肺に効く」「手で肋骨の右側をさすると肝臓、左側は胃に効く」など、それぞれの動きが健康にいいもので、「合気体操」だけを習いに来る人もいるそうで。

体操が終わると、一人一人にプリントが渡されます。
『第一回セミナーの要点』で、このプログラムにそって、今回は基本の「運足」……足さばきの稽古が中心。

40畳の道場の端から端まで、「継ぎ足」「歩み足」「転回足」「転回足応用」「前転換足」「後転換足」

……ひたすら「前に進む」稽古。
所属道場では「継ぎ足」「歩み足」の稽古はまれにありますが。
技ではなく、徹底的に足さばきの稽古ばかりするのは初めて。

合気道は「円運動(体の中心を軸に回る動き)」が基本ですから、「前に進む」といっても、普通に「道を歩く」のとは全然違います。
いつもは、あまり使わない太股の外側の筋肉や、膝の裏側の筋肉が、だんだん痛くなってきました。

そこで休憩10分。
なぜか全員に「これを飲んで力をつけてください」とリポビタンDが1本ずつ配られます。
この道場の作法なのかな。

それにしても、今回は、前に進むばかりの稽古だから、喘息が出ないので助かる。

休憩が終わると再び足さばきの稽古。
「回転足」「回転足応用」「千鳥足」

……回転足は、左足を軸に時計回りに回るのですが。

「君は、足が長く腰高で、重心が安定しないね」と、先生のつききりの指導。

足が長く腰高なのは、私がアイルランド系4世で西欧人体型だから、しょうがないんですが。
意識して腰の重心を落としているつもりでしたが、まだ不安定なようです。

時計回りに回ること20回。

「うむ。できるようになったね。よしよし」

確かに安定して回れるようになりましたが。
目も回って、くらくらする。

千鳥足は、自分の足長の半分ぐらい、10センチ強の歩幅で、ちょこちょこと進むもの。
相手が間合いを取りにくくする効果があるそうです。

「うーむ。君は歩幅が大きくて、いかんねえ」と、また、つききりの指導。

道場の端から端を、何度か往復するうちに、なんとかできるようになりましたが。
不慣れな動きで非常に疲れる。

でも、歩幅を色々な大きさに変えられると、相手は間合いを読めずに動きにくくなり、逆に自分は自由に動ける利点があるそうです。

そんな調子で、先生は時間をかけて、一人ずつ懇切丁寧に指導されます。
プログラムの中には運足の他の動作もありましたが、結局、本来1時間半のセミナーを2時間強に延長しても、全部やりきれませんでした。

「今回はここまで。続きは次回に」
……うわあ。次回もやるのか。

最後に、その足さばきを使った技を、いくつか先生に見せていただきました。
先生の動きは、ビデオで見た開祖・植芝盛平翁先生の動きに似ています。

「植芝翁先生は、「米糠三合持てる力があれば、相手を制することができる」とおっしゃいました。僕も、それができます」

順番に一人ずつ、技をかけてもらいますが、先生は、相手の突きや手刀を、ひょいひょいとかわし、いとも無造作に、相手を押さえ込んでしまう。
「僕は今、力で押さえてるかね?」と先生に聞かれて、相手は身動きできずに、じたばたしながら、「力じゃないです」と答えます。
本当かな?

私も、右手に「四教」という関節技をかけていただきましたが。
何もないところから、突然手首の急所だけを、ピンポイントでつかまれた感覚。
すさまじい痛みと痺れが突き抜けた次の瞬間、畳の上に押さえ込まれていました。

放していただいた後も、しばらく手首の真ん中に残っていた10円玉ぐらいの赤み。

……いったい、あれは何だったんだろう?

稽古が終わると掃除。
その後、冷たい緑茶と煎餅がふるまわれます。
先生を囲んで全員が車座になって自己紹介。

私と同門の参加者が一人、兵庫や千葉など、各地から来た有段者、この道場の有段者たちと白帯の高校生。
今日の稽古の感想や、自分の合気道に対する思いなどを語り合い、楽しいひとときを過ごしました。

セミナーのしめくくりに、先生は、こう言われました。

「みなさん、今日覚えた運足を、ちゃんと稽古してくださいね。上達の度合いが違ってきますよ。でも、これは植芝盛平翁先生もおっしゃったことですが、「指導者は僅かに、一端を教えるだけです。修行者は、常に研究と努力が必要です」と。僕もそう思います」

次回のセミナーは、今のところ開催未定。
もし次回も参加できたら、もっと面白いことになりそうな気がしますが。

……ということで、今月は、タイプの違う二つの他道場で、稽古してみましたが。
確かに「合気道の別の側面」を見て、勉強になりました。
学んできたことを、いつもの稽古で生かせるようにしたいものですね。
ラベル:合気道
posted by ゆか at 14:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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