NHKでドラマ化される司馬遼太郎のベストセラー。
日露戦争を舞台にした長編小説だ。
私は子供の頃、戦争の話を祖母からよく聞かされた。
「太平洋戦争では負けたけど、日露戦争では勝ったやん」と言ったことがある。
祖母は苦々しげに答えた。
「日露戦争に勝ってしもたから、アメリカと戦争するはめになったんや」
実は、私たちの世代は、歴史の授業で明治以降の近代史を、きちんと習っていない。
いつも3学期も終わりごろ、年号を覚える程度で終わる。
祖母に詳しく聞こうとしたが、日露戦争が明治37年。
祖母は明治45年、ニューヨーク生まれ。
「あの戦争の後、日本はおかしなったって、お父っさん(曽祖父)は言うとった」とだけ聞いている。
教科書によると「ロシアのバルチック艦隊に大勝」したのに、「ポーツマスで賠償金がとれない屈辱的な条約を結ぶ」とある。
「日露戦争」とはなんだろう?
この本の主人公は、日露戦争中、満州で騎兵を率いてロシアのコサック騎兵と戦った日本陸軍の秋山好古。
その弟で、東郷平八郎の参謀となり、バルチック艦隊を破った日本海軍の秋山真之。
真之の親友で、日本の近代俳句・短歌の礎を築いた正岡子規。
物語の前半は、松山出身の3人の若者の青春物語だが、子規が35歳で亡くなる部分から後半は、大量の史実に基づいた「小説日露戦争」になる。
結局、「不凍港を得るために南下する大国ロシアと、やむなく戦い、緒戦で勝ったところで、イギリスやアメリカなどの力を借りて、辛うじて引き分けにした」のが「日露戦争」ということらしい。
しかし、当時の報道機関は、それを正確に国民に伝えなかったため、日本は孤立の道を進み、やがて太平洋戦争に突入……。
現在の日本と、どこか重なるような気がして不安になった。
『坂の上の雲』 司馬遼太郎 著 文春文庫
ラベル:坂の上の雲
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