先日、大阪南部の道場へ出稽古に行った時、「足さばき」の稽古だけを2時間しましたが。
それでも全部の型がやりきれなかった奥の深いもの。
ちゃんと覚えなきゃいけないなあ。
それにしても、道主先生の動き……畳の上をすべるような、無駄のない、しかも安定した動き。どうしたらいいのでしょう?
『佐々木合気道研究所』所長の佐々木貴7段によると、重心の移動に必要なのは、まず、股関節の柔軟性。
股関節を柔らかくする稽古は「相撲の四股、すり足、股割り」。
重心が上下せず、足の運びをスムーズにするには、足が着地したときと地を離れる時の足の甲と脛の角度をできるだけ小さくすること。
つまり、膝を曲げて飛んだり跳ねたりではなく、膝を柔らかく使い「歩くような」足さばきをすること。
……うーむ。難しいなあ。普段の稽古で、全然「重心」や「運足」を意識してなかったなあ。
上達への道は険しいなあ。
ちなみに佐々木7段は、「重心を意識できる技・重心の移動がスムーズでないとできない技」として「胸取り二教」「後両手取り」「呼吸投げ」を挙げられています。
なるほど。この技を稽古する時、特に自分の足さばきや重心を意識すればいいんだ。
ところで、先日、出稽古させていただいている他道場で、興味深い稽古をしました。
「片手取り四方投げ」という技を、素手で技をかけた時と、木刀を持った状態でかけた時で、その違いを比較するもの。
この道場の先生は、時々出稽古で私の所属道場に勉強に来られています。
木刀を使った稽古は、普段私の所属道場では、やらないことをご存知で、私が来た時に、意識的に木刀を使った稽古を組み込んでくださっているのです。
「まず、素手でやってみましょうか。片手取り四方投げの表技で」
年配の白帯の人が私の左手首をつかみます。
私は左手首をつかまれたまま、相手の手首を右手でつかみ、一歩相手の前に出て、相手の体勢を崩し、そのまま腰を返して反転、相手を投げる……これは、いつもの通り。
「では、木剣持ってやってみましょうか」
ところが、木刀を持って同じ技をかけようとしても、なぜか相手はびくともしないし、木刀を振り上げることもできない。
「相手を意識せず、ただ「一歩進みながら剣を振り上げ、腰を返して反転し、剣を振り下ろす」だけ考えてください」
先生のアドバイスの通りに動くと、うまく相手を崩すことができました……でも、何か違和感があります。
「今の技、剣を持っていること以外に、何かが違う感じがしました」
「いいところに気がつきましたね。もう一度やってみましょう」
私は、年配の男性に受けを取ってもらって、今度は、自分の間合いに注意して、もう一度技をかけました。
これもうまくいきましたが。
「……わかりました。最初に相手の前に出る前、無意識に、一歩下がって、間合いを微調整して、剣を振り上げやすくしているようです。なんででしょうね?」
「さあ、なんででしょうか」
にこにこするだけの先生。
また宿題を出されてしまいました。
元々、瞬間的に相手の弱点を突ついたり、相手の攻撃が届かない位置に移動したりすることは、昔から得意なのですが。
でも、それは、私の無意識がやっていることで……私自身には、「なぜ、そう動いたのか」がわからない。
最近、私は、この「間合いと位置」が、妙に気になってしまい、時々、技をかけている最中に「しまったっ! まずい場所に立ってしまった!」と叫び、受け(技をかけられる側)の有段者に、大笑いされています。
中には「残念。位置取り悪いから、返し技かけたろと思たのに」と苦笑する年配の有段者も。
「位置取りが悪い」というのは、「相手に反撃されやすい場所に身を置く」ということで、これをやると「返し技」……教育的指導として、受けの人に反撃され、逆に投げられたり、関節を極められたりするのです。
でも、取り(技をかける側)になると、技をかけることに夢中になって、相手との間合いや位置は意識してないことが多いですし、ましてや、自分の足さばきは、全然考えていませんでした。
相手がいると、どうしても「技がかかるかかからないか」ばかりに気をとられてしまいがちですからね。
私が回答者をしている、合気道総合情報サイト『合氣道ねっと』掲示板でも、たまに「一人でできる稽古はありますか?」の質問が出ます。
合気道は、自分から攻撃する「型」のない武道ですから、二人一組で「相手に攻撃してもらって」稽古するのが基本。
稽古を続けているうちに、なんとなく「道場以外では稽古できず、一人では稽古できない」気分になってしまうんですね。
私は武道13段の夫から「家で足さばきの稽古だけはやっとけ」と言われているので、そういう思い込みはなかったのですが。
今のところ、自宅の台所で「体の転換(一歩斜め前に進み反転する、合気道の基本の足さばき)と杖(合気道の棒状の武器)の型稽古をしていますが、「継ぎ足」「送り足」「歩み足」などの稽古もした方がいいかもしれない。
「一人でやれる合気道の稽古方法」について、ちょっと考えてみる必要がありそうですね。
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