職場備えつけのハサミもあるけど。
標準の日本人女性より一回り手が大きく、標準の日本人男性よりは一回り手が小さい私には、使いにくい代物。
ハサミは筆記具とは違って、普通、仕事上で使う時間は一瞬だから、使いにくくても「このハサミ、切りにくいわあ」と、ぼやきつつ紙を切る人が、ほとんどでしょう。
でも、私の場合、ハサミを使う頻度が高い。
時間が短くても、使う頻度が高いと、自分の手に合わない、指が痛いハサミを使うのは苦痛です。
青い「マイ鋏」は、素性の知れない安物だけど、切りやすいので、今の職場に就職してから5年、毎日使っていました。
……ところが。
昨年末、「マイ鋏」で紙を切っている最中に、突然、手元で「バキッ」と不気味な音。
異様な手ごたえ。
……思わず手元を見て、ギョッとしました。
人差し指を入れたハンドルには、ハサミの刃が2本、ぶら下がってるけれど。
親指を入れたハンドルの先には、ハサミの刃がない。
ハサミのハンドル部分、プラスチックの柄の片方が、ポキリと折れてしまったのです。
ハサミって、こんな壊れ方するなんて知らなかったな……柄の折れたハサミを机の上に置いて、しばらく呆然としてましたが。
すぐに「感心してる場合じゃないや」と我に返りました。
一刻も早く、次のハサミを探さないと。仕事に差し支える。
とりあえず、ハサミの柄を接着剤でくっつけ、セロテープでグルグル巻きにして応急処置。
その日から、スーパー、文房具店、ホームセンター、近郊のショッピングモールと、あちらこちらの店を、ハサミを探してさまようはめになりました。
ハサミの場合、指を入れる輪の部分の形状やサイズ、刃の重心の偏りなど、実際に手に持ってみないと、自分の手に合うかわからないので、通販で買うことができないのです。
愛用の「マイ鋏」、18年前、結婚する時に実家から持ってきたもの。
刃に「STENLESS」の刻印はあるけど、メーカー名は不明。
……困ったなあ。メーカー名がわからんと、同じもん探すのは無理やで。
「ハサミ計画」の時の苦労が再び始まるとはなあ……。
実は一昨年、2年かけて「ハサミ計画」が完了しました。
これは「日常生活上質化計画」の一つ。
部屋の各所に、用途に合った、耐用年数10年を見込んだ上質なハサミを1丁ずつ配置。
切れない安物のハサミを全部処分する計画。
夫婦2人とも手が大きいことが災いして、全部の新しいハサミが揃うまでに2年近くかかりましたが。
……やっぱり、仕事のハサミを探すのも、並大抵のことではありません。
結局、新しいハサミが見つからないまま年が明けてしまい、それでも諦めずに探索を続けました。
そして、繁華街のLOFTで奇妙なハサミを発見。
ステンレスの刃に白いハンドル。
その内側が黒いゴムになってる。
しかも、そのところどころに穴が開いている……何、これ?
コクヨ「エアロフィット・ワイドハンドル」。
グリーン購入適合・ユニバーサルデザインのハサミ。
「自由に握れるワイドハンドル」「指へのやさしさを科学した空気弾力。」「フッ素を超えた!のりのつきにくい刃」とパッケージに書いてある。
コクヨは、「テピタ」「カスタネットはさみ」「バネ・ロック機能つきハサミ」など、ユニバーサルデザインのハサミの開発に力を入れています。
これまでのユニバーサルデザインのハサミは「誰にでも使いやすい・ただし島村由花をのぞく」だったので。
「エアロフィット」も、ちょっと心配。
ところが、ハサミのパッケージの裏に、『ハンドル内側のやわらかい部分は使用しているうちに指になじんで変形することがあります』との注意書き。
しめた。「指になじむ」ってことは、使っているうちに、ハサミが私の手に合ってくるということです。
値段は420円だし、失敗しても、それほど惜しい値段でもないな。
失敗したら、実家に進呈すればいいし。
さっそく買ってみました。
注意書きによると、紙・ビニール用のハサミですが、大きさの割に意外に軽く、切れ味がいい。
「手に合わないかも」と心配したハンドル部分も、ゴムのようなエラストマー樹脂がクッションになって、多少力を入れて厚紙を切っても、指が痛くならない。
……当たりだ。このハサミ。
『コクヨS&T株式会社』サイトによると、「エアロフィット」は、コクヨが2009年8月に発売した新商品。
ユニバーサルデザインのハサミを発売して10年、コクヨのノウハウを結集した4番目のユニバーサルデザインのハサミ。
ハンドルに業界初の「エアークッション構造」を採用。
ハンドルの内側に、柔らかでところどころに空洞を設けた樹脂層をつけて、指にかかる力を分散させる構造。
すごいな。特許出願中なんだ。
その樹脂と空洞が、指にかかる力に合わせてハンドル内側を変形させ、フィット感を高めて、指への負担を軽くする。
……なるほど。だから手が大きく指の長い私でも、楽に扱えるんだな。
オリジナル設計の「グルーレス刃」は、ハサミの刃が、わずかに「L字」状になっていて、ハサミを閉じた時、刃と刃の間が中空になります。
刃の接地面を最小限に抑え、粘着テープなどを切っても長期間、刃に粘着材がつきにくい。
しかも、刃そのものを鋭角に改良して、シャープな切れ味を実現。
刃のカシメ部分には樹脂リングつけて摩擦を減らし、開閉もスムーズに。
ネジをはずすと、ステンレス刃と柄のABS樹脂部分が簡単に分離して、分別廃棄しやすい。
……うーむ。こんな親切設計の高性能ハサミが、400円程度で売られているなんて、日本は、まだまだ豊かな国だなあ。
このハサミのおかげで、今は仕事がはかどっています。
ラベル:ハサミ