突然の大量鼻出血。
救急車が到着したが、今度は受け入れ先の病院が決まらない。
救急用ベッドが満床の病院ばかりで、ベッドが空いている病院も「当直医が外科と内科で鼻血は対応できない」と言う。
その間にも、夫が抱える洗面器には、ボタボタと血がしたたり落ちる。
血圧計の数値は230。
脈拍は120。
このままでは命が危ない。
救急隊員は、必死で市内の病院に電話をかけ続ける。
「奥さん! 市立病院が、病院の近くに住む、耳鼻科のインターンを呼び出せるそうです。止血はできますが、手術できるかどうか、わからんそうです。それでもいいですか?」
「かまいません! 行ってください!」
私は夫の額の脂汗をタオルでぬぐい、「血、止められるって。すぐ病院につくからな」と小声で言うと、夫は、血に染まった洗面器を抱えたまま、弱々しくうなずいた。
病院に着くと、待機していた若い医師が、血管を圧迫する外科的止血で、なんとか夫の鼻血を止めた。
出血量は約2リットル。
もう少し搬送が遅ければ、夫は死んでいた。
実は私の住む市の救命率は世界最高水準なのだが。
それでも、これだけ危ういことが起こる。
どんなに物価や住民税が安くても、医療体制が整っていない土地には住めない。
この本は、川崎市立井田病院の臨床医が医療・介護崩壊の現場を描いたもの。
報酬が安く、人手不足で疲労困憊の医療・介護現場。
非情な厚生労働省の医療費削減政策。
自治体の財政逼迫。
高齢化で増える病人と要介護者……
なんとかならないものか。
著者は、傷病手当金の廃止や保険証のIT化などで医療のムダを減らし、医療と介護従事者の報酬を上げ、人員を増やすよう提言。
医療と介護を充実させる財源は、消費税の値上げになってしまうようだが。
仕方がないのかもしれない。
命には代えられない。
『安全保障としての医療と介護』 鈴木 厚 著 朝日新聞出版
ラベル:救急車
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