「昇格試験、合格したんですよ。4月から課長です」
年下の友人は、うれしそうに言いました。
「今まで使ってた手帳、ボロボロなんで、これを機会に買い替えようと思って。島村さんは、よく手帳のことをコラムに書いてるじゃないですか。何かアドバイスをください」
「えっ?」
……これは困った。
確かに、私はよく手帳の話をしますが。
手帳のことがわからないから、やたらに調べるはめになっているので。
手帳の専門家じゃないんだけど。
「どんな手帳?」と尋ねてみると、「システム手帳なんです。なんか、自分で適当にリフィル買って綴じてますけど。今ひとつなんですよね」と彼は苦笑しました。
よくわかるなあ。その気持。
システム手帳は、綴じ手帳と違って、カバーも中身も、自分で自由に組み合わせられる分、「正解」が、はっきりしないのです。
私も毎年秋になると、次の年の手帳リフィルを買い替えて、色々試してはみるものの、いまだに「これで完璧!」と胸を張れるような、リフィルの組み合わせにならない。
でも「フランクリン・プランナーのリフィル一式買ったし、これで安心」というのも、なんだか嫌。
そこで、最近読んだのは『手帳300%活用術(日本能率協会マネジメントセンター出版)』。
この本は、日本能率協会が発売している「能率手帳」を効率的に使うための117のアイデアを紹介したもの。
「能率手帳」と似たデザインのリフィルも出回っているので、この本のアイデアは、システム手帳ユーザーの私にも応用できるのです。
まず『自分にぴったりの手帳を選ぼう』の項目。
「スタート」のところで
『A.スケジュールを時間できっちり管理したい』
『B.時間管理よりもノート感覚でいろいろ書き込みたい』
『C.日々の細かい予定より1ヶ月を一覧したい』
の3つから自分のニーズを選び、「yes」と「no」で答える手帳診断チャートに従っていくと、自分に合う手帳のタイプがわかる……はずですが。
スタートのところで「1ヶ月を一覧できて、スケジュールを時間できっちり管理できて、ノートのように書き込める手帳がいい」と思ってしまった私は、強欲なんでしょうか?
……うーむ。まあ、強いて言うなら、Bの『時間管理よりもノート感覚でいろいろ書き込みたい』かな。
本当は細かいスケジュールを立てて、きっちり時間管理したいけれども、現実は、それを許さないし。
とりあえず、Bからスタート。
『一日の記録をたっぷりつけたい』の質問は「NO」。
手帳は雑記帳じゃないですからね。
エッセンスだけでいい。
この質問に「YES」と答えた人は、「分刻みの予定も書き込める「1日1ページタイプ」手帳派」になりますが。
私は「NO」と答えたので、次の質問へ。
『なるべく薄手の方がいい』、これは「YES」なので、結論、「あなたは見開き2週間タイプ手帳派」
……それやったら、今使ってるリフィルやんか。つまらん。
ただし、その「見開き2週間リフィル」に書き込むのは、「予定」じゃなくて、「その日にあったこと」という邪道な使い方ですがね。
ちなみに、この質問に「NO」と答えると、「見開き1週間タイプ手帳派」になります。
それにしても、この本、「付箋徹底活用術」「部下データ・会社データの記入」「交通費はスケジュールの上に書き込む」「具体的な目標とその金額を記入」「自分の行動を数値化して意外な自分を発見する」
……私が考えつかなかったアイデアも多い。
特に「自分の行動の数値化」。
この本の例は「営業担当者が提案件数、新規顧客へのアポイント数、受注件数を数値化して、1年単位で振り返り、翌年の営業の効率化につなげる」。
なるほど。私の場合も、これから出版業界に営業しなきゃいけないので、必要になりそうですね。
こういう具体的な手帳術の提案と同時に、「手帳活用者の心構え」も満載。
『夢を絶対にかなえたい!』『手帳からはじめる自己対話』『年初は「思い」を見返しページに書く』『振り返りが心の安定を生む』『自分の弱点を知る』
……うーむ。ストイックだ。
「自己実現手帳道」の世界。
それを「厳しいなあ」なんて、ぼやいているから、私は夢が実現できないのかもしれない。
ちょっと反省。
『家族のための手帳活用』の項目もあって、「家族や大切な人の記念日や、子どもの学校行事などを記入する」とあります。
……ビジネスマンの家族との関わりは、休日と記念日単位なんですね。いいなあ。
ところで、私に「システム手帳選びのアドバイスを」と依頼した友人は、営業職。
……困ったなあ。
例えば、
「定休日は土日なのか」「フレックスタイムの有無」「新規開拓かルートセールスか」「一日の会議や商談の数」「会議や商談の内容を、時間単位で書く必要性があるか」「パソコンなどのスケジュール管理ツールと、手帳を併用しているか」
……あまり思いつけませんでしたが、営業の仕事内容によって、使い勝手のいいリフィルは、かなり違います。
さらに
「手帳を入れるのは、ポケットか鞄か」「カバーの材質・色」「紙の薄さ・質・色」「筆記具はボールペンか万年筆かシャープペンシルか」「書く字の大きさ」「リフィルのデザイン」「メモは無地か罫線か方眼か」「罫線の色、幅」
……というような、個人的な好みもあるので、「よい手帳選びのアドバイス」は、ものすごく難しい。
私の場合、ルーティーンワークの職場の事務、唐突で展開が早い執筆の仕事。
細切れ時間の家事も予定しなきゃならないし。
「突然病気の家族が倒れて、一瞬でスケジュール崩壊」の特殊な事情もあるので。
私の意見は、営業職の友人には参考にならない気がします。
結局、彼には、『ventus』に時々コメントをいただく、手帳評論家の館神龍彦さんのブログを紹介しました。
『館神blog』は、手帳のほか、スケジュール管理用のパソコンソフトやデジタルツールの最新情報も豊富なので、きっと彼の役に立つでしょう。
「昇格や進学を機会に手帳を新しくする」のは、いいことですよ。
私が使っているのは「ファイロファックス」、コバルトブルーのミニ6つ穴システム手帳。
買ったのは、2004年の初夏。
文藝春秋から「作品の2004年ベストエッセイ集収録決定通知」をもらった時。
応募総数5000作を勝ち抜いた「戦勝記念品」として、当時の私には分不相応だったのですが、背伸びして買ってみました。
「ファイロファックスを使いこなせる物書きになる」
……これは6年たった今も、実現していませんが、「持ち物」としては、私の雰囲気になじんできているようです。
私ができる唯一のアドバイスは、「今の自分に不相応と思われる、上質な手帳を選びなさい」でしょうか。
今は不相応でも、使っているうちに「手帳にふさわしい自分」になっていることでしょう。
彼が、お気に入りのシステム手帳とリフィルを見つけられることを祈っています。
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2010年03月09日
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