……私が保健医療審議会委員だった当時、市職員の間でささやかれていた話だ。
不景気で税収が落ち込んでいるのに、高齢化が進んで福祉関係の歳出は増える一方だからだ。
幸い、平成22年の現在も、私の住む市は財政再建団体になっていない……が。
それは施設利用料値上げや、基金を取り崩しや、臨時財政対策債発行などをしているからで、財政問題が根本的に解決したわけではない。
さて、この本は、著者の東京都清瀬市市議会議員が、「自治体破綻とその先にある道州制」について書いたもの。
実は、私は「道州制」がわからない。
「大阪府め、また的外れなことを」とニュースを見ながら舌打ちすることはあるが。
その「大阪府」なくなって、隣の兵庫、奈良、京都、滋賀、和歌山などと一つの「州」を作る?
あまりにもイメージが漠然としすぎている。
「州都は大阪市なのか? でも、それだけ規模が大きいと、きめ細かな住民サービスは無理だなあ」と不安を感じていた。
国は自治体をどうする気なんだろう?
この本によると、国の自治体への干渉の初めは明治時代の「大合併」。
全国に自然発生した数多くの自治組織(町や村)は、直接国民を管理したい政府にとって邪魔だった。
そこで、明治政府は1888年、「教育、徴税、土木、救済、戸籍の事務処理の合理化と、町村間の隔たりをなくす」を名目に「市制町村制」を施行。
多くの村や町が合併で消えた。
平成になると、「地方改革(補助金削減、地方交付税削減、税源委譲)」が進むが、結局、税源委譲は期待はずれで補助金と交付税が減っただけだ。
「平成の大合併」では「合併する自治体には特例債、合併拒否自治体は地方交付税削減」のアメとムチが使われ、その結果、合併自治体は特例債の償還に苦しみ、合併拒否自治体は交付税削減で苦しむ。
そして、今、議論が進む「道州制」は……国民にとっていいことなのか?
よく考えなければならない。
『官製クライシス』 布施 哲也 著 七つ森書館
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