義母の遠距離介護を抱えて15年。
介護の世界では「精神的肉体的経済的重圧に耐えかねて、10年以内に家庭崩壊する」と言われている恐ろしいものらしい。
今まで、がんばってきたけれど。
2008年秋、夫が過労で倒れて入院した時、「あかん。今、姑が入院したら共倒れや」と観念しました。
もし、2か所で同時に家族が入院したら、私一人の手に負えません。
今住んでいるところでは、3人で暮らすのは難しいし。
夫も50近いので、「老後」も考えなければいけない。
そうなると「終の棲家」を考えなければいけないなあ。
普通、結婚すると、「出産子育て→子供の成人→老後」の人生プランを立てるものなんですが。
うちの場合「介護→老後」。
うーん。何を間違ったんだろうか。
私たちは二人とも、結婚前に一戸建てに住んでいました。
今、両方の実家が、同時多発的に起こる家の不具合と、その補修に悩まされているのを見ると「一戸建てってしんどい」と思ってしまいますね。
それに、年をとって足が悪くなったら、2階3階建ての家は、住むのが辛くなるかもしれない……結局、マンションを買うことに。
『e−house』サイトによると……
マンション選びって、すごく面倒ですね。
まず、立地のポイント。
「鉄道沿線、最寄駅からの所要時間」
「通勤手段と所要時間」
……もちろん、職場に近ければ近いほどいいけれど。
空気の悪い大阪市内に住むのは、喘息の私には辛いな。
「生活利便性」「閑静、公園、緑などの自然環境」
……当然でしょう。
「用途地域、幹線道路」
……もちろん、幹線道路沿いなんか、空気が悪いからダメでしょう。
商業地域も夜中までうるさいし。高いマンションが立ち並んでいるところも嫌だな。
「街・学区のイメージ、センスの高さなどのステイタス」
……センス? ステイタス? 学区?
子供がいない私には関係のない話だなあ。
でも、別な観点から考えると「住みたい街」は一つだけ。
医療・福祉・介護の施設や行政サービスが充実している街。
特に「勝者なき消耗戦」……長期化する介護は、家族だけの力ではやっていけない。
行政の助けがないと。
2004年の義母の介護保険申請の時、「介護力の自治体格差」を見せつけられた私には、今住んでる街以外には考えられない。
「出身地(地元)、双方の実家との位置関係」
……介護を前提とすると、意外に重要な条件。
妹は実家に住んでいるし、私の遠距離介護の苦労を知っている弟も「やっぱり実家の近所に家建てんと」と奔走中。
姉弟が協力して、実家の老親を看ていくことになるでしょう。
「会社で部下に「堺や奈良やったら、安いマンションいくらでもあるやないですか」って言われたけどな。俺は、生まれた豊中がベストやと思う」と夫が言ってくれたのは、ありがたかったですね。
夫の出身地は私が生まれた隣町。
今住んでいるところの隣の地区。
そこには夫の親族が、今もたくさん住んでいます。
義母も親戚が多いなじみの土地なら、移り住むにも抵抗が少ない……となると、購入希望エリアは限定されます。
さて、重要な資金のポイントは。
「希望立地・建物・専有面積と価格と予算」
「周辺の価格相場」
「返済計画」「雇用環境、家族計画など、今後の見通し」
……夫の部下の指摘通り、豊中は地価が高いのですよ。
それに昔から市街化が進んだ街だから新築マンションが少ない。
あっても駅から遠いか、最寄り駅がバス停だったりする。
仕事しながら介護や家事もするわけですから、駅から遠いのは辛い。
それに、私たちが年をとって車を運転できなくなったり、足が弱ったりした時、「アクセスが悪い」ことはストレスになるし。……しょうがないなあ。中古で探すか。
さて、「建物」のチェックポイントは。
「管理や大規模修繕などを前提とした総戸数」
……これは多ければ多いほど、修繕費が安くなるのでよいとされていますが、一概にそうとも言いきれない。
「外観デザイン、色など」
……住むのは建物の中だから、あんまり奇抜じゃなきゃいいや。
「高強度コンクリート、床・壁厚など躯体性能」
……私には全然わからんけど。
建築図面を教えていた、夫の知識が役に立ちました。
「希望住戸の専有面積、間取り、収納、天井高、採光など」
……エリアを限定した上に「駅から近い」にこだわり、この条件を重視したため、なかなか決められなかった。
「キッチン・風呂・洗面・トイレなど、基本的な機能のグレード」
「玄関・内装などのカラー、デザインなど」
「家の設備のオプションメニューの選択肢が充実しているか」
「玄関回り、専用庭、ルーフバルコニーなどの空間的付加価値」「24時間換気システム、CATV、インターネット接続など機能的付加価値」
……リフォームできるから標準装備でいいや。
付加価値のポイントは。
「管理会社の信用・実力と修繕計画」
「売主、販売代理、管理の連携」
「家族や育児・教育の方針とマンションのコンセプトの一致」
「フロントサービス、特典など」
「店舗などへの転用の可能性」
「動物飼育などトラブルの可能性」
……資料を取り寄せないとわかりません。
特に修繕計画は重要。
雨漏りや、水道の蛇口をひねると赤水が出るマンションは嫌です。
結局1年半、新築も合わせて20軒以上物件を見たのに、それでも見つからない。
もう、無理なんじゃないか……諦めの心境になりかけていた時、ある住宅サイトの情報に釘づけになりました。
2日前に出た物件……時々前を通りながら「ここ、売りに出えへんかな」と思っていた場所。
しかも、先月行った不動産屋が専従(一定期間独占的に物件を売る)契約しているらしい。
さっそく電話して見せてもらいました。
「今まで見た中で一番「マシ」ちゃうか」と夫も賛成し、資料をもらって母と相談。
母は不動産屋で還暦まで経理をしていた宅建主任者。
地元の不動産事情にも精通しています。
「あそこのマンションか。あの場所で、よく出たなあ。……戸数少ないけど大丈夫か」
「前に見た同じ年建った120戸の物件。ボロボロやった。数が多けりゃいいわけやない」
2002年の区分所有法改正前に作られたマンションは、住民の4分の3が賛成しないと大規模修繕工事ができません。
例えば、このマンションなら「追加修繕積立金を払いたくない」住民が4分の1、30人以上いたら修繕できない。
……マンション全体がスラム化するのです。
逆に小ぢんまりとしたマンションの方が、修繕の意思統一が楽かもしれない。
「この前修繕したところで、費用明細も長期計画も揃ってる。しっかりしとるな。このマンションの管理組合。この場所やったら、最悪転売できるし、さっさと契約し」
私はあわてて夫に連絡し、価格交渉に入りました。
「旦那には法律はわからんねんから、あんたがしっかりせんと」と、母から宅建の問題集を山ほど渡され、契約当日まで、不動産取引の勉強をするはめになりましたが。
おかげで契約手続きはスムーズにできました。
今後、ローンや税金で悩むことになりそうですが、がんばっていきたいと思います。
「マンションを買いました」と言うと、大抵の人は「いいですねえ。夢のマイホームですか」とうらやましがりますが。
「人工透析受けてる義母を引き取って、一緒に住むんです」と言った途端、必ず相手の顔はこわばります。
ひょっとして、「夢への一歩」じゃなくて「破滅への第一歩」を踏み出してしまったのか。
……最近、時々憂鬱になったりします。
ラベル:マンション
中古の場合には、特に。
だから、今回も出会うべくして出会ったんだと思いますよ。
色々とご心配もあると思いますが、今回の購入をきっかけに、全てがいい形になることを祈っています。