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2010年05月11日

矛盾(後編) 腹式呼吸と胸式呼吸

さて、喘息が軽くなる丹田呼吸法習得の第一歩、「一技一呼吸(一つの技の最中、一呼吸で動くこと)」の稽古が大体できるようになってきたので、丹田呼吸法の次の段階に進むことにしましょう。 
 
私が丹田呼吸法を学んでいる『佐々木合気道研究所』の文献を探ってみました。

「どの程度「一技一呼吸」ができるようになると「一技一呼吸」から卒業できるのか」
……このサイトは、合気道の精神や技法についての論文が200近くあるので、いつも文献を探すのが大変なんですけど。

……ありました。

『初心者は先輩や高段者にどんどん投げてもらい、受けでこの呼吸法を学ぶのがよい。投げる方が疲れて参ったと言うようになったら卒業である。本来、投げる方が受けるより大変なのである』

「うわぁ。こりゃ、卒業でけへんかもしれん」

パソコン前で、私は天を仰いで嘆息しました。

所属道場の後稽古で、高段者が茶帯や有段者を投げて、飛び受け身をさせる稽古をすることがあります。
一人当たり20回、多い時には、投げる相手が10人以上いても、投げている高段者は息一つ切らさない。

「投げる方が参ったと言うまで」投げられ続けるのは、相当難しいと思います。

特に出稽古先の先生は、私より若いし、投げ合いが大好きだから、500回ほど私を投げても、「まだまだですねえ」なんて、涼しい顔で笑っていそうな気がする。

……うーん。困ったなあ。左肺の一部が欠けている私は、永久に「一技一呼吸」から卒業できなさそうですね。
今の「総呼吸量8割」の数字を維持するためには、もちろん「一技一呼吸」の稽古も続けていくけれども。
他の呼吸の技法も、平行して学ぶ方がいいかもしれない。

そこで、『佐々木合気道研究所』の文献を見ていくと、最新の研究文献から、予想外のキーワードが出てきました。

『胸式呼吸』

……最近では「健康に悪い」とさえ言われている呼吸法です。

でも、私の経験だと「胸式呼吸は悪」とも言えないんですね。
私は子供の頃の喘息発作の最中、咳が止まらずに、腹筋が緊張しすぎて、よく嘔吐していました。
そういう時に「お腹を出したり引っ込めたりして腹式呼吸しろ。咳が止まるはずだから」と言われても、無理なんですよ。
眠らずに壁にもたれて肩で息をする……胸式呼吸で対応していました。

それに、なぜ人間の体は、「健康に悪い」とされる、胸郭を開く胸式呼吸が基本になっているんでしょうか? 
「健康によい」腹式呼吸が基本でいいはずなのに。

同じ疑問を持った人は結構いたらしく、『OKweb』『msn相談箱』『教えてgoo』などで、『腹式呼吸と胸式呼吸のメリットについて教えてください』の質問を見かけました。

その中で、一番解説が詳しかったのが『msn質問箱』です。

人間は立っている時は肋骨筋を働かせる胸式呼吸、寝ている時は横隔膜の伸縮で行う腹式呼吸をしています。
特に女性は、子宮や卵巣などの女性特有の臓器を保護するために、胸式呼吸が基本らしい。

胸式呼吸のメリットは、胸郭を開くと一気に酸素が大量に供給できるので、交感神経が緊張し、体を活動的にできる。
瞬発力の必要なゴルフやテニスなどのスポーツは、胸式呼吸の方がいいそうです。

一方、腹式呼吸は副交感神経を緊張させる呼吸法で、体がリラックスして、血圧が下がる効果がある。
武道で腹式呼吸が重視されるのは、「敵を前に冷静になる」ということも大きいと思います。

合気道は、準備運動と整理体操の時に、「腕を上げ、胸を開いて大きく深呼吸」をやりますから、胸式呼吸そのものを否定しているわけじゃないんです。
でも、準備運動と整理体操以外に「胸式呼吸を使え」という話は、ほとんど聞いたことがありませんね。

『佐々木合気道研究所』所長の佐々木貴7段は、胸式呼吸の方が有利な動きとして、「肩を貫く」「鳩尾(みぞおち)をゆるめる」「胸を開く」「肩甲骨を柔軟につかう」を挙げておられます。

実際にやってみると、腕を上げたり、肩や肩甲骨や背中を使ったりする動きの場合、私も無意識に胸式呼吸をしているようです。

『腹式呼吸は上下の縦の呼吸であり、胸式呼吸は左右・前後の横の呼吸のようである。従って、横に力を働かせるような、つまり胸や肩甲骨を開いたり閉じたりする動き、例えば、入り身投げで相手の顔面(喉)に肘をぶつけたり、一教で打ち込んでくる相手の手を横に導いたり、四方投げで持たせた手を横に捌くとき、二教で相手の手首をきめるときなどには、胸式呼吸を遣うと腹式呼吸でやるより早く、力強く動けるようである』

……なるほど。胸式呼吸は瞬発力を引き出せるから、うまく使いこなせれば、これらの技が効果的になるんですね。

丹田呼吸……立ったままの腹式呼吸は、意識しないとできないから、そちらに気をとられがちでしたが。
胸式呼吸も意識的に使いこなせるようなると、さらに総呼吸量が増えるかもしれない。

新しい呼吸法のテーマをいただき、『佐々木合気道研究所』には、本当に感謝しています。
ラベル:合気道 呼吸
posted by ゆか at 13:27| Comment(1) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
合氣道的呼吸法は呼吸によって滞ることなく氣結びを行う稽古法でしょうが、呼吸そのものを有効に行うための方法となると確かに難しいですね。吸気は鼻腔を通って温暖・湿潤・フィルターを経た空気を、呼気は唇の隙間から漏れる程度に微力で排出することにより呼吸筋をリラックスさせて負担軽減という肺に有効で省エネ呼吸を、苦しいときほど思い出すよう心がけています。
Posted by katsuhayahi at 2010年05月19日 09:36
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