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2010年07月20日

天から降ってきた仕事

経営コンサルタントの通称「おかげおじさん」と一緒に、私は大阪市港区にきました。

 

 

潮風が吹き渡る中、古びた倉庫街を運河沿いに歩いていくと、小さなビルがあります。

「ここです」

「おかげおじさん」に案内されて中に入ります。
まず、本のショールーム。
奥へ進むと30人分の客席と小さな舞台。
かたわらには丸テーブルと椅子が三つ。

「おかげおじさん」は、舞台の奥……事務所から出てきた女性に、私を紹介しました。

「ご紹介します。こちらが、コラムニストの島村由花さん」

シャム猫を思わせる上品な女性は、劇団座長で、この出版社を経営する方です。

名刺交換と挨拶の後、社長に突然質問されました。

「あなた、取材できる?」

驚きながらも、私は正直に答えました。

「もちろん、やります。人物のインタビューの仕事は、あまり経験がありませんが」
「できるのね?」

「はい。これまで800字程度の原稿だったので、ロングインタビューの経験はありません。なんでも調べられるレファレンサーなので、どちらかというと「調べて書くこと」が得意ですが。なんとかします」

社長は、私が持ってきた資料をテーブルに広げ、ざっと目を通しました。

新風舎出版賞最優秀賞を受賞した著書『アレルギーと生きる』の単行本。
『祖母ハンナ・オコンネルと私』が収録された『04年版文藝春秋ベストエッセイ「人生の落第坊主」』の文庫本。

経歴書と最近の仕事を納めたファイル。
中身は『月刊武道』に寄稿した中学武道必修化のエッセイと、朝日新聞の毎月の仕事『デジタル版・知恵蔵』をプリントしたもの。

「経歴は国文卒、専攻は上代文学。1997年、鎌倉時代を舞台にした小説『玄象(げんじょう)』で、コスモス文学新人奨励賞受賞……。これなら、なんとかなりそうね」

そう呟いた後、社長は、はじめて事情を説明してくださいました。

私たちが来る前……
この日の朝、事務所の所属ライターが、突然倒れて入院。

とりあえず、病院にかけつけた社長は、ライターの病状を聞き、頭の中が真っ白な状態になって、事務所に戻ってきたそうです。

秋に発行する地元金融機関の文化情報誌の仕事が二つ。
両方とも地元の史跡紹介エッセイで、半月後に取材がスタート。

歴史に強く、調査力と文章力のあるライターで、今、すぐに仕事を引き受けてくれる人は……。

社長が机に向かって頭を抱えている、まさにその時、「こんにちは」と、暢気に面接に来たのが私だったのです。

……恐ろしいタイミングだ。

私は8月下旬に引っ越す予定ですが、どちらの仕事も盆前に終わるそうです。

「他人の不幸につけこむようで申し訳ないですが、この仕事、請けさせていただきます」
「こちらも、全面的にバックアップするわ。よろしく」

ということで、いきなり執筆の仕事をいただいてしまう、予想外の展開。
 
帰り道、「おかげおじさん」は、にこにこしていました。

「強運ですね。島村さんの面接が昨日だったら、この仕事はなかった。明日なら、他の人が仕事してたでしょう。今日の朝でも、ライターさんが倒れた瞬間でダメ。……私は、あなたを彼女に紹介することで、あなたも彼女も助かった。いい仕事ができました」

社長や「おかげおじさん」の期待に添えるよう、新しい二つの仕事、がんばります。
ラベル:面接
posted by ゆか at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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