だが、その桜は、年々枝につく花の数が減り、花の色は白くあせていく。
全国各地の桜の名所には、大勢の花見客が押し寄せ、「今年もきれいに咲いた」と喜びながら、花の下で宴会を繰り広げている。
しかし、人々の頭上にあるのは、細い枝にまばらについた白い桜の花。
春の白っぽい青空に溶け込む幽鬼のような弱々しい桜……恐ろしい。
日本の「桜」の代表、ソメイヨシノ……江戸中期に作られた園芸種。
種ではなく挿し木で増えるが、病虫害に弱く、60年ほどで枯れてしまうことは、明治時代から問題になっていた。
古い桜を切って新しい桜を植えても、忌地現象が起き、同じ場所に桜は育たない。
桜の木は、その土地の住人の誇りになっていることも多く、今ある桜をできるだけ延命させるのが一番いい方法だと、著者は考え、全国各地で桜を守ろうとしている人々を追った。
読んでいて、いかに桜の維持管理が大変か痛感させられる。
例えば、青森県弘前市の弘前公園。
樹齢120年のソメイヨシノが、今も絢爛に花を咲かせるが、ここには桜に詳しいベテランの担当者がいる。
桜の剪定、肥料、消毒などの経費が桜1本あたり1万円。
桜用の予算が年間3000万円。
他の地域で、これだけの手間と費用がかけられるだろうか。
Web山陰新報2005年3月29日の記事によると、40周年を迎えた「日本さくらの会」は、長年桜の管理や育成に携わった人を「桜守」と表彰する一方、樹木医に桜の保護を委託しはじめた。
しかし、さくらの会がおこなった桜の名所100箇所の調査では、樹齢40年〜80年の寿命間近の桜が全体の66%。
75%で枯れが目立つという。
桜の名所で知られる茨城県桜川市、東京都千代田区、兵庫県西宮市などは、自治体をあげて桜の再生に取り組んでいるが、再生に成功するか、桜の寿命が早いか、微妙なところだ。
『サクラを救え 「ソメイヨシノ寿命60年説」に挑む男たち』 平塚晶人 著 文藝春秋
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