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2010年10月12日

開祖の横顔(後編) 十四人の直弟子

合気道開祖の直弟子……植芝盛平翁の教えを直接受けた先生方は、それをどう伝えようとされているのでしょうか。


『私は合氣道の動きは渦だと思っています。円ではなく渦。だから小さくもなれるし無限に広がる。それは技というより心と呼吸、身体を合わせることが必要なんですよ。技から合氣道を考えちゃうと、実戦の時に殴られちゃう』(佐々木の将人師範)

『自然の理法を重んじること、つまり無理な動きをしないことです。無理な動きをしてしまうと、先程も言ったようにお互いを痛めてしまう。それから無駄な動きをしないこと。稽古にムラのないこと。つまり、がむしゃらに稽古をやったかと思うと、ぱたりと止めてしまうということの無いようにするのです。これを私は三無と言っています』(菅沼守人師範)

『あの時代の技で、今では無くなっているものがある。そうした技を私は今指導しているんですけど難しいんだよね。やっぱり』(昭和12年の開祖の演武のビデオテープについて、藤田昌武師範)

『私の道場では一日の稽古のなかでも剣と杖は必ず稽古することになっていて、十三の杖、二十二の杖、三十一の杖などもそのまま稽古しています』(小林保雄師範)

『相手の手を掴むというのは約束事の虚、実は自分から仕掛けることにあるわけで虚実の稽古なんですよ』(黒岩洋志雄師範)

『力を抜くことによって相手の力がどちらに向いているか、引くか、押すか、それがすぐ判る。そこへソッと入ってくる。もう後になってくれば相手が触れただけでそこに技が出てくる。力で押しているうちはぶつかってしまって駄目ですよ』(砂泊誠秀師範)

『型の反復では仕手が刃物で、受は砥石の役目をしなければいけないのです。それを積み重ねてゆくことによって強化されていくと思うのです』(清水健二師範)

『欲を抑えて己を捨てれば自由になるでしょう。その部分が無ければいつまでも駆け引きの世界。なぜ合気道に試合が無いかといえば“それが必要のない境地を作りなさい、それができますよ”という話だから』(加藤弘師範)

『身体を作って感性を養う技ですよ。だから“合気道ってなんだろう”と考えたら、結局自分を知るということ、生きるということでしょうね』(渡辺信之師範)

『スポーツと違って、勝ち負けを超えたところにある、一つの精神身体の鍛錬法だということでしょう』(月刊秘伝編集部の「改めて合気道のよさというのはなんでしょう?」の質問に対して。故・奥村繁信師範)

『少なくとも私が学生に指導する時は、「目一杯の力でやりなさい、いつか無駄な力を出しているということに気がつく時がくるが、それまでは出し尽くしなさい」と言っています』(磯山博師範)

『やり残しのないように、誰でもできるものを残していこうと思っています』(田村信喜師範)

『「鉄は熱いうちに打て」って言葉の通り、若いうちはその歳にあった稽古をすれば良い。どうせ年を取ったら年寄りの稽古しかできないんだから』(山田嘉光師範)

『技を習うには必ず手順がある。手順を覚える、慣れてくると角が取れてくる。そうすると一つのリズムができて来て。そのリズムが練られると流れが出て来るんです。流れが出ると相手と自分が同化する、螺旋の中に。で、それが「伸び」という風になる。その時に重要なのが呼吸なんです。その先に、あの「乗る」という状態がある。メンタルトレーニングでは「乗る」ということを「ゾーンに入る」と言っている。そうすると技が湧出する。潜在意識の中から新しく組み立てられたものや、あるいは習い覚えた最も良い状態で生命を活動できるわけです』(多田宏師範)

……うーむ。開祖の同じ演武を見、同じように教えを受けた先生方が、それぞれ、ちょっとずつ違う形の合気道を伝えていこうとしているように、私には思えますが。

ボクシング出身で、太気至誠拳法創始者の澤井健一氏や、極真空手創始者の大山倍達氏とも親交のあった、黒岩洋志雄師範は、このように語ります。

『開祖から何を得たかはそれぞれ違うわけですから。それぞれ才能も経験も違うわけですしね』

……なるほど。開祖のコピーにならなくても、先生方が、それぞれのスタンスで、合気道を発展させていく。
それでいいんですね。

『開祖の横顔』。
合気道家向けですが、一般の人にも読んでほしいお勧めの一冊です。

ところで、先日、私は17年の遠距離介護生活に終止符を打ち、要介護度2、人工透析の義母を自宅に引き取りました。

在宅介護の状態では、平日の夜間に稽古のある所属道場で、合気道の稽古をすることは難しい。

女性は、家庭の事情で合気道を続けられなくなることが多いのです。
実際、所属道場でも結婚、出産、育児のため、稽古に来られなくなった女性を大勢見てきました。

遠距離介護だけでも17年ですから、医療が発達した現在、あとどのぐらいの年数、介護が続くのか、全然見当もつきません。

結局、私は所属道場を休会、所属道場と交流のある出稽古先の道場で、休日の昼間、義母を夫にみてもらって、稽古を続けることができるようになりました。
本当にありがたいことです。
ラベル:合気道
posted by ゆか at 15:31| Comment(1) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
数々のお言葉、それぞれ含蓄があります。叱られているような、また、励まされているような。

稽古を続けるのは、女性が男性以上に大変だと、あらためて感じさせられました。

Posted by コハント at 2010年10月14日 01:08
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