「初心者が10人いたら、そのうちで段取れるのは1人か2人」という夫の言葉は誇張ではないらしい。
こういうことになってしまうのには、いくつか理由があります。
まず、友達同士、数人連れで参加している人は続きません。
誰か1人が「今日の合気道、しんどいなあ」と言い出すと、友達づきあい上、「いや、私は合気道へ行くよ」と言い切って稽古に来られる人が、どれだけいるでしょうか。
合気道を長く続けている人には、時に励まし合ったり、ライバルだったりする合気道仲間がいます。
「合気道好き」と共通点以外は、年齢職業など全然違う人たちですが、つきあってみると、みんないい人ばかり。
道場でも、忘年会、新年会、花見会などの稽古以外のイベントがあって、道場の人と交流できます。
他道場の方も、もしご自分の所属道場で稽古外のイベントあれば、参加されることをお勧めします。
「有段者は常に見ている。やる気を見せろ」と、夫から、積極的に有段者に組み手をお願いするように言われましたが、これがなかなか大変。
初心者にとって有段者は「雲の上の人」。
声をかけるのも畏れ多い感じがして、つい初心者同士で組み手してしまったりしますが、技がわからない者同士の組み合わせですから、当然技ができません。
私の通う道場では、円陣を組んで師範のお手本の演武を拝見して、それから、左右どちらかの人に「お願いします」と声をかけて、組み手をしてもらうのですが、例えば、師範が「では天地投げ。はじめ!」とおっしゃった瞬間、自分の両隣の人が別の人と組んでしまい、自分だけが取り残される……という現象が、時々起こります。
道場でも、呆然と一人立ち尽くしている初心者の姿を、よく見かけます。
そして、これがきっかけでやめてしまうことも多い。
「円陣組む前に、目をつけた有段者のすぐ横に座る。師範が「はじめ!」と言った瞬間、すぐに有段者の目の前にまわり込んで、「お願いします!」と言うの。茶帯(上級者)以上は、初心者から組み手をお願いされたら、拒否できないことになってるからね。もし、あぶれた時は、有段者と組み手している初心者のところに行って、入れてもらうといいよ。有段者も、初心者2人を組み手させて稽古つける方が、やりやすいことが多いからね」
……合気道歴15年以上、3段の女性有段者が、初心者だった私に教えてくれた「組み手をお願いするためのコツ」です。
「有段者の言うことを素直に聞く」「一日休めば三日遅れる」……稽古をはじめてしばらくたつと、これがおろそかになります。
「ただ回ってるだけやんか。合気道って、こんな程度のものか」と合気道をなめてしまい、だんだん稽古に来なくなって、やめてしまう人もいます。
どの武道でもそうですが、初心者に要求される技のレベルと、有段者ができて当然の技のレベルが全然違います。
でも、初心者にはその区別がつかない。
武道の本当の面白さ、技の奥深さがわかるまで時間がかかるのですが……この問題を解決する鍵は、やはり「武道仲間の存在」ではないかと思います。
「見込みのない者は叱られない」……有段者に叱られて、ショックでやめてしまう初心者も多い。
「有段者に叱られました。私、才能ないんでしょうか」と、更衣室で半泣きになっている女性初心者たちに、私は何度、この言葉を聞かせて励ましたことでしょうか。
その武道が好きで、武道仲間たちと長く武道を続けていける……それが一番幸せなこと。
武道をはじめられる皆さん、がんばってくださいね。
今、有段者だった人も、最初は初心者だったのですから。
ラベル:武道の心得