新しいお仕事をいただきました。
「デジタル版・知恵蔵」執筆の実績を評価されてのことです。
この仕事は「特定の分野に詳しい人が執筆する」普通のライターの仕事と違って、「情報検索技術を駆使して正確な資料を集め、専門用語を一般向けに、わかりやすく短い文章で解説する」タイプの仕事。
子供の頃から調べ物が好きだった私は、高校生の頃から、図書館司書になってレファレンス(利用者の依頼を受けて資料を調べる業務)をするのが、夢でした。
しかし、どこでどう間違ったか「レファレンス技術(情報検索技術)を駆使して文章を書き、本を図書館に置いてもらう人」になってしまいました。
まあ、少し形は違うけれども、自分のやりたいことがやれて、しかも評価される私は、運がいいと思います。
さて、最近、私の住む市は、レファレンスに力を入れるようになりました。
図書館には本を管理する「司書(レファレンサー)」という専門職の人々がいます。
でも、昔と違って、本は図書館に納入の時点で分類番号がつけられ、手で書いていた書誌や目録も電子化。
本の貸し出しはパソコンとバーコードリーダで処理。
職場体験の中学生が、カウンターに座って、スキャナでピッとデータの読み込み処理をしているのを見ると、「この仕事、司書じゃなくてもできるよなあ」と、情けない気持ちになるのですが。
「司書は要るんか? バイトでええんやないか?」の疑問は市民の間にもあるようで、あわてた図書館側は、司書にしかできない「レファレンスサービス」を、全面に打ち出したわけです。
先日、図書館の参考室で調べものをしていました。
ふと本から目を上げると、黒いベレー帽をかぶった年配の男性がカウンターに近づいていくのが見えました。
カウンターには『調べ物のお手伝いをします。お気軽にどうぞ』の貼紙。
男性は、カウンターの中で本を整理していた女性の司書に声をかけました。
「すみません。金大中大統領の拉致事件の写真を見たいのですが」
……ほほう。これは面白いことになった。
一度、貸出室のカウンターで、レファレンスの依頼をしてみたけど……論外でした。
貸出室のカウンターは、アルバイトであることも多いから仕方ないけれど。
さて、参考室の正職員の司書の実力やいかに。
カウンターから二人の女性が出てきて、まず昭和史の写真集を書架に探しに行き、さらに、新聞の縮小版のページを必死でめくります。
一生懸命なのはわかるけど。
それにしても時間がかかるなあ……と思って見ていると、「あのう。もういいです。自分で調べます」と男性が二人に声をかけました。
……あかんやろが。二人がかりで18分も待たせたら。
恐ろしいことに、レファレンス能力は、常日頃調べ物をしていないと、たちまち退化するのです。
もう少し、日頃から調べ慣れておかないとダメですな。
私だったら、まずネットで拉致事件が起きた日付を調べ、利用者に「金大中大統領が、昭和48年8月8日に東京のホテルグランドパレスで拉致された事件ですね。写真だけでよろしいですか? 事件のことを詳しく書いた新聞記事は必要ですか?」と訊きます。
そして、まず、その日付の新聞の縮小版を利用者に渡して時間を稼ぎ、その間に蔵書検索で写真集をいくつかピックアップして、利用者に渡す。
……たぶん15分以内だな。
一般的に、情報検索は「いかに早く大量の情報を集めるか」ばかりに気を取られがちですが、それよりも重要なのは「最初に調べる範囲を明確にする」だと思います。
かくいう私も、ネット検索技術は我流なので、時間的に余裕ができたら、情報検索系の資格をとって、基本から勉強しなおしたいと思っています。
いつのことかしらん。
ラベル:図書館
図書館司書とは、本を整理するだけではなく、情報を探し出す人だったのですね。
ネット検索技術は私も非常に興味があります。
昔、公民館のホームページ作成を手伝った事があるのですが、見ている人が欲しい情報を得られるか・・・、項目の整理が難しかったのを覚えています。といってもホームページビルダーというソフトを使った簡単なものでした。
当時はホームページはまだまだ一般的ではなかったので遊び感覚でしたが、面白かったです。
デジカメの写真を載せるだけでもなかなか楽しいです。
残念ながらそのページは今はもうありません。
現在ですとホームページ内でも検索する術が整っていますので、当時とは比べ物にならないでしょうね。
しかしながら、市役所や観光協会のホームページから必要な情報を探すのは結構大変です。
特に「今日は仕事が休みなので、何かイベントがないかな」には答えてくれません。
いやいや、これは私の検索技術が低いせいだと思うのです。
しかもインターネットが発達する以前の情報はなかなか見つかりません。
インターネットの得意分野で日時等を調べ、それから蔵書を調べる。
「最初に調べる範囲を明確にする」
現代人にとっては、司書の方以外でも必要な技術かもしれないと思いました。