この店は、さりげなくロディア(フランス製メモ帳)を置いていたりします。
最近のスーパーの文具売場の品揃えも、侮れない存在になってきてるんですね。
例によって「新商品コーナー」に立ち寄ると、奇妙な商品に出くわしました。
『エプロン系立ち仕事の人用ボールペン』。
そもそも、「エプロン系立ち仕事」って、何?
ちょうどその時、商品を山ほどカートに積んだ店員が、私の前を通り過ぎていきました。
ワイシャツ姿の中年男性。
濃いブルーのエプロンをしています。
……なるほど、これが「エプロン系立ち仕事の人」ですね。
販売の人専用のボールペンを開発する必要があるのかなあ。
でも、がっちりとエプロンにペンが固定できる特大クリップがついているし、ペンを上向きにしても書けたり、速く書いてもかすれないらしい。
エプロン系の人にとって魅力的な商品かもしれないけど。
このペンの形状……「グレーのボールペン」というより「グレーの洗濯バサミにペン先がついたもの」。
デザインは、もうちょっと、なんとかならんかったんかね。
この「エアプレス・エプロ」を発売した『トンボ鉛筆』サイトは、『エプロンを着用して働く人をターゲットにしたボールペンです』と断言。
このペンは、ノックの力で作った圧縮空気でインクを押し出す構造。
だから、ペン先のボールが回ってインクを押し出す構造の、普通のボールペンにできない芸当「ペンを上に向けて書く」ができるわけですね。
エプロン着用者は「立ったまま書く」「ペン先が上を向いた状態で書く」「すばやく書く」「湿った紙に書く」という、独特の条件でボールペンを使っているわけです。
「湿った紙に書く人」というのは、飲食店のエプロン着用者のこと。
エプロン系立ち仕事の人が、ボールペンを使う特殊な条件をふまえて、この「エプロ」は、「着脱がしやすいつまめる大型クリップ」だとか、「立ったりしゃがんだりする時に、うっかりノックして、エプロンの中でペン先が飛び出して、服を汚すことがないノックガード機能」だとか、「2mm以上クリップを開くと、ペン先が元に戻る安全機構」というような、事務用ボールペンにない能力を持っています。
あの洗濯バサミのような特大クリップは、それなりに意味があるんですね。
ちなみに、このボールペン、2010年度グッドデザイン賞にも選ばれています。
『グッドデザイン賞:グッドデザインファインダー』サイト。
選考委員はコメントで、『エプロン着用者向けの、ピンポイントターゲットの機能開発がユニークだ』、『使用者の行為の研究が良くなされているところとして、エプロンとクリップの着脱性能、ペン先を出して、衣服を汚す誤作動の防止機構などが評価された』と、ほめつつも、最後に『造形要素が、もう少し整理できればという意見もあった』と付け加えているので、思わず笑ってしまいました。
「これなあ。目、つけどころはええで。エプロンつけて仕事する人、重宝するやろけど。その……この、ごっつい洗濯バサミみたいな形、これ、もうちょっと、なんとかならんかったんかのう」と、困惑しているグッドデザイン賞選考委員たちの姿が目に浮かびます。
今後、OA化が進み、事務用ボールペンの需要が減る可能性も高いですから、「エプロン着用で仕事をする、販売やサービス業の人専用のボールペン」という、新しい分野の商品を作ったトンボ鉛筆の技術には感服するけれども。
あの洗濯バサミ状のデザインがなあ……
もうちょっと改良されたら、使ってみたいんですが。
ラベル:ボールペン