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2006年05月16日

抜刀術(後編) 合気道と居合道

以前道場で、居合道を習っている上級者の若者(この春初段に昇段)と座礼をしている最中に、いきなり手刀で頭を狙われたことがあります。(詳しくは『隙あり!』後編にて)
その話をすると、夫は腕組みをして渋い顔になりました。 

「その相手、居合やってるんやろ」
「そうやけど」
「とっさに相手の手刀、左の平拳で受けて、右の平拳で迎撃に入った……そこまではいいねん。問題はその後や。どないするつもりやったんや?」

「ええっと……左足を踏み出してたから、立ち上がって蹴りに入ったんじゃないかと思う」

この時、私の意識が一瞬空白になっていて、自己防衛本能だけが働いていたので、自分の体が、どう動こうとしていたのか、はっきりわからないのです。

「あほかっ!」

夫は突然、厳しい声で言いました。

「相手は居合やってるんやろ! 跳びよるんやで。立ち上がっとったら遅いやんか!」
「しまった!」

居合道は、正座の状態から一瞬で刀を抜いて敵を斬る動作が基本。
中には「正座の状態から跳び上がり相手に斬りつける」技があると聞いたことがあります。

「後に跳ばれて、迎撃かわされて、お前立ち上がる前に、やられとったとこや」
「しまった……圧倒的に不利だったんだ」

思わず両手を顔で覆った私に、夫は穏やかな口調で言いました。

「まあ、相手も悪気なかったんやろな。お前を試したかったんやろ。大体、殺気満々の相手やったら、お前が正座して「ありがとうございました」なんて、頭下げてるわけないわ」
「そうやけど……なんかわからんけど、後で居合に誘われたわ」
「ははは。おもろいやつや。俺は大東流やっとった時、居合かじったことあるけど、居合もなかなかいいぞ」

実は、私の家の押入れには、夫が昔使っていた居合刀が眠っているのです。
居合をできないわけではないけれど、まず刀の手入れからはじめないと。

ところで、合気道上達のために居合道をはじめる……なぜ、剣道ではなく居合道なのか?

合気道には刀の動きが元になった技が多く、時々「剣の刃先の向き」についてのお話が師範からもあります。
剣道の竹刀では、居合の日本刀と違って刃がないので、イメージがつかみにくいからではないでしょうか。
それに居合道と合気道は、ともに「自分の内面を見つめる」ことを重視する武道。
そして、居合の動きは、合気道の座技(自分も相手も正座の状態でかける技)と共通点が多く、正座することで足腰も鍛えられます。

実際、居合をする人は手刀の打ち方にキレがあり、座技の動きがきれい。

居合をはじめた人の上達ぶりを見た他の人も「よし、居合やってみよう!」……かくして合気道の道場で、居合道が大流行となったのです。

師範は「合気道の人間が居合をやるとはけしからん」とはおっしゃらないので、門下生は楽しく合気道の稽古した翌日、楽しく居合道の稽古をする毎日を送っています。

私は今も、ことあるごとに「一緒に居合やりましょう」と、若者たちに誘われているのですが、体力に自信がなくて迷っているところです。

この記事へのコメント
NPO無外流、玉風会の川島です。
居合いに体力はそれほど要求されません。
居合いとは、対敵の正中線をいかに早く取るかという瞬間の動作です。
稽古には本身を使用しますが、形の稽古が主体です。
是非一度、見学にお越しください。

http://www.shizan.jp/
Posted by 川島章弘 at 2007年11月09日 14:42
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