今回の改正は、症状が安定した人は一律にランクを下げるもの。
病気の高齢者が増え、自己負担が増えるのは仕方ないが、介護保険申請手続きの煩雑さ、自治体ごとに異なる運用ルール、怪しげな介護業者、極端な認定基準の改定……厚生労働省は何をやっているのだろう。
厚生省が厚生労働省になるまでの70年の歴史を検証したのが、この本。
著者は医事評論家。
医療保険審議会、老人保健福祉審議会、医道審議会などの委員を歴任し、25年以上厚生省と関わってきた。
現在の医療保険制度の原型をつくったのはGHQのサムス准将。
終戦直後に公衆衛生のために保健所設立。
厚生省の組織改革。
DDTを多用した伝染病の予防。
看護師、保健師、助産師の職業の確立と法制化。
……しかし、医薬分業構想は失敗し、実現が後になる。
国民皆年金と国民皆保険が実現したのは1961年。
意外に最近のことだ。
膨張する医療費、頻発する医療過誤と薬害、国民皆年金制度の破綻の危機……その裏には、厚生省に対し不信感を抱く医師会、発言権の強い天下り先の製薬会社、得票のために圧力をかける族議員……様々な関係者の駆け引きがあった。
圧力で身動きが取れず、その時その時で、できることをしてきた厚生省……欠けていたのは医療福祉政策の全体構想だ。
厚生労働省は今後の施策として「2007年度をめどに社会保障全体構想を確立、消費税中心に税制改革を行い財源とする」「少子化対策、人口減に対する雇用対策に本腰を入れる」「突発的な伝染病対策に健康危機管理システムの確立」を上げているが……
優秀な人材を抱えながら、士気の低下でそれを生かせぬ厚生労働省。それをもどかしく感じている著者のいらだちが、強く伝わってきた。
『誰も書かなかった厚生省』 水野肇 著 草思社
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