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2006年06月10日

双輪(前編) 拓く者

「あなたの合気道は何ですか?」今まで何度かこの奇妙な質問に出会いました。
「あなたが理想とする合気道のイメージは?」という意味。

道場にきた最初の日(詳細は『合気道へ』後編にて)に組み手してくれた初段の女性有段者に。
最近では、小学校で英語を教えている上級者のアメリカ人青年に。

「師範ノ合気道、代行ノ合気道ハ違イマス。ソシテ体ノ大キイ人ハ大キナ合気道、僕ハ体ガ小サイカラ小サイ合気道シマス。アナタノ合気道ハ?」

真剣な顔で訊かれて、私はとまどいました。
この質問を受けるたびに、いつも「段を取ったわけじゃないので、まだわからないです」と曖昧な返事をします。

この時も、いつもと同じ返事をすると、彼は「オゥ」と声をあげて肩をすくめ、「大丈夫。アナタノ合気道、キット見ツカリマス」と慰めてくれました。ごめんね。

先日、同じ道場の上級者からメールをいただきました。
コラム『抜刀術』の感想の中で『この道場で居合をやる人は英信流の人が多いですね』とあったので恐れ入りました。

英信流の発祥は江戸時代中期。
居合道の林崎流(開祖林崎甚助源重信の系統)の人、長谷川主税助英信が、それまでの居合の技術に新たな工夫を加えて体系化したもの。

居合には、ものすごい数の流派があるのです。
「いくつかの流派がある居合道」程度の認識で、『抜刀術』を書いてしまい、居合道の皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません。

ちなみに、この上級者の若者は柔道と鹿島神流(剣術の流派)の心得を持ち、道場に通う傍ら、関西各地で開かれる合気道研鑚会に参加する稽古熱心な武道家。
尊敬する師の思想に自分の考えを加え、自分の理想とする合気道を追求しているとのこと。うらやましい。

「自分の合気道」「理想の合気道」……私にはよくわかりません。
「持病の喘息を軽くする丹田呼吸法の習得」という、変わった動機で合気道をはじめたせいでしょうか。

夫(武道13段)に、「「あなたの合気道は何か?」と訊かれて答えられないのは、私の修行が足りないせい?」と尋ねてみました。
夫は笑いながら答えました。

「ははは。まあ、確かに、それもあるかもしれんけど、お前の場合、理想の師につく前に、我流にしろ、自分で一定レベルの実戦技術を作ってしもうとるからな」
「ということは、「私の合気道」は永久に見つからない?」

私は落ち込みました。
私の場合、必要に迫られて、「身を守るため」だけに護身を学んだので、何か高邁な理想があって、自己流の護身技術を作ったわけではないのです。

夫は苦笑しました。

「お前が、本で勉強しただけで、その本書いた人に、弟子入りせんかったのはなんでや?」
「一部だけは共感できても、全部に共感できる人がいなかったから」
「お前が、半端なレベルの師を選ばなかったのは正解や。普通は、目標とか理想があって、技が後からついていくねんけどな。技先にあって、目標にできる師を見つけて、理想に合わせて技使うのも、俺は有りやと思うわ。だいぶ遠回りになるけどな」

夫の言葉に私は安心しました。
とりあえず、尊敬できる師には出会えましたから、時間がかかるけれど、「私の合気道」は見つかりそうです。

ところで、武道の本を読んでいると、熱心に自分の理想を追求する武道家が、新しい技を考案して世間に広めようとした時、新しい流派が生まれるようです。
そうして時代の変化に合わせた新しい武道が生まれ、武道界全体が発展してきたのですが、「双輪」(どちらが欠けてもいけない二つの要素の比喩)……実は、もう一つ、武道の発展にかかすことのできないものがあります。

……次回に続く……


ラベル:合気道 武道 稽古
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