1998年。
私は女性の就職を支援する市の施設へ求職相談に来たのだが。
義母の介護の後、体を壊して職歴に5年のブランクがある私に、窓口の若い女性は、そう冷たく言い放った。
「姉ちゃん。そんな世間知らずほっときや。パソコンで全自動でできるんやったら、世の中の経理や税理士は、とうの昔に全員失業してるわ」と簿記講師の妹に励まされ、その後なんとか就職できた私だが。
「時代遅れの簿記・ムダな職歴の経理」
彼女の言葉は、長い間胸の中で青黒くわだかまっていた。
この本の著者は、私のフォロワーで、会計ソフト『弥生』の弥生株式会社代表取締役社長の岡本浩一郎氏。
『本当の会計は誰のためでもなく自分のために行うもの。自分の事業の生き残りを確実なものとし、さらに成長を図るための有効な武器です』
会計=簿記+資金繰り。
簿記で現在の財務状況を把握し、資金繰り表で未来の収益を予測して経営する。
起業家出身の岡本社長の体験も交えた会計の入門書は、図やイラストも豊富で一般の人にもわかりやすい。
ところで、私は一昨年、執筆業の青色申告者になった。
パソコン会計に恐怖心を抱いていた私に、記帳指導担当税理士は言った。
「さすがに簿記2級、経理経験のある人は違いますね。飲み込みが早い。助かります」と。
会計ソフト『やよいの青色申告』を開いた瞬間、画面上の帳簿の内容がわかったからだ。
簿記知識ゼロの人には操作どころか、画面に出ているものが何なのかさえわからないらしい。
青色申告者として自信を取り戻した私は、今、大増税時代に対抗できる個人の合法的節税対策「青色申告」を、世に広めたいと思っている。
就職相談窓口で罵倒されてから13年。
いまだに彼女の言う「全自動で帳簿を作成できるソフト」は登場していない。
いや、永久に登場しないかもしれない。
『会計ソフトだけではダメ! 本当の会計の話』 岡本浩一郎 著 PHP研究所
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